02.突然の死と再会そして汚ぇ花火
「だ、大臣!!勇者が、光太郎が死んだって・・・」
「はい・・・今そのように連絡が入りました・・・」
う、嘘だろ・・・あの光太郎が?なんでもできる天才が?
嘘だ。今の暮らしはどうなる?嘘だ!どうやって元の世界に帰る?
俺が魔王を倒すのか?最高レベル3の俺が?
思考が追い付かない。あやふやな思考で俺は大臣にすがる。
「ま、魔法だってある世界だ、死んだ人間くらい生き返せるんだろ・・・?」
都合の良い話なのはわかっている。しかし聞かずにはいられない。
大臣は暗い顔のまま重い口を開いた。
「もちろんあります」
あるんかい。焦って損したわ。なんだよさっさと復活させて魔王倒させに行けよ!
「しかし、勇者がやられた相手に問題があるのです」
「も、問題・・・?」
「勇者を殺した者、それは魔王軍の四天王が一人魂喰らいのジェイスという」
まず四天王なんて初耳だわ。
「四天王って・・・?」
「召喚された日、王から説明があったじゃないですか・・・」
いかん。まったくおぼえていない。
「魔王軍の領土と4つの国の領土の境には城があり、そこに魔王軍の四天王がいるって話ですよ」
「あーあれね、うん。覚えてる覚えてる。そんで?うちの国と隣接してる城にはその魂喰らいがいるわけか」
「その通りです。其奴は人の魂を抜き取りコレクションにする恐ろしい魔物なのです。」
「それじゃあ勇者の魂もそいつにとられちゃったと?」
「はい、死んだものを蘇生するためには体と魂が必要になるのですが、今は共に魂喰らいが所持しており、蘇生できないのです」
「だ、誰かにその魂喰らいを倒してもらえば・・・」
「もちろん、今討伐部隊をあつめているところです。しかしあの勇者が敵わなかった相手・・・はたして倒せるか・・・」
そ、そんな・・・。これじゃあお小遣いどころではない。というか俺明日からどうなるんだ?勇者の身内だから好き勝手遊んでこれたのに・・・。
と、とりあえず今日は疲れたし休もう・・・。
俺はそっと大臣の部屋にから出ていき自室に戻ることにした。
「どうすりゃいいんだ俺、考えろ」
必死に自分の身体中を才能眼鏡(王様が使っていた虫眼鏡だ!)で覗く。
自慢じゃないが俺に一人で生きていく力はない。なにせレベル2だ。普通に戦えば町のすぐ外にいるスライムにすらやられてしまう。
レア職のネクロマンサーのスキルで食っていくか?いやだめだ。俺が持っているスキルは、【サモンアンデット:ハムスター】くらいだ。死ぬほどかわいいゾンビハムスターを召喚したところでなんの役にもたたない。
自分よりレベルの高いものは呼び出せないし・・・せめてもう少しレベルが高ければ・・・。
・・・ん?なんだこのスキル。
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解放条件クリア
New サモンアンデット:勇者
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サモンアンデット勇者?
ま、まさか・・・。とりあえずスキルを発動させて確認するしかない。
「魂亡き者よ、我が呼び声に応えよ。サモンアンデット!!!」
詠唱すると床には魔方陣が広がる。 そしてその魔方陣に中から現れた者は・・・
「光太郎!!!やっぱり光太郎だ!!!!」
肌は土色で防具も錆びてはいるが間違いなく光太郎だ!
「やっぱお前はしぶといやつだよまったく!」
勢いよく肩を叩く。が、反応はない。
正確には「ウ゛ウ゛ゥウ゛ゥウ」と唸っているだけだ。
一通り観察してわかったが、スキル名通りまさしく勇者のアンデットのようだ。
試しに話しかけてみよう。
「光太郎君、元気?俺、お前には彼女がいるっていってたけど、実はあれ嘘なんだ。」
「ウゥゥ・・・アァ・・・」
・・・反応なし!どうやら勇者の器だけみたいだな。
俺ネクロマンサーだしね。スキル一つで勇者復活なんて都合が良すぎるか。
しかし俺のスキルで召喚されたんだし、めちゃくちゃ弱くなってるとかそんなことないよな?俺は才能眼鏡で光太郎を覗く。
「うわっレベル80!?旅立ってから俺5人分のレベル上がってるじゃねーか!」
これ俺制御できるのか・・・?80レベルがどれくらいつよいのかまったくわからん。
とりあえず大臣に相談しようと部屋のドアノブに手をかけた時、爆発音と共に城が揺れた。
「敵襲だー!魔物が攻めてきたぞー!!」
外から兵隊の叫び声が聞こえる。俺は勢いよくドアをあけ外へと向かった。
城の外には巨大なコウモリのような化け物がおり、それを取り囲むように兵士達が陣形を組んでいた。
「くははは、勇者が死んだときいたぞ!あんな化け物勇者と戦わず隠れていた甲斐があったぜぇ」
そう言いながらコウモリは羽を広げる。すると小さな竜巻が起こり兵士達を吹き飛ばした。
「俺たちじゃ手に終えない!隊長を呼んでくるんだ!」
俺の横にいた兵士はそれを聞いて駆け出す。おそらく隊長を呼びにいったんだろう。
俺はどうする?逃げるか?スライムすら倒せない俺がこんな魔物と戦えるわけが・・・いや、俺は勇者を召喚するスキルを手に入れたじゃないか。ここで逃げてどうする!やってやる!やってやるぞ俺!
俺はコウモリの化け物の前に立つ。
「なんだぁおまえ。俺に食われたいのかぁ?くはは」
コウモリの嘲りを無視して、俺は詠唱する。
「魂亡き者よ、呼び声に応えよ!サモンアンデット!!」
・・・・・・・・・ん?
あれ?魔方陣でないよ?なんでだ。
・・・あ、そうか。さっき部屋で出したままだった。一度召喚したら魔方陣に還すまで召喚はできないんだった。
さすがのこの空気にコウモリも気まずそうな顔をしている。
「えーと、もういいのか・・・?」
コウモリさん心配してくれてる。良いやつやんけこいつ。
「く、くははは。よくわからんが死ねぇ!」
やっぱり良いやつではなかった!ちくしょう!く、食われる!!
コウモリが口を開きながら飛びかかってくる。だれか助けてくれ!!
そう願った瞬間、突然城の壁が破壊され、高速で動く人影が目の前に現れる。その物体は呻き声のような雄叫びをあげるとコウモリの化け物の顔面に拳を叩きつけた。
あっという間だった。
コウモリの化け物の頭は潰れ、衝撃で体ごと四散した。
俺は助かったという安堵と目の前で生き物が爆発するという恐ろしい光景を目の当たりにし、意識を失ったのだった。