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掌編小説集6 (251話~300話)

作者: 蹴沢缶九郎

人里離れた森の奥で、一人の木こりが木を切っている。木こりが木に向かい、何度目かの斧を振った時だった。手元が狂い、斧は木こりの手を抜けて、ポチャリと近くの池に落ちた。


「しまった、大事な斧が!!」


斧がゆっくりと池に沈んでいく様を、どうする事も出来ない木こりが呆然と見つめていると、突然水面に美しい女神が現れ、三本の斧を見せて言った。


「木こりよ、あなたが落としたのは普通の斧ですか? それとも金の斧? 銀の斧?」


女神の問いに、木こりは答えた。


「私が落としたのは普通の斧です」


「正直な木こりよ、褒美にこの金と銀の斧を差し上げます」


正直な木こりに女神は優しく微笑み、手にした金と銀の斧を渡そうとするが、木こりはあわてて否定する。


「そんな、とんでもない!! 私が落としたのは普通の斧です!! 金と銀の斧なんて頂けません!!」


「なんと欲のない木こり。気に入りました。あなたのような者にこそ、金と銀の斧は相応しい」


「いえ、相応しくありません!! 私は普通の斧で良いのです!! 早く私の斧を返してください!!」


木こりの必死の申し出に構わず、女神は金と銀の斧を木こりの足元に置くと、満足した様子で姿を消した。


「待ってくれ、金と銀の斧なんかいらない!! 私の斧を返してくれ!!」


金や銀の価値など遠く及ばない、宇宙の特殊鉱物で加工された斧を失った木こりは、恨めしく池を見た。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ストーリーが面白かったです。よく言う湖の女神の話を応用して使っていて、面白かったです。 [一言] 文句なしに良かったです。 ありがとうございました。
2017/05/07 15:46 退会済み
管理
[良い点] 実家の親が「ごちそう=ステーキ」の発想なんですよね。だから私にもステーキを出してくれるときは笑顔で、実際私も嬉しいんですが、価値観は古びるのかな、なんてことも思ったり。 この作品を読んで…
2016/12/18 13:38 退会済み
管理
[一言] 正直に斧のことを言えば返ってきたかも。
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