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第9話

 一旦2人は同じ場所に合流して、柱と銅像をそれぞれ見比べながら首を捻る。

「うーん、これはちょっと考える必要がありそうだね」

「だな。俺とローザで同時に窪みを動かそうとしても駄目らしい。そもそもこの窪みって動くのか?」

 目の前の柱にある窪みに手を掛けてみるハリドだが、その窪みはびくともしない。

 ならこっちはどうだ? とローザがその右隣の柱の窪みに手を掛けてみると、こっちはすんなり動いてしまった。

「あれ? こっちは動くよ?」

「本当だ……と言う事はこっちも?」

 ハリドがその逆隣の柱の窪みを動かそうとしてみたが、こっちは動かない。


 長年の刑事の勘と、隊長として色々な仕事をして来た経験で2人は更に考える。

「……もしかしてこれって、窪みを引く順番があるんじゃ無いかな?」

「この6本の柱にって事か?」

「そうそう。ここが動くって事は、残りの柱を1つずつ調べてみれば分かると思うよ」

 ローザのその提案で、ハリドが1つずつ残りの5本の柱にある窪みを動かしてみる事にした。

 が、そうそう上手くは行かないらしい。

「こっちも駄目……ここも……」

「あっ!?」

「えっ、如何したローザ?」

「勝手に窪みが戻ったよ!?」

「ええっ!?」


 引き出した筈の窪みが、ハリドが柱を調べている途中で勝手に戻ってしまった。

「もしかして順番だけじゃ無くて、時間制限もあるって事か?」

「そうらしいね。スピードも大切って事だよ、きっと」

 この仕掛けを解くには迅速な行動も求められると分かった所で、気を取り直して再びチャレンジ。

 ローザがまず最初の窪みを引いて、右手を大きく振ってハリドに合図。その合図を見てハリドが残りの柱の窪みを調べる。

(あっ、ここか!)

 ようやく動く窪みを見つけたハリドはそれを下ろし、ローザに向かって同じ様に大きく手を振った。

 それを見てローザも他の柱を調べる……が、なかなか見つからずにまたタイムアップになってしまった。

「あー、またかよ!」

「焦らない焦らない。時間はあるんだしもう1回挑戦だよ!」

 じれったい気持ちのハリドはローザにそう励まされ、2人はトライアンドエラーを繰り返してようやく柱の裏の窪みを全て下ろす事に成功。


 その瞬間、ドンと殴り付ける程の揺れが一瞬だけ2人を襲った。

「うおっ、何だ!?」

「うわっ!?」

 驚く2人の横で、何と銅像が地面に沈んで行く。

 一体何が起こるのかと思いながら見ていると、銅像が沈んで行った場所から銅像の代わりに金網で囲まれている丸い台座が赤い光と共にせり上がって来た。

「今度はこの金網の中で戦うのか?」

「とにかく行ってみようよ」

 ローザに促され、ハリドは彼女と一緒に金網の入り口から入り込んで台座に乗って赤い光に触れる。

 その瞬間、赤い光が紫色に変化してスーッと上に向かって上って行く。


 それと同時に台座がエレベーターになって動き始めた。

「うわ、これがエレベーターかよ?」

「そうみたいだね。今みたいな謎解きもあるなんて、まるでこっちを試しているみたいだよ」

「そうだな……」

 エレベーターが上に到達するまでの間に、2人は謎解きで使った頭を休ませながら次のフロアへの到着を待つ。

「今度は何なんだ、一体……」

「それでも、一緒にこうやって危機を乗り越えて来たんだから大丈夫だよきっと」

「ああ、そうだな」


 この2人の間に妙な連帯感が生まれた事にお互いが気がついた頃、エレベーターのスピードが落ちて行く。

 どうやら次のフロアが近い様だ。

「さぁ、そろそろみたいだよ」

「ああ。気ぃ引き締めて行くぜ」

 2人は何が起こっても良い様に若干身構えながら、スピードダウンするエレベーターがストップするのを待つ。

 そのエレベーターがストップすると、同時に周囲の金網もスーッとエレベーターの周りの窪みに沈んで行った。

 このフロアは正方形の造りとなっており、上には月が浮かぶ夜の空が見える。

「どうやらここが最後のフロアらしいな」

「うん……行き止まりみたいだね。まだこの建物は建設中みたいだし、ここで屋上になっているみたいだしね」


 一体この屋上のフロアに何が待ち受けているのだろうと2人が思っていると、2人より先に上に上がって行ったさっきの紫の光がゆっくりと2人の前に下りて来た。

 だがその紫の光はただ単に上から下に向かって来る動きでは無く、空中で形を変化させつつ下りて来たのである。

「あっ、あの光!?」

「えっ……あの形はまさか、人間……!?」

 ハリドとローザが呆然とするのを余所に、ハリドと同じ位の背丈で痩せ身の男の姿になった光は、最終的に長い黒髪を後ろで一纏めに縛った優男に変化した。

 その男は手にロングスピアを持っている。


 そして、謎の光として2人を導いて来たその男は2人に向かって口を開く。

「……どうやら、実験は成功したみたいだな」

「はぁ? 実験?」

「何を言っているんですか?」

 この男がどうやら全ての元凶であると言う事はハリドもローザも今の男のセリフで理解が出来たのだが、彼の真意についてはこれから明かされる様であった。

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