表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/32

友情

「安心しました。岡田さんのお陰ですね。こちらも何とか第一段階で止められる方も居ましたから」

「そうなのか? 俺達は結構苦労したぞ」

「患者さん達の場合はまだまだ苗木の状態がほとんどですから。細くて小さい木ならそれほど難しくないと思いますよ」


 ただそれを患者は悪夢の中で行わなくてはならない。それが難しい。


「それに病院の中で患者に刃物なんか本当は渡せませんから。小さな十徳ナイフみたいなものが精一杯ですよ。ほら、キャンプとかで使うじゃないですか。それの小さな奴です。寝る時にその十徳ナイフを持たせるようにしました。お陰で病院の中じゃ変人扱いですよ」


「俺も一人で出来たかどうか。中島が居て何とか一周皮を剥げたって所だよ」

「でも本当に良かったです。近藤くんが戻ってこられて」

「こいつで何とかな」


 近藤は手錠を取り出した。田嶋は手錠をマジマジと見詰める。


「ほう、これで皮が剥げました?」

「何とかな。切れ味なんて無いも同然だから苦労したぜ」近藤は手錠を仕舞う。


「出来れば第二段階の人も治療出来れば良いんですけどね」

「まさか、あの世界へわざわざ行ってってわけじゃねえよな?」

「それは勘弁。そこはもう私の担当じゃ無くなりますし、私が行っても役に立たないでしょう」

「そうだな。それに危険もデカイからな」

「報告だけはして後は任せますよ」


 それにもう手遅れだろうと田嶋は思った。第二段階の患者は生命維持装置が外せない状態だ。もし国が動いてくれてなければ装置が足りなくなっていた。


 そうかと近藤は残りの珈琲を飲み干した。


「それじゃあそろそろ行くか。実は中島の所へも寄ろうと思っているんだ」

「そうですか、それじゃあ私も報告書を書きに戻る事にしますよ」


 喫茶店を出ると田嶋が近藤へ振り返った。


「念の為ですがあれから夢は見ませんか?」

「ああ、いや見たな。お前と飲みに行く夢だったよ。どうだ?今度、昔の奴等も呼んで一緒に飲みに行かねえか?」

「近藤くんも知ってるでしょう?あの頃の僕に友達なんか居ませんでしたよ」

「そんなもん気にするな。良いじゃねえか。友情なんてものは今からでも暖めればよ」


 近藤は昔から周りをグイグイ引っ張っていくリーダータイプだったなと田嶋は思い出した。


「なるほど、それじゃあ機会があればぜひ」

「ああ、その時は連絡するよ」


 近藤は田嶋の肩を叩いて帰って行った。田嶋はその背中を見送る。中学校の時良く見た背中、野球が上手で沢山の友人に囲まれている近藤に憧れ、自分を卑下していたあの頃のまま。


 精神世界。薄皮隔てたすぐ近くにあるが見えも触れもしない世界。そこでは他人と繋がり相手を傷つける事もできる。


 現実世界でもそうだった。人は一人じゃなかった。どこかで人と繋がっていた。私と近藤君の様に。傷つけるか、慈しむか。精神世界でも現実世界でもそこが重要なのだ。


 友情か……。久し振りに聞いたな。田嶋はつい笑みがこぼれてしまった。

 最後まで読んで頂きありがとうございました。

 自分の処女作を何度か手直しした物になりますが、まだまだ稚拙な文章だったかと思います。

 特にキーワード(何を載せればいいのか)や物語のラスト(説明過多、ブツ切れ感)が悩みました。


 出来れば沢山のご意見頂ければ嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ