第一話――天高くより舞い落ちる球(フォール)四十――
練習の為に書きました。
後悔はしていません。
君が黒の元へと行ったのは、恐らく君の友人である紫に唆されたからであろう。
一般的な公立中学校の放課後、進学校として有名な私立中学の制服であるブレザーのまま、職員室から借りてきた鍵を使って物置を開け、セーフティホワイトでドッジボールのラインを引いて、片方の長方形のど真ん中で球を持って仁王立ちして待っている。
もう片方には、体操服等を来た中学の少年少女たちが集まってくる。
ある程度の時間待ち、黒は宣言した。
「じゃあ、今日もドッジボールを始める」
君は既に、紫からそう言われる事を聞いていたし、他の皆も今まで経験してきているので混乱は無かった。
黒は勢いよく体を沈み込ませた。
その後、浮き上がる様にして左手を振りぬいた。
「高っ!」
誰かが言う。
それは五階建の校舎を超える高さ。
天高くより舞い落ちる球。
落下点に入ったのは一人。
ドッジボールで使用される球からなってはいけないであろう衝撃音。受けようとした少年は吹き飛ばされた。
というか、実際威力は高い。それに、これは意外と受け難いのだ。だって、普通は正面に真っ直ぐ飛んでくるもので、これは上から落ちてくるものなのだから。
「フォールボール」
君の隣に居る紫はそうつぶやいた。
「これは、順番に受けるんだ。味方同士でぶつかったりしないように。これは始球式みたいなもので、全員が当たるか受けるかをしないといけない」
紫は君にそう解説した。
そして、衝撃音が鳴り続ける。
当たった人はエリアの外に出て、受けた人はエリアのど真ん中に立ち続ける黒に向かって投球する。しかし、黒が当たる気配は無かった。楽々受ける。それこそ、左手一本だけで受けたりするほど。
紫も何とか受け、最後の君の番が来た。
君は落下点より少し前に来ると高跳びの背面跳びの様に後ろに反った。
上から落ちてくるのなら自分が上を向けば正面からくる球となる。
衝撃音が鳴ったが、君は受け切った。
君は少し痛そうに背中をさすった。
そして紫に、相手は一人だしこっちの当たった奴らもいろんなところに散らばっているけれど外野はどうなっているのか、と訊いた。
「外野は無い。後ろに逸れたら取りに行くために外に出てもいいことになってる」
紫は君にそう解説した。
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あなたは背中をさすっている白を見ていた。
少々驚きの表情で。
あんな変な受け方をすれば当然ではあるだろう。
そして、白が受けた球をあなたに投げ返す。当然の様にあなたは受けた。
あなたは白達の人数を数える。
フォールに当たったのは七人。残り三十三人。