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13.ハム吉1000匹でも無理

 さて困った。

 どうやって魔女を倒すか考えているうちに城の中心部まで来てしまった。目の前には頑丈そうな大きな扉がある。おそらくこの部屋に魔女がいるんだろう。

 そこらへんにいる賊なら光太郎の拳圧で楽に倒せるが、相手は城を占領してしまうような魔女だ。しかも元勇者の仲間という折り紙つきの実力の持ち主。拳圧で倒せるような相手ではないのは確かである。


 なにか作戦を考えねば・・・作戦・・・作戦・・・・・・。

 だめだ!まったく思い浮かばん!


 元の世界でも読んでた漫画だと、俺みたいな弱い主人公は大抵頭が回ったり、口がうまかったり、なにかしら長所があったんだけどなぁ。

 俺は別に頭が良いわけでもないし、口が上手いわけでもない。勇者を召還する以外何も取り柄のない人間だ。そんな簡単に作戦が立てられたら、今頃軍師にでもなっていただろう。

 けどまぁこういうのって自分で抱え込んじゃだめだよね。俺だけ悩むなんて損だ。こういう問題は仲間に共有して苦悩を分かち合おうじゃないか。


「みんな、聞いてくれ。今まで言っていなかったが、実は光太郎は人間相手には直接攻撃ができない。魔女はおそらく人間。光太郎はあまり戦力にはならないんだ」

「えっええええ、そうだったの!?じゃあ今から戦う魔女はどうやって倒すの!?私達3人合わせて攻撃手段はヨースケの勇者様召還だけよ!?」

「ハム吉のことも忘れないであげて!彼だって俺達の立派な戦力のひとつだよ!」

「じゃあ、ハム吉で魔女倒せるの・・・?」

「・・・。みんなで作戦を練ろう。あまり時間はかけられないが3人揃えばなんとやら、何かしら作戦はでてくるだろう」


 そうして俺達のボス戦前の作戦会議が行われる。


「でも作戦会議をはじめます。意見のある者は挙手して発言するように」

「はいはい!」


 アンリが元気良く手を上げる。


「ハム吉を召還して、相手がハム吉のかわいさに油断したところで、首を取って驚かせるの。うまくいけば気絶させられるわ!」


 それ君が引っかかった策やん。


「たしかに人間相手にはかなりの精神ダメージを与えられる。だが魔女は今正気を失っているようだし、うまくいくとは思えん。却下!次!」


 レインがそっと手を上げる。


「じゃあレインどうぞ」

「はい。勇者様が魔女さんに正気に戻るように語り掛けるのはどうでしょうか?」

「なるほど、光太郎が言葉を話せたら完璧な作戦だ。ただ光太郎は言葉が話せない上に意思もほとんどない。実行は難しいだろうな」

「あ!じゃあヨースケが勇者様の代わりに語りかけるのはどう!?兄弟だし、相手も気づかないわよきっと!」


 なるほど・・・?でも俺って光太郎とはあんまり似てないような・・・。雰囲気や声は似てるかもだが、見た目は悲しいかな、あんまり・・・うーん・・・。ベクトルの違うイケメンっていうか。


「けど、どうやって勇者様の代わりに語りかけるんですか?」

「勇者様の鎧をヨースケが着ればいいのよ」

「ふむふむ、なるほど。なかなかにいい作戦なような気がしないでもない。ただこれ俺超危険じゃね?もし正気に戻らなかったら死んじゃうんじゃない?大丈夫かな?ねぇ?」

「ダイジョウブヨ、オマモリガアルジャナイ」


 アンリは俺から目を逸らし片言で話す。護符があっても痛いものは痛いんだぞちくしょう!


 しかし、攻撃手段がない以上、この作戦にかけるしかない。もしやばかったら全力で逃げよう。

 俺は光太郎から鎧を脱がせ、自身に纏う。


「流石兄弟、そっくりね!」


 鎧を纏った俺を見たアンリが言う。

 しかしなんだこの鎧くっそ重いぞ。まともに動けない。光太郎はこんな重い鎧を着ながらあの速度で動いていたのか。化け物かよ。

 とりあえず、本物の勇者である光太郎はしまっておこう。


「それじゃあ準備もできたし、魔女さんの目を覚まさせに行きますか」

「ええ!」「はい!」

「・・・一人じゃ歩けないので手伝ってください」


 締まらないなぁ、とアンリは呟きながら、レインと共に俺に肩を貸し、のそのそと俺達は部屋に入った。




 部屋の中はとても広く、王がいる謁見の間の様な場所だった。

 魔女の魔法なのか、様々な方向から風が吹き荒れ、部屋のいたるところで小さな竜巻ができていた。奥には装飾の施された豪華な椅子があり、そこには一人、右手に金色の剣を持ち、ブロンドの髪を靡かせた美しい女性が座っていた。


 なにこのラスボス臭、めちゃくちゃこわいんだけど!けど胸が大きくて素敵だと思います。90点は余裕だな。こわいけど。

 って、アンリとレイン後ろに退きやがった!!このつるぺったん共め!

 と、とりあえず魔女には話しかけて様子を見るしかない。


「や、やぁ!ひさしぶり!元気だった?俺だよ俺!」


 突如、俺の頬を鋭い風が吹き抜ける。ああああ頬から血が出てる。護符がなかったら死んでたな。


「いきなり現れてうるさいですわね。俺じゃわかりませんわ。名を名乗りなさいな」


 魔女に表情はなく、鋭い目付きで俺を見る。その眼光だけで腰を抜かしそうになる。

 落ち着け俺。勇者に成り切るんだ。


「一緒に冒険した仲だろう!光太郎だよ!勇者の光太郎!」

「・・・!コータロー・・・様?」


 光太郎という単語に反応して表情が揺らいだ!これはいけるかもしれないぞ!


「そうそう!実はあの時何とか生き延びてな!お前が人様に迷惑をかけてるようだったから説得しに来たんだ!」

「私を・・・説得?」

「ああ、こんな馬鹿なことはやめて、また俺と一緒に魔王を倒しに行こう!な!?」


 頼む、正気に戻ってくれ。もうこれ以上この緊張に耐えられない。正直漏らしそうだ。

 しばらく魔女は俺を見つめると、ふふふ、と笑いをこぼした。

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