尾張ライフスタート
「まだかぁ、まだですかぁ」
凄く長い距離を歩いてきたはずなのですが、着かない。本当に。早く倒さなければいけないのですが……。その時、草むらが揺れ、
「あ、どうも」
……よく分からない白い翼が生えた丸い生き物が飛び出してきた。しかも喋っている。こんなことは有り得ない。ま、この世界は有り得ないことだらけなのですが。そんなことを考えていると、隣からバシッという音がして驚きました。見ると、白い生き物をサムライが倒していました。
「ちょっと何やってるんですか!」
「いや、化物退治だが」
「化物……」
これが化物? 私が前に見たものはこれよりも圧倒的に大きかったので同じものだとにわかに信じられませんでした。化物と意思の疎通ももしかすると出来るのではないかと思った。
数日後、私たちは遂に目的の地、尾張に辿り着きました。そこは、かなり栄えていました。
「さて、ここに魔神がいるとのことですが、一体どこなのでしょう」
「地図に書いておらんのか」
サムライは私が持っている地図を覗き込んできました。しかし、そこには大雑把な位置しか示されていませんでした。私は首を横に振り、
「尾張と書いてあるだけで具体的な場所は分からないんです」
といった、その直後に私の後頭部に衝撃
「がっ!!!」
走りました。かなり痛いのを我慢して状況を把握しようと頭を上げますと、
「まさみね、ひさしぶりだな♪」
と笑顔でぴょんぴょんと跳ねている少女が。サムライも嬉しそうにしています。
「まさか……ロリコン?」
「何のことか拙者には分からんが、おそらく違うぞ」
違うのですか。まあ、親戚とかだろうとは思いますが、一応聞いておきましょう。
「あの、そのお嬢さんは」
「ここに以前来たときに化物に襲われているのを助けたので、その……懐かれた」
……悉く予想が今日は外れる日でした。