第8話
2階ではハリドがローザをサポートし、この3階ではローザがハリドをサポートする形でクリアした事になる。
「あー、結構しんどかったぜ……」
「そうだね……少し休憩しよう」
お互いに疲れた表情で座り込み、そばのエレベーターのドアを見据えた。
「……この建物って、一体何階まであるんだろうね?」
「さぁな……そう言えばエレベーターの中に階数のボタンって見当たら無かったな。どう言うシステムなんだ、これは?」
ハリドが立ち上がってエレベーターのそばにあるボタンを見つめるが、上に行く矢印が描いてあるだけのボタンしか無い。
「これって上る為だけのエレベーターか? だったら何処かに下りのエレベーターも無かったら釣り合いが取れねーだろーよ」
しかし、自分達を導いているあの光はこのエレベーターの中に向かって辿る様に光っていた。
「まぁ、この奇妙な事件の犯人を捕まえない事にはどうしようも無いし、このまま光に沿って進むしか無いでしょ」
「そうだな。それじゃあそろそろ行くか?」
「うん、良いよ」
じゃあ出発、と言う事でエレベーターのスイッチを押してエレベーターを呼び出し、中にハリドとローザは入る。
そのエレベーターの中にはまた光があり、今度はオレンジだったその光が赤く輝いている。
「うお、今度はすげー赤いな」
「本当だ。階数を上がるごとにドンドン色が変わってるよね?」
「そうみたいだな」
エレベーターに乗り込むと自動的にドアが閉まり、上に向かってエレベーターが進んで行く。
そして次のフロアで、2人は思いがけない光景に直面する事になった!!
「えっ……?」
「あれっ、何だか今までの階と雰囲気が違うね?」
その上の4階に到着してドアが開いた瞬間に、ハリドもローザも顔色が変わる。
散乱する機材、解体途中の崩れた壁や抜けている床、そして足場と足場を繋ぐ橋になっている鉄骨等、明らかに工事の途中であろうフロアだったのだ。
そして赤い光が、目の前の抜けている床の先に続いている。
「ローザ、何か生き物の気配は感じるか?」
「んー……いや、感じないよ」
「俺も同じだ。ここは敵は居ないけど、下の階に落ちない様に進んで行けって事だろうな」
どうやら、この危険極まりないフロアを赤い光に沿って進んで行かなければならないらしい。
後戻りは不可能なのでやるしか無いのだ。
まずはハリドがエレベーターの壁に手を着き、その壁を手で押して勢いを付けて、そこから走り幅跳びの要領でエレベーターの目の前の穴をジャンプで飛び越えた。
続いてローザもハリドに倣って同じ様にジャンプで飛び越える。
そのまま砂利が撒き散らされて荒れている床を更に踏み荒らし、次に緩い坂になっている鉄製の床にローザが踏み出した……その瞬間。
「うわ!?」
「どうした?」
「こ、この床凄い滑るよ!?」
そう言いながら手で床を触ってみると、何だかヌルヌルする感触がローザの手に伝わった。
「あー……原因はあれか」
ハリドが坂の上を見て呟く。
坂の上では、壁を塗るのに使っていたであろうワックスの大きな缶が倒れて、中に残っていたワックスがこの坂にぶちまけられてしまったらしい。それが残ってしまっているのでツルツル滑るのだとハリドは判断し、何か使えそうな物は無いかと辺りを見渡す。
すると、近くに長いロープが落ちているのを発見したのでそれの端を手近な柱に取れない様に結びつける。
「良し、これ使って踏ん張りながら上がろう」
そのロープでようやくスリッピーな坂をクリアした2人は、坂の上から続く細い鉄骨の枠組みだけの足場をソロリソロリとバランスを取りつつここもクリア。
崩れた壁を飛び越えて、鉄製の足場を伝って行けば意外とすんなりゴールに辿り着く事が出来た。
「あれ、もう終わりかよ」
「意外と短かったね。でもエレベーターは無いみたい」
ゴールは少し広い円形のホールになっていて、周りには柱が6本設置されている。そしてホールの中央には2人の背丈よりはるかに大きな銅像が建っている構造だ。
その銅像のてっぺんに赤い光が止まったまま動かない。
「……ここで終わりか?」
「何か仕掛けがあるんじゃ無いのかな?」
ローザのその一言で、2人は中央の銅像をくまなく調べてみるが特に変な箇所は無い様だ。
「何か見つかったか、ローザ?」
「ううん全然。ハリドさんは?」
「こっちもさっぱりだ」
銅像じゃ無いのか? と思った2人は次に周りの柱を調べてみる。すると……。
「あれ? ハリドさん、こっちの柱の裏に窪みみたいなのがあるよ?」
「えっ? 俺の方も窪みがあるぜ!」
「引いてみますかー?」
「やってみてくれー!」
離れた場所に居るので、お互いに叫び声を上げながら窪みを引いてみる。
しかし窪みはまるでびくともしない。
「あれー? こっちの窪みは動かねえぞ!」
「こっちも駄目だねー! 何かこれが仕掛けになってるのかなー?」
この窪みに何かの仕掛けがあると言う事は間違い無さそうだが、2人がいっぺんに操作しても駄目そうなので今度は別の方法を取ってみる事にした。