大樹と蔦
ちょっと共産主義的な、皆でお手てを繋いでゴールな、
夢物語な同w…もとい童話。
山には様々な植物が生えている。
低い木や大木、そして蔦。
木々は互いに競うように高く伸び、
より多くのお日様の光を浴びようとする。
そして、大きな高い木になればなるほど丈夫にならなければならない。
丈夫になれば嵐にも負けない強い木になれるからだ。
ただ、丈夫になろうとすれば、
それだけ確りと栄養を貯めて時間をかけなければならない。
美味しい料理には下準備がいるのと同じことである。
只、ここに例外がある。
それが蔦である。
蔦は他の木に巻き付いて高く伸び、
自分を支える必要がないので早く成長出来る。
他の人に頼って自分が楽をして美味しい目を見る様な要領の良いズルい奴が蔦なのである。
これはそんなズルい蔦と木々達のお話である。
あるところに桜と梅と木槿、そして蔦があった。
桜も木槿もまだ若く、成長途中の若木であり、
梅はもう付ける花も少なくなってきた老木であった。
蔦は桜と梅と木槿に絡み付こうとした。
桜は断り切れず幹を許し、
梅は蔦の好みでは無かったが、
梅は箔を付けたがる見栄はりなので、
是非張り付いてくれても気にしないと蔦に言ってきた。
絡み付ける分には絡んでおくのが蔦の主義であり、
利用できる相手には好みの問題なく、
遠慮なく利用し尽くすのが蔦なのだ。
蔦は、嫌われものだった。
木槿はやはり、蔦の好みでは無かったが、
木槿の方から、
「お前に絡み付かれて締め付けられたら桜に抜かれてしまう。
俺は桜より早く成長したいんだ‼」
と強く言われて絡み付くのを諦めなくては行けなかった。
それから時が経ち、
梅はもはや年老いて成長することは無かったが、
年の功というかしぶといというか、
蔦に絡み付かれながらも、
毎年付ける花を減らしながらもその威容を示していた。
桜は蔦に絡み付かれて上手く成長出来ないながらも何とか花を咲かせていた。
そして木槿は蔦に邪魔されることなく伸び伸びと成長していた。
蔦は桜と梅に絡み付きながら誰よりも気楽に、
努力も苦労もなくお日様の光を浴びていた。
そんなある日、
嵐がやって来た。
とびきりの大嵐だった。
山の木々は悲鳴をあげていた。
幹が折れるものや根が抜けるものが次々と出ていた。
木槿のその中のひとつだった。
とにかく早く成長したは良かったが、
そればかりに気を取られて、
根を確りと張らなかったり、
体に栄養を貯えなかった為に、
根が抜けて体は何処かの国の斜塔のように斜めに傾き、
花は折れた枝ごとまとめて散り、
もし生き残ったとしてもこれから先が真っ暗になるような被害を受けてしまった。
桜と梅は、未熟な若木と衰えた老木にを蔦が複雑に幾重にも絡み付いていた為に、
桜が倒れそうなときは蔦を引っ張って梅が支えて、
梅が倒れそうなときは桜が蔦を引っ張って梅を支えた。
そして嵐は去った。
木槿は何とか生きていたが、
倒れていないのが不思議なほど傾いていて、
これ以上成長すれば重みで倒れてしまいそうになっていた。
桜と梅は嵐を堪え忍び、
花は散ってしまったが、
来年になれば無事に花を咲かせそうであった。
そして、
そして蔦は、
蔦は、ーーー桜と梅を結び付ける為に、
力を使い果たして枯れてしまった。
桜と梅に看取られながら蔦は死んでいった
そして、次の年、
蔦の分も生きる様に桜と梅は満開の花を咲かせた。
大嵐の翌年に満開の花を咲かせた梅は、次の年、
満足したように倒れて桜の栄養になった。
そして更にその年の夏。
何処から生えてきたのかわからない蔦が、
大木になった桜に絡み付こうとしていた。
桜は嫌がること無く、
蔦に巻き付くことを許した。
蔦は、それだけでは無く斜めに生えている木槿にも絡み付いた。
真っ直ぐに生えている桜は蔦にお願いして木槿にも巻き付いてもらった。
木槿はゆっくりと桜に引っ張られながら、再び地面に根を張り、
花を咲かせた。
今度は誰も蔦を嫌ったりしなかった。
何て事はなく、嵐の中、
桜と梅は共倒れ。
木槿はそれより早くあっさりと倒れてしまいましたとさ。