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猫と後輩にご用心!?(仮)  作者: 川越如月
2/2

俺の妹はかわいい。つおい。

「ふぅ、美味しかった! せんぱいごちそーさまですっ」

「はいはい、可愛く言っても別に奢ってよかったとか思えないから」


 半額デーの筈なのに普段通りのダメージを負うって何事? 新手の詐欺かな?


「えーなんでですかぁ、こんな可愛い後輩とデートできるんですからアイスなんて安いもんでしょ?」

「可愛いやつは自分で可愛いとか言いません〜、あとお前は遠慮というものを覚えろ。あと謙遜も。日本人の心意気だぞ」

「過ぎた謙遜は時に人の神経を逆撫でるんですよぉ〜」


 自信過剰すぎだろ……


「じゃあ遠慮は」

「あっ、ちょっと夕飯の買い物していかなきゃでした! 私スーパー寄るんでここでいいです!」

「人の話を聞けェ」


 てかここでいいですじゃねぇよ、俺が率先して送って行ってるみてぇじゃねぇか。


「ではでは、せんぱいまた明日〜♪」

「じゃーなストーカー、夜道に気をつけろよ。あと明日はくんな」

「もぅ、男の人のツンデレなんて需要無いですよっ」

「ツンもデレもねぇよ」


 そんな俺の言葉も軽〜く聞き流し、数多の男子高校生を騙し続けているスマイルをふっと浮かべると、回れ右して軽やかに去っていった。


 一連の動作が洗練され過ぎてて寧ろわざとらし過ぎるんですけど。


「帰るか……」


 さぁ帰るぞマイスイートホーム。本当は2時間くらい前に着いてる筈だった俺のサンクチュアリへ帰るんだ。




「たでぇーま」


 ドアを開けて一応挨拶する。あーなんか眠くなってきたわ、飯とか食わないでそのまま寝ちゃいたい気分。


 そう思って二階の自室へ向かいかけた矢先、後ろから膝裏を小突かれ、前に倒れ伏した。いわゆる膝カックンを食らって、前につんのめった状態に。


 そんでもって素早く俺の背中にまたがり腕を曲げ、背中上部へ捻り上げる謎の人物。あっ、やばっ

「いててててででで!! ちょ、ギブギブ、腕取れるってマジで!!」

「お兄ちゃん静かにして」

「じゃあやめてあだだだだだだ!!」


 いてぇ本当に取れそう、毎度思うけどどこにこんな力あんだよ…


「おい合歓里ねむり、お兄ちゃん腕とれちゃうよ? いいの?」

「ここで合歓里クーイズ!」

「話を聞いて!」


 なんで俺の周りの人々は話を聞かない人ばっかなの? そういうゲームでも流行ってるのか?


「問題です」

「…手短にお願いします」


「少年Aにはそれは可愛い可愛い妹がいました、その兄妹の両親は共働きで世界を股にかける仕事をしているために家事を協力して行わなければなりません」


「……何処かで聞いたような話だな」


 まるで俺と合歓里のような……


「その家庭では、夕飯は妹が担当していました。妹は健気にも、お兄ちゃんが帰る時間に合わせて夕飯を完成させようと毎日奮闘していました」


「………」


「毎日愛するお兄ちゃんに何時に帰宅するか確認をとり、確実にその時間に完成するように毎日努力していました。ところがある日、お兄ちゃんへいつも通り確認メールをしても、返信が来ません。合歓里はたいそう心配しました」


「あのさ『愛するお兄ちゃんに何かあったのでは、そう考えるともう胸は張り裂けそうです。夕飯の準備がままならない時の心境くらい胸が苦しいです。そんなところへ、ヒョコッと、だらっと、なにも考えてないようなツラでたでぇーまとか言いながらお兄ちゃんが帰って来やがりました』いや、悪かったから手を縛るのやめて『こんなに慕われているのにもかかわらず、こんなに心配をかけたにもかかわらず、妹のことなんて気にもかけず遊び呆けて返信もしなかったお兄ちゃんは一体どんな処罰を受けるでしょうというのが今回のクイズです!』………」


 マズい、我が妹は非常にお怒りのようだ、今日はブランに上手い具合に振り回されたし、携帯出すと、


「可愛い女の子といる時にケータイいじるとか何事ですか? 明日地球が滅びるんですか?」


とか言いながら足の小指を踏み抜いてくるから返信する隙がなかった、そしてそのまま忘れてた……


 こええよ!! 妹の目ベタ塗りになってんじゃねぇか!!


「……ね、合歓里は可愛いから『そういうのはいいです』はい」


 やべぇ、うちの妹ながらヤベェ!!


「…ごめんなさい」

「ごめんで済んだら警察はいらないんですよ? お兄ちゃん?」

「次かは気をつけるから……慈悲を……なんて」

「神は死にました、慈悲はないです」

「そんなー」

「くすぐり五分で許してあげます」

「お、お兄ちゃんそんなのには屈しないんだからッ」

「お黙りなさいっ」


 アーーーーーっ………………



 5分クッキング。




「もう……お婿に行けない……」

「最悪合歓里が貰ってあげるから大丈夫だよ〜♪」


 俺の手の縄を解きながらニコニコと笑う合歓里。かわいい。


 言わずもがなもうお分かりだと思うが、合歓里は俺の妹だ。黒髪ショートに快活そうなクリクリっとした目。可愛らしい顔。合歓里は嫁にやらん。やらんぞ。


 ついでに合歓里はさっき仕掛けてきたように死ぬほどくすぐりが上手で、昔から何かにつけて俺にけしかけてくる。一度始まってしまえばその運命は合歓里の手の中。逃れることはできない。


 十六年食らってても慣れないからなぁ……技術の進歩は恐ろしい。


「おう、頼むわ……」

「もう、冗談は顔だけにしようねお兄ちゃん」

「あれ? 今の俺が罵倒受けるところ?」


 なんだか理不尽な時間を過ごした気がする。


 まぁいい、合歓里に心配かけたのは事実だしこのくらいの罵倒なら甘んじて受けよう。


 よっ、と立ち上がって服を軽く叩いて息を整える。制服がしわくちゃだ。


「お兄ちゃん、夕飯は蕎麦でいい?」

「合歓里が作ってくれるのならなんでもいいよ」

「なんでもいいよはあんまり好きじゃないなぁ……でも許す! じゃあちょっと待っててねー」

「はいよ」


 そう言ってトテトテと台所へ向かう合歓里。かわいい。


 まぁ茹で上がるまで少し時間があるだろうし軽く今日の復習でもするかな。

 そう思い立って、カバンを拾って二階の自室へ向かった。



 部屋に戻ると、机の上に封の開いたエアメールが置いてあった。


 封筒の淵が赤と青のラインでぶぁーっとなってる、如何にもなデザインのやつだ。


「おーい合歓里ー」

「なぁにお兄ちゃーん」

「この手紙もう読んだ?」

「あぁ、さっきー」

「そっかー」


 我が家に届くエアメールは十中八九、いや百パーセント親からだ。


 さっき合歓里のお小言? にも少し出ていたように俺達の両親は共働きで、世界を股にかける仕事をしている。


 なんの仕事だと思う? これが聞いて驚け……


 巫女さんだ。インターナショナルMIKO。もちろん母親がね?


 というか巫女がなんで世界飛び回ってんの、という話だが俺の母親は生まれがとある神社で、生まれつき霊感……というか、そういった超常現象を感じたり、操ったりする強い能力を持っていたらしい。


 まぁ母親の家系が代々そういった胡散臭い能力を持って生まれてくるらしいんだけど、特に母さんは能力が著しかったらしい。


 それで呪いとか、霊とかを祓うことを生業にしているんだけど……世界中からお呼びがかかるほど、その界隈では高名らしい。仕送りもなんか無駄に多いから儲かってもいるんだと思う。このご時世そんな胡散臭いことで生計立ててるのはうちの親くらいだろうが……


 父親は付き人というかマネージャー? お手伝いさんとして付いて行っているだけのパンピーだ。


 まぁ実際にうちの両親がそういう仕事をしているところを見たことがないから『らしい』としか言えない。なんでも、一度そういったものを見てしまうと自然と集まって来やすくなってしまうらしい。母親曰く、「こわぁいモノ」が。だから親は見せようとしないし、俺らも見ようとも思わない。


 そんな親から度々届くエアメール。まぁ生存確認と所在地の確認とかいろいろ兼ねた一通だから定期的に来ればまぁ安心はできる。仕事が忙しかったりすると半年来なかったりすることもあるけど……


 ペーパーナイフで切ったと思しき方から便箋を引き抜く。二枚あった。


 一枚目は父親から合歓里へのラブコールだから無視。



 “

 マイスイート芥子埜けしのきゅんへ!


 元気〜? ママはちょー元気!


 今、ママとパパは南の島でバカンスしてまぁす♪


 青い空、青い海……アバンチュールの予感……きゃっ!


 妹がもう一人増えたらよろしくね〜〜ぽっ//


 ところで、今やってる仕事なんだけどちょーっち時間がかかりそう。くすん。


 具体的には後二ヶ月くらいかなぁ、その間は日本に帰れそうにありません。


 だから、お家は芥子埜きゅんに任せるゾ!

 まぁ最悪お家はいいから、合歓里ちゃんだけは守ってね? おーやーくーそーく!


 てな訳で、また手紙出すから楽しみにしててね? あでゅー!



 ママより(はぁと)


"



 相変わらず年甲斐ないなぁ母さん……なんだよきゃっ、とかぽっ、とかはぁと、とか。


 これが世界に名を馳せる巫女だと言うのだから驚きだ。あと親父は合歓里を溺愛しすぎだ。一枚目はさっきスルーと言ったがとてもキモくて地上波ではお見せできないレベルだから残念だけど積極的に割愛した。もう引くレベル。


 実を言うと合歓里も少し引いているらしいが、そんなこと言うと親父が自殺するから我慢してると言っていた。合歓里も大変だ。


 まぁとにかく無事も分かったし、そろそろ蕎麦ができるだろう。下へ向かうか。


 そう思って便箋を畳んでしまおうとした時、ピラッと。


 便箋が、一枚増えた。


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