出会いの季節
少し暖かいような肌寒いような風がこの季節を感じさせる。
もう1年がたったのか…案外時間は早いものだな
去年はいろんな奴らに出会って振り回された記憶しかないような気がするのだが気のせいだろうか。
こんなにも青い空の元で思い出すことにしては酷すぎる気もするが…まあいいだろう
この時間、この道ってベストチョイスだと思う
あまりにも人通りが少ないし、この道知ってる人がそもそも少ないからマイペースで歩ける
ってあれ?絶対こんな道に入ってこないような容姿の人影があるのだが…
誰か待っているのだろうか…何回もスマホを見ては閉じている。
とうとう待つのを諦めたのかスマホをカバンの中に入れていた。
近づけば近づくほど人影は華奢に見える
おいおいまじかよ。金髪のロングでこんなに華奢なのは明らかにスケバンじゃねーか。
あまり関わりたくねーな。絡まれると面倒だし。
…何か話しかけられたらあくまで通行人で通そう
つーか向こう側に気づかれないように気配を殺して行くしかないか。
近づけば近づくほど威圧感増してる気がしないでもない気がする。ああ怖い怖いどうにかして気がつかれないように、無事におうちに帰れますように…
金髪の彼女が突然息を吸った
やばいやばい気づかれた。もう無事じゃない。カツアゲされてボコボコになって学校で騒ぎになる…さようなら俺の一応平穏だった高校生活…
゛はーるのうららのすーみーだーがーわ゛
あれ?歌を歌い始めたのか!しかも選曲が滝廉太郎の春とか最近のヤンキーの中ではこれが流行りなのか!
滝廉太郎すげーな!お前さんこの曲で100年後に生まれたやんちゃ子供の流行作ってんだぜ!
それにしても綺麗な声してるな。この人。いっそヤンキーやめちまえばいいのに。おっとこの隙にさっさと家に帰ろう。そうしよう。
そう思いまた歩きはじめる。
彼女の透き通った歌声が無音だった空間に花を咲かせる。金髪が風に靡き絵画のような思わせぶりなシチュエーションを…
゛ヴヴヴヴヴヴヴヴィ〜ヴヴヴィ〜ヴィ〜ヴ゛
っしまった。こんな時にバイブ切ってないとか俺は馬鹿かよ。生きて帰れねーな。母さんありがとう。今の今まで育ててくれて。俺もう後がないよ。母さんに迷惑かけられないから俺が犠牲になるよ
先程までこの空間に花を咲かせていた彼女の歌も当然止み空気が凍りつく
彼女が俺の方向に振り向く。顔が真っ赤だ。絶対怒っている。ああ死んだ
「…あの…聞いてましたよね…」
「…いえ…」
「絶対嘘ですよね!?明らかに私のスマホのバイブ音じゃないし…」
「…ごめんなさい。聞いてましたすいませんでした」
そう死にたくない一心で俺が頭を下げると
「いえいえ、とんでもないです。こちらこそすいませんでした。脅しみたいに聞いて…しかも私の上手くもない歌聞かされて本当に申しわけないです。あ、それよりも大丈夫なんですか通知見なくて?」
案外彼女はいい人だったらしい。しかもよく見てみたら真っ赤だった顔の肌色も雪のように白く、今の空模様のような碧眼。まっすぐに俺のことを見ているその顔は言葉を失うほど整っている。染めた偽物じゃなくて本物だ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
「大丈夫です!!どうせどうでもいい戯言だろうしww」
「そうですか…この度はすいませんでした」
「いえ、こちらこそ失礼しました。では」
ああ良かった。いい人で。話しかけられた時本気で死を覚悟したぞ。神様ありがとうございました!このような俺を救ってくれて言葉にできないくらい感謝してるぜ!
「あの!」
さっきの子がこちらへ走りながら叫んでいる
やばい今度こそ刺される…でもさっきの会話でそんな性格に見えなかったけど人ってコロッと性格変わる瞬間が訪れるってこの事か…
「…ハァ…ハァ…ハァ…そのッ…制服ッ…西津西のですよね」
「はっ、はい」
「…ッあの突然のことで申しわけないのも重々承知して…ッいるのですが西津西高校に連れて行ってくれません…か?」
「は?」
「お願いします」
「いいけど…」
そう答えるとぱあっと顔色があかるくなり
「ありがとうございます!」
と彼女は答えた。
その表情と声にいつの間にか俺は心を奪われていた