06.たぶんCくらいある・・・と思う
気絶したアンリを木陰に寝かすように光太郎に命令し、アンリが目を覚ますまで横で待つことにした。
少しやりすぎたかなー。まぁハムスター召還しただけだけど。
うん、やっぱり俺も大人気なかった。下らない見栄を張って、嘘ついて、ムキになって。
彼女が目を覚ましたら謝ろうかな。
・・・にしてもだ!
意識がない女の子が横にいるだけで邪な気持ちがわいて来る。
どうして俺はこうもダメ人間なんだ。我慢だ!我慢だ俺!!光太郎やハム吉だって見てるぞ!我慢・・・我慢・・・
「魂亡き者達よ、眠りにつくが良い」
光太郎とハム吉は魔方陣の中へ帰ってゆく。
よし。じゃあ胸の一つくらい揉んでおくか。
気絶したアンリに近づき、覗き込む。
うむ相変わらずそこそこ、それなりに、普通にかわいい。
そんじゃいっちょいきますか!!
アンリに手を伸ばした瞬間、アンリの体がピクリと動く。
「ん・・・く、首がぁ!!」
や、やばい、アンリの目が覚めた!叫びながら飛び起きるアンリに、サッと伸ばした手を引っ込める。
「お、おおおおはようアンリ」
「今、何かしようとしてた?」
怪しむようにジッと俺を見つめてくる。
「あ、ああちょっとな・・・」
どうする?この顔は絶対に疑っている。俺から素直に謝ったほうが被害は少ないんじゃないか?
「あの、その・・・ごめん!」
「・・・あー、さっきのハムスターのこと?」
あっこれは気づいてないやつですわ。このまま流れでさっきの事を謝まろう。がんばれ俺!
「ああ、つい向きになっちゃってさ・・・俺の偉大なる魔法による精神攻撃で相当な心の傷を負ってしまっただろう。それに・・・その・・・レベルの件、あれは才能眼鏡が壊れているわけではなく、本当に俺はレベル2なんだ。レベルを偽るようなくだらない嘘をついて本当に申し訳なく思ってるよ・・・」
謝っている最中、だんだん自分が情けなくなっていき声が小さくなるのが分かる。
しかしこんな謝り方でも最後までしっかりアンリは聞いてくれていた。
「いいのよ、私も酷い事言っちゃってごめんなさい。けど、レベルが低くたっていいじゃない。ヨースケにはすごいスキルがあるんだから。羨ましいくらいよ」
と冗談交じりにフォローまで入れてくれる。あー本当にいい子だなぁ。ここは俺もナイスなジョークで応えておくか。
「ハハハ、そんじゃいつかレベルを入れ替えるマジックアイテム見つけ出して交換しよう。約束だぞ?」
「え、いやそれはちょっと・・・」
「おい!そこでマジになんないでよ!」
「ふふっ。とりあえず仲直りね」
俺とアンリは仲直りの握手をし、北へ向かった。
そろそろ日も暮れる頃、町が見えてくる。
今日はこれくらいにして、宿で休むことにした。
そう言えば俺は宿には泊まった事がない。いくらぐらいかかるんだろうか。
「いらっしゃい。一部屋晩飯付きで55シルバーだよ!」
55シルバー!?たけぇ!予想以上に高い!!
・・・いや、アンリの様子を見るに相場みたいだ。
「ア、アンリさん。大事なお話があります」
「ん?どしたの?」
「お金がたりません」
アンリは少し固まった後、笑いながら話す。
「なーに言ってるのよ、王様からたくさんもらったって大臣から聞いたわよ?」
「ああ、あれはとある事情でなくなってしまったんだ・・・」
「と、とある事情・・・?」
「恵まれない人(酒場の連中)にほぼすべて寄付(酒として)してしまったんだ・・・」
「そんな事情が・・・分かったわ。足りない分は私がだしてあげる。そのかわり明日から一緒にクエスト受けて、お金を稼ぎましょうね」
お金のために働くなんて・・・
元の世界でもバイトせずに親からのお小遣いで生きてきたというのに。
めんど・・・いや、いい経験だ。アンリも手伝ってくれるみたいだしね。
そうして俺はアンリから4シルバーと50ブロンズを貰って宿屋に支払い、食事を取った後、部屋のベットで眠りについた。はー、城のふっかふかのベッドと比べると寝心地最悪だな!
朝、俺はアンリに叩き起こされクエスト斡旋所にきていた。
はやいよアンリさん。まだ9時だよ・・・
「働く人はみんなこれくらいの時間には仕事をはじめているのよ!普段どんな生活してるのよまったく」
そりゃあ王様よりも贅沢な暮らしをしていましたとも。はい。
「うーん。あんまりたくさんお金がもらえるようなクエストはないわねー」
品定めしながらアンリは掲示板を見る。
「あ!これなんてどうかしら!」
そういうと俺にクエスト内容の掛かれた紙を見せてくる。
どれどれ、近隣の森に住むゴブリン族の討伐、報酬は・・・20ゴールドか。割に合ってるのかすらわからん。
「しかしゴブリン族の討伐とは言うけど、なにをもって討伐になるんだ?」
適当に2、3匹倒して「はい、おしまい」でいいんじゃないだろうか。
「森にいるゴブリン族の長が持っている杖を持ってこれば討伐として認めるってクエスト詳細には書かれているわね」
長か、なんか強そうだな。まぁ光太郎が居ればどの魔物も楽勝だしこれでいいだろう。
俺たちはこのクエストを受け、ゴブリン族のいる近隣の森に向かった。