第二話――左方向に曲がってくる球(シュート)三十三――
白がフォールボールを受けた後、ブレザーを脱いで地面に置き、カッターシャツの姿になったあなたのフォームは大きく変化した。
最初は左の上手投げ。今は少し下気味の右の横手投げ。
最初に狙われた少年は為す術なく当たった。左手の辺りだった。
次の少女はどこかポカンとしたまま体の右側に当たった。
さらに、白のすぐ横に居た少年が当たった瞬間。白は気付いた。こちらから見て左向きに変化しているのだ。左方向に曲がってくる球。野球のシュートボールの様に。
しかも、あなたはどうやら変化量を一定にしていない。
よく見れば何とかなるし、白も何とか受け切ったが、白が予想した以上に脱落者が出た。
フォールで篩い分けられたとはいえ、精鋭というほどでもない。そこまで上手では無い人は、ここでことごとくが脱落したのだ。
白は、
「これが、彼の本気?」
と、紫に問うた。
「いや、シュートボールは序の口だ。ここからがぼくらの試練だよ」
と、紫は答えた。
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紫が言った「いや、シュートボールは序の口だ。ここからがぼくらの試練だよ」という言葉は、その通りだと黒は思った。まだドッジボールは始まったばかりだ。
黒は今日初めてシュートボールを見た筈なのに受けた君を見て、期待に胸を膨らませていた。これから投げていく球をもしかしたら受け続けてくれるかもしれない、と。
その後、黒はしばらくシュートボールを投げ続け、そして、君達の人数を数えた。
シュートに当たったのは十二人。残り二十一人。




