07.死に戻りのが幾分かマシ
「光太郎、蹴散らせ!」
俺が命令するやいなや、目の前にいるゴブリンがゴミクズのように吹き飛ばされていく。
分かってはいたが、光太郎にはゴブリンなんて楽勝すぎる相手だったようだ。俺もアンリも後ろで見ているだけで良さそうだ。
しかし相手も馬鹿ばかりではないようだ。どうやら統率を取る個体がいるらしく、俺たちを迎え撃つたび陣形が変わっていく。
愉快愉快。どんな陣形が来ようが俺の光太郎は無敵だ。弓も魔法もすべて素手で防いでしまう。当たったところでアンデットだしダメージもない様なものだ。弱いってのは大変だなぁ!!お、あの弓兵、また矢を射ろうとしている。どうせ光太郎には効かないのにな。
余裕の笑みを浮かべながら俺は弓兵を見ていた。すると突然弓兵の矢先が俺のほうを向く。
「へっ?」
「ヨースケあぶない!」
アンリが叫び警告する。しかし俺の反応速度でよけられるはずはない。矢は俺の肩をかする。
うわあ血が!血がこんなに!ああもう俺はだめだ。全身の体力がなくなっていくのを感じる。俺、矢が肩にかすっただけで死ぬのか・・・
走馬灯が見える。町のお店の女の子、あんだけ貢いだのに胸の一つも揉めなかったなぁ・・・。アンリが気絶しているとき胸、揉んでおけばよかったなぁ・・・。
その時首からぶら下げていたペンダントが光る。不思議な光に俺は包まれた。
ぎりぎり、本当にぎりぎりで生きている。そういえばこのペンダント王様からもらったマジックアイテムだった。どんな効力があるのかもなにも聞いてなかったからとりあえず装備しておいたけど、そのおかげで一命を取り留めたようだ。
矢が掠っただけで死にかけるなんて、弱いってのは大変だなぁ!!・・・・・・ぐすっ。
「【回復】!」
アンリが叫ぶと、全身に力が戻る。俺に回復魔法をかけてくれたようだ。
俺を射抜いた弓兵はすでに光太郎が遠くに吹き飛ばしており、ゴブリン達はさらに森の奥に退いていった。
「し、死ぬかと思った。走馬灯って本当に見えるもんなんだな・・・」
「そのマジックアイテムがなかったら危なかったね。王様に感謝しなきゃ」
ありがとう王様、けち臭いじじぃとかいってごめんね。
「ゴブリンも退いたし少しだけ休憩しましょうか」
そういうとアンリはカバンから本を取り出した。
「その本は?」
「これはマジックアイテム図鑑よ。そのペンダントがどういう効力を持つか調べておこうと思って」
なんと勤勉な。もしかしてカバンの中そういう図鑑でいっぱいなんだろうか・・・
「あったあった!守りの護符っていうものらしいわ。ちなみに効果は体力が最大のときに、死ぬようなダメージを受けてもかろうじて生きていられるようになるお守りらしいわ。よっぽどのことがない限り一撃で死ぬ攻撃は受けないし、他の護符の恩恵を受けられなくなる点からあまり人気がないらしいわ!」
あの糞じじぃめ、あまりものの護符渡しただけじゃないだろうなおい。
「よし。マジックアイテムも調べられたし、先に進みましょうか。さっきみたいにヨースケが狙われる可能性が高いから注意するように!」
「ああ、そうだな。全力で俺を守ってくれ!」
「情けないなぁもー。私ができるのは回復と防御強化だけだからね」
そんな会話をしながら俺達は先に進むのであった。
「ヨースケあぶない!」
「ぐあっ」
矢が俺の太ももを貫く。痛い、死ぬほど、だが死なない。護符すげぇ!
「【回復!】」
アンリの回復魔法がかかり、体力が回復する。
「ヨースケ後ろ!!」
「うぐうう」
矢が俺の後頭部に刺さる。痛い、っていうかこれはやばくない?イタイイタイ。
「【回復】!」
体力が回復する。
「ヨースケ上よ!!」
巨大な岩石が俺を押しつぶす。もう痛いとかではない。たぶん顔面ぐちゃぐちゃになってる。
「【回復!】」
体力が(略
「アンリさん!?ちゃんと防御魔法かけてる!?ものすごく痛いよ!?まったく俺防御できてないよ!?」
「か、かけてはいるんだけど・・・おそらくヨースケの防御力が低すぎて、強化しても意味がないというか・・・ほとんど増えていないというか・・・」
苦笑しながら言い訳をするアンリ。なんという役立たず。結局俺が痛い思いをしているだけではないか。
「役立たずとはなによー!回復してあげないわよ!?」
あれ?俺今声に出てた?ごめんなさいまじで回復もらわないと2秒で死ぬます。
「ゴメンナサイ、ひたすらこのゴミ虫に回復をお願いします。」
「わかればよろしい」
こいつ・・・!偉そうにしやがってぇ!
・・・今のは声に出てないよね?大丈夫みたいだね。
俺が8回ほど臨死体験をしている間に光太郎が20匹はいたであろうゴブリンを倒していた。
ちなみにあまりスプラッターな現場はみたくないので、ほぼ全員気絶させるように命令してみた。え?ゴブリンが死んでなきゃ村の人が困るって?杖もってこりゃあ金もらえるんだしいいんだよぉ!またゴブリンが群れ作って暴れても困るのは村人だし、また同じクエストで金儲けできるしな!
「あ!見て見て!集落が見える!きっとあそこにゴブリンの長がいるんだよ!」
アンリが指差した先には確かに集落が見える。が、そこには異様な光景が広がっていた。