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第3話

 その光をチェックポイントの様に辿る中で、ハリドがローザに質問してみる。

「ローザの世界は魔法があったりするのか?」

「こちらはありますよ。ハリドさんの世界もあるんですか?」

「いいや、こっちは無いんだ。空想とかの世界ならあるんだけど、現実だと科学技術が発達しているよ。魔法はローザも使えるの?」

「はい。色々使えますよ」

 その回答にハリドの顔つきが変わった。

「えっ、そうなのか? だったら今ここでちょっとだけ見せて貰って良いかな?」

「分かりました」


 ローザが手を前に向けてかざすと、そこからバチバチと音を立てて電撃がエフェクトとして見える。

 彼女はどうやら雷の魔法を使っているらしいとハリドは判断した。

「おー、すげー」

「こっちが火の攻撃で、それからこれが風ですね。でも治癒とかの光系統の魔法は使えないんですよ」

「あっ、そうなんだ。でも痺れとか熱さは感じないな」

「え?」

「えっ? 変か?」

 そう言う類の魔法じゃないの? とハリドが聞くと、ローザはふと何かを思い付いたかの様にハリドに対して手を向ける。

「……痛かったらごめんね?」


 そしてその瞬間、彼女の手から炎の魔法が放たれる。

 しかし……。

「えっ、あ、あれ!? 熱くない……」

「あれ、何で……?」

 どうやらお互いにこの状況は想定外のものであるらしい。

「……何だか良くわかんねーけど、俺に魔法は効かないみたいだな」

「そうらしいですね……でも、ぼくも治癒魔法は受け付けない体質ですから気持ちは分かりますよ」

 ハリドの特異体質が判明した所で魔法の話題も終わり、2人は次の光に向かって歩き始める。


 まるで2人を導く様に輝くその光は、やがてハリドとローザを1つの建設中の高層ビルの様な場所の入り口に導いた。

「……ここに入れって言ってるのかな」

「そうかもな」

 ローザの呟きにハリドも同調する。事実、光はその入り口の奥に光り輝いているからだ。

 だったらこのまま行くしかあるまいと改めて決意した2人だったが、入り口から中に踏み込んですぐの吹き抜けのホールになっている場所まで足を進ませたその瞬間だった。

「……!!」

「あっ、入り口が!?」

 入り口の方から物凄い轟音が聞こえて来た。

 その音の方に2人がバッと目を向けてみれば、入り口が大きな岩によって塞がれてしまっていた。

 どうやら後戻りは出来ないらしい。

 自然な出来事なのか、それとも人為的なものなのか。

 どちらにしても、ハリドとローザはこの建物の中に進むしか無くなってしまった。


 そしてその出来事に追い打ちをかけるかの如く、ハリドとローザの周りにバラバラと人影が現れた。

 人影は手にそれぞれ剣や弓、槍や斧と言う様に色々な武器を持って武装している。

 友好的な輩では無さそうだ。

「何だ? コイツ等は」

「味方って訳じゃ無いみたいだね」

「人数は見える限りで大体10人位か。だったら2人でそれぞれ5人ずつだろ」

「そうだね。じゃあ、行くよ!」

 全く違う世界の人間が協力し合い、謎の集団とのバトルがこのホールで幕を開ける。

 お互いの腕前に関してはまだ分からないものの、ここまで光に従って歩いて来る途中でお互いの話を聞いている限りは、それぞれがそれなりに腕が立つ様だとハリドもローザも思っている。


 ハリドは柔道を始めとして、合気道にプロレス、ルチャリブレにコマンドサンボと言った投げ技や関節技を中心とした格闘技を使っている。

 中でも合気道は東アジアの日本と呼ばれる国で、昔の兵士が戦場において己の武器を失ってしまった状況下で、武器を持っている相手に立ち向かう為に発展して来た、いわば軍隊格闘術の一種だ。

 しかも、ハリドは刑事の為に逮捕術等でこれ等の武術や格闘技の経験を活かしている。

 当然、相手の武器を叩き落としたり奪ったりと言う事に関してはその道のプロと言えよう。


 一方のローザは師匠エヴァーツ、それからレイより習っていた剣術が身体に染み込んでいる。

 今は片手のショートソードのみで戦っているが、隊長の役職を務めているだけあって数人相手でも引けは取らない。

 アサリーヴ王国では廃れてしまったと言われている双剣術の使い手であり、武器が双剣と言うだけで相手に対して意表を突かせる事も多い。しかも普段は片手のショートソードだけで、それを2本にする時は魔法を使って剣としてもう片方の手に出現させるので尚更対峙した相手は驚くのだ。

 それに加えて7つの古級魔法……風の攻撃系4つ、闇と雷と火の攻撃系をそれぞれ1つずつ使える。

 光を追いかけながら先程ハリドがローザに聞いた所によれば、色々な魔法を使えるのはかなり凄いらしいのだ。


 そんな性別からして対照的な2人は、お互いの死角から向かって来る敵を倒すと言う戦法でカバーし合う。

 その途中でハリドは敵から奪った武器を使おうと思ったのだが、何故か武器を握った瞬間に物凄い手の痺れに襲われて剣も弓も槍も斧も魔法のステッキも、そしてローザからアシスト用の武器として投げ渡された短剣ですらも持つ事が出来ない事が分かったので不利になりやすい。

 だが逆に、ローザの魔法を含めた全ての魔法がどうやら効果が無いらしいのでそこを活かすべきだろうと考えつつ戦う。

 そのローザの魔法はこの敵達には効果があるらしいので、魔法に剣術をプラスした戦い方を彼女は彼女で遺憾無く発揮する。

 ハリドがローザの死角から襲い掛かる敵にダッシュからのドロップキックをぶちかませば、ハリドの背後から弓で狙い撃ちをしようとする敵をローザの魔法が阻止する。

 お互いがそれぞれの長所を活かして戦い、5分もするとホールの至る所に謎の集団が全員倒れていたのであった。

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