05.ゴミというよりゴミクズ野郎
「よし。ステータスに関しては良くわかった!そんじゃあ早速俺がアンリを見てやろう!」
「本当!?わくわく!」
俺は才能眼鏡でアンリを覗き込む。
えーっと・・・
レベルが25、限界レベルは・・・50!
一般人がレベル10だと考えると良い方である。
スキルは【治癒魔法:回復】に【治癒魔法:状態異常回復】、【強化魔法:防御】もある。
うーむ。地味だ。残念ながら上位スキルや、複合スキルっぽいものは無い。
俺はその旨をアンリに伝える。彼女は自分の限界レベルの高さを喜びつつも一般スキルしかないことに複雑な表情をしていた。
「スキルが普通でもいいの!あたしのレベルはまだまだ上がるって分かっただけですごいうれしいわ!どんどんレベルを上げれば強いスキルだって覚えるかもだし!」
この少女、健気である。
「自分のステータスを知っちゃうとヨースケのステータスも気になっちゃうわね」
唐突に彼女は俺の手から才能眼鏡を取る。あかん!!
「まてまてまて。俺のステータスなんてみても面白くないから!まじで!!まじで!!!!」
「なーにいってんのよ。60レベルの人のステータスが面白くないわけないじゃない」
にこやかにそう言うと、アンリは眼鏡で俺を覗く。
それにあわせて飛び前転でアンリの視界から逃げる俺。
「ネクロマンサーのステータスを見たら呪われるから!!死んじゃうから!!!」
華麗に決まる飛び前転から体勢を立て直し逃げようとする。が、日ごろの運動不足からか膝が言う事を聞かない。に、逃げられない・・!
アンリは何いってんのよと笑いながら、無慈悲にも俺にレンズを向けた。
「よ、よせ!やめろーーーーー!」
「・・・レベル・・2!?こ、これ壊れてる?レベル2なんてごみみたいなレベルはじめてみた・・・」
「うわあああああああ!!」
冒険に出て初日にパートナーにゴミ扱い・・・
こんなのってないよおお。あんまりだよおおおおお!
だ、だめだ。俺のすごいところを見せ付けなければ。
そうしなければ今後の冒険でゴミみたいな扱いは必至!
「あっ!ごめんなさい!つい」
謝ったって許さん!人の価値はレベルでも血筋でもチャ●ラ量でもない!
スキルだ!!
「魂亡き者よ、我が呼び声に応えよ!サモンアンデット!!」
詠唱と同時に魔方陣が出現し中から勇者が現れる。
「これが例のスキル・・・!」
ふふん、アンリめ、びびっておるわ。このまま人のことゴミ呼ばわりした報いを受けるがいい!
「さぁ光太郎、アンリちゃんを軽くしばいておやりなさい!!」
「ちょちょちょちょっとヨースケ、それはいくらなんでも冗談じゃすまないわよ!」
人をゴミ呼ばわりしてよく言うぜ。
まぁ軽く小突く程度だし大丈夫だろ。
「ぅぅぅ・・・」
・・・光太郎君?なんで動かないの?マスターからの命令だよ?
「ぅ・・・ぅ・・・」
光太郎は呻きながら頭を横に振る
こ、こいつアンデットの癖に一般人には手を出さないつもりか・・・!
「いいから命令どおり動けよー!」
俺は光太郎の背中を押すがびくともしない。
流石腐っても勇者・・・か。その鋼の精神には感服だ・・・。
「もー。ビックリさせないでよぉ」
アンリが安堵の表情を浮かべる。
ここで諦める俺ではない。
「ふはは、まだだ!まだ俺には手下が残っているのだよ!魂亡き小さき者よ!我が呼び声に応えよ!」
詠唱と共に小さな魔方陣が広がる。
「サモンアンデットォ!!」
そして魔方陣の中からは・・・
小さなハムスターが顔を出した。
うむ。かわいい。
いかにも「へけっ」とか言いそうだし。
「いけ!ハム吉!体当たりだ!」
俺はアンリを指差し命令を下す。
「キュキュー!」
ハム吉もちゃんと俺の命令を聞きアンリの下に駆け出す。モラル野郎の光太郎とは大違いだぜ!そしてハム吉の体当たりがアンリの足に命中する!もちろんアンリにはノーダメージだ!!
まぁわかってはいたけどね。ハム吉レベル1だし。
「きゃーー!かわいいーーー!」
アンリは声を上げハム吉やさしく抱え上げ撫でた。
「キュ~」
ハム吉も気持ちよさそうにしてアンリに甘えている。おいこら、俺の手下なのに、簡単に俺以外に懐くなよぉ!
「ハム吉ちゃんって名前なのねぇよーしよし」
何度かアンリがハム吉を撫でたその時だった。突然ぼとりとアンリの手から何かが落ちた。
「ん?気のせいかな」
アンリは落ちたものに一瞬気を取られたが、視線を自分の手の平に戻す。
「ギュ~ギュ~」
しかしそこには首の取れたハム吉がアンリに撫でて撫でてとせがむように鳴き声を上げている姿があった。
「ッッッッ────!!!」
それを見たアンリは、声にならない叫び声を上げそのまま後ろに倒れてしまった。どうやら気絶してしまったらしい。
うんうん、最初は誰だってそうなるよね。
俺もそうだったし。(本当は失禁までした)
見た目はかわいいハムスターだが、サモンアンデットで召喚しているからには、ハム吉も立派なアンデットなのだ。
あんな風に何度も頭を撫でていると首がもげるのである。