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第1話

「あ……っつつ、な、んだ、何があったんだよ?」

 ドイツのミュンヘンで刑事職に就いているハリド・エンリスは、今の状況を全く持って呑み込めずに居た。

 時は2017年の1月13日。

 久しぶりの休暇を取ったハリドは、日々の職務から解放されて久しぶりにゆっくり出来るぜ、と言う事でミュンヘンを飛び出して南方のオーストリアへと向かった。

 面白い観光地は無いかどうか調べてみると、チロル州北西部にあるロイテ郡にクラウディア遺跡と呼ばれる名所があるらしいとのリサーチ結果が出た。

 自然保護区がある地域なので、久々に遺跡でも見に行ってみるかとハリドは泊りがけで旅行を決意。1人旅だ。


 そうしてようやくクラウディア砦へと辿り着いたハリドだったが、時刻はすでに夕暮れ時で辺りに人影は感じられない。

 それでもやっと来たのだから……とクラウディア砦を散策し始めると、不意に砦の片隅で何かがパッと明るく光った気がした。

「ん?」

 誰かがスマートフォンでも落としたのか? と思いつつハリドがその光が見えた方へと足を進めて行った……その時。


「うぉ、お、おおっ!?」

 その場所から発せられた謎の光が、ハリドの身体を一気に包みこむ。

 余りの眩しさに目を閉じて腕で顔を覆ってしまったハリドは、次の瞬間には何処かの薄暗い路地裏に出てしまっていたのだった。

(何だこりゃ……!? 嫌な予感しかしないぜ)

 刑事としての長年の勘が、自分の心に警鐘を鳴らし始める。明らかにここはクラウディア砦では無かった。

 とにかく状況を把握しなければ如何しようも無いと思い、後ろが行き止まりになっている路地裏の最奥地からハリドは辺りの気配を窺いながら歩き出す。


 そのまま歩き続けて、ハリドは何回か路地を曲がって行くとようやく広い場所に出る事に成功。

 どうやらここは路地の中に造られている休憩ポイントらしい。

(くそ……俺1人かよ?)

 誰か他に仲間が居れば……と思いつつも、居なければしょうがないと思ってハリドは広場から繋がる別の路地を探し出そうと足を進ませようとした時だった。

「……!!」

 カツ、コツ、カツ、とブーツで歩いている様な足音が、自分がやってきた方とは別の路地の方から聞こえて来る。

 どうやら人間の様だが、薄暗いのでもっと近付いて来なければ性別の判別も出来無い。


 ハリドが緊張に身体をこわばらせつつも身構えていると、そこから姿を現わしたのは薄暗い中でも分かる位の長い赤髪を腰の辺りまで伸ばしている、ハリドよりも明らかに若い女の姿だった。

 緑をふんだんに使った服装に、腰には2本のショートソードを携えている。

「あら?」

 その女はハリドに気がつくと、凄く自然な動作で腰のショートソードの鞘に手をかけつつ近付いて来た。

「貴方はこの町の住人の方ですか?」

「え、いや、俺は違いますけど……そっちこそ、この辺りに住んでいるんじゃ無いんですか?」

「いいえ、ぼくも違います。ここは一体何処なのですか?」

「へ?」

 それは俺も聞きたいぜと思いながらも、まさかと言う嫌な予感がハリドの心を支配し始めた。


 そこで意を決してハリドはこんな事を聞いてみる。

「それよりあの、もしかしてなんですけど……何か光に巻き込まれたりしました?」

「え!? ええ、そうです! もしかして貴方も?」

「俺も俺も!! うっそだろおい……」

 と言う事は、どうやらこの女も自分と同じ様に謎の光に巻き込まれてこんな訳の分からない所に出て来てしまった様である。

 そして、この後に2人がお互いに驚愕する事実が判明する事になるのだった。


「どうやら俺達は、同じ境遇でこんな所に来ちゃったみたいですね」

「そうですね……ああ、早くユリーズに戻らなきゃいけないんですけど一体如何すれば……」

「ユリーズ? それは何ですか?」

 聞き慣れない単語だなーと思ったハリドは、そのユリーズという名詞が何なのかを聞いてみる。

「アザリーヴ王国にある、風の街ユリーズです。ぼくが隊長を務めている剣部隊がある街です」

「アザリーヴ王国……それって地球の何処ですか?」

「地球……?」

「え?」

「え?」

 何だか話がかみ合っていない。物凄く嫌な予感しかしない。

 嫌な予感がまるで風船の様に膨らんで行き、次の女の一言でそれは盛大に破裂した。


「地球とは何ですか?」

「あっ……え、あー、えーと……ああ、嫌な予感が的中……」

 ハリドは混乱する余り、考えが上手く纏まらないままがっくりと額に手を当てて項垂れた。

「……ええと、ちょっと俺混乱して来たんでまずはお互いの自己紹介から始めませんか? どうも色々とあったみたいで、俺達とんでもない事になっているみたいだよ、これは」

「自己紹介ですか? 分かりました」

 女もハリドの心中をそのリアクションから察してくれた様で、まずはお互いの自己紹介から始める事がこの意味の分からない事態を理解する事への第1歩に繋がると思う。

 そしてその自己紹介から始まった2人のこの出会いが、この先のハードな展開の始まりになってしまうのであった。

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