解明への糸口
誠はたまたま見付けた公園のベンチで気持ちを落ち着かせる事にした。
小さなスペースにブランコと滑り台があるだけの簡単な公園だ。サラサラと誠の上で木の葉が風に揺れる。どうしても色々思い出される。
霧、果実、消えていった人達、そしてあの大きな木。
ふと、あの木は一体何なのかと疑問が浮かぶ。木の事だけではなく、他にも分からない事だらけだ。どうやってあそこへ引き込んでいるのか。
地中へと引きずり込んであの木の養分にでもするんだったらサッサとそうすれば良い。あの果実を食べさせる事に何の意味がある?
誠は公園の木を見ながら考える。木からは鳥の鳴き声が聞こえる。たぶん雀だろう。
普通に考えれば果実は鳥に食べて貰い、中の種を運んで貰う為のものだろう。
不意に果実を食べた記憶が甦った。甘酸っぱい果肉、プチプチとした感触の種、誠はたまらずベンチの後ろに吐いた。
果実を食べた者が出られる。確かに種を運ばせるためと考えれば筋は通る。まさか自分の体を使ってそんな事が行われるなんて考えたくも無かった。
そう言えば近藤刑事がまた意識を失うかもしれないと言っていたっけ。それでは果実を運べなくなってしまうじゃないか。やっぱり種を運ぶためじゃないのかな?
誠は暫く考える。だが、そもそも全ては夢の出来事だ。それを真に受けるのはどうかしていると誠は自分に言い聞かせた。公園の中には他にも細い木が生えている。
ベンチのすぐ近くにある大きな木とは種類が違うのだろうか、それとも若木なのだろうか。
誠は心の中がザワつくのを感じた。
……若木? 何かを思い出しそうな気がしたがハッキリしない。言い知れない不安が募るばかりだ。
もっと情報があれば…。誠は病院の事を思い出した。
財布を取り出し、近藤刑事から貰った名刺を探す。沢山あるポイントカードの中から名刺を見つけ出し、住所を確認する。
そうか、名刺なんだ。ちゃんと医者の名前も書いてある。
病院や医師を指定していると言う事は何か意味があるに違いない。誠はベンチから腰を上げる。