第四話――回転しない球(ナックル)十七――
黒がドロップと同じ様な投げ方で投じた球を、狙われた少年は受ける事が出来なかった。
恐らく、バウンドすると思っていたのだろう。だが、黒が投げたのはドロップでは無かった。
「ナックルボール。これはなぜか受け難い」
さらに一人当たった後、君の横で、紫はそう言った。
君は、ナックルボールは落ちる球じゃないのか、と問うた。
「この距離じゃ落ちないよ。この球の特性は、無回転だ」
なんだかんだで、回転する球の方が受けやすい。回転していた方が軌道が確定的だ。僅かな変化と、なぜか先程までより重く感じる球質が、受ける際の手元を狂わせる。
結果、「なぜか受け難い」様に感じる。
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白は考えた。
この回転しない球は体全体を使って受けるのには適さないのではないだろうか、と。
そして、ずいぶん人数が減った後、あなたに狙われた白は腰を落として球を睨むようにすると、バスケットボールのパスを受けるように、手だけで受けた。
今までのは回転が多かった。受ける際に回転を抑え込む力が白の手だけでは足りなかったので出来なかったが、今回は回転が無い。
むしろ、縦横の大きな変化がない分、さっきまでのと比較してノビがある様に感じているのではないだろうか、と白は考えた。
正面ただし前方で手で受けるという事は、ある程度速度に誤差があっても肘の曲げ伸ばしを使って、受ける事が出来る。
そして、その策は功をそうした。
あなたは、感嘆の声を上げた。
そして、あなたはまた白達の人数を数えた。
ナックルに当たったのは十人。残り七人。