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突然の現実

 誠は気が付いたら自宅のソファーに座っていた。一瞬何が起こったのか分からなかった。


 テレビにはDVDのメニュー画面が表示され、テーブルの上にはポテトチップスと空のDVDケースが置いてある。


 そうだ、DVDを見ていていつの間にか寝てしまっていたんだ。誠はホッとした。


 夢で良かった。霧の中に閉じ込められ、果実を奪い合う夢。妙に現実感があり、ハッキリと覚えている。体は汗ばんでいるし、体中も痛い。


 隣で恵子も眠っている。一人だけ寝てしまったんじゃなくて良かった。もし一人で寝てしまってたら後で恵子に何を言われるかわからない。


「恵子、起きて」


 誠は恵子を起こそうと揺すってみるが恵子はピクリとも動かない。恵子は向こうをむいたままでソファーにもたれている。


 急に周りの空気が重くなったような、そんな息苦しさに誠は襲われた。


 誠は恵子の肩に手を伸ばした。その動きはスローモーションのようにゆっくりだ。誠の中の何かがそれを拒んでいるようだった。誠は思い切って恵子の肩を掴み、こちらを向かせた。


「それで救急車を呼んだのか?」


 近藤聡は終始疑いの眼差しで誠の話を聞き、話が終わると大きなため息をついた。


 近藤は刑事になって十八年のベテラン刑事だ。取り調べ室には近藤と誠の二人だけ。近藤がひどく混乱していた誠の為、取り調べ室が空いていたから通しただけ。まだ正式な取り調べでは無い。


 近藤が出て行こうとすると誠は話し始めた。一通り話を聞いて近藤はどうしたものかと悩んでしまう。


 近藤には誠が嘘を言っている様には見えなかった。それに全く岩崎恵子が死んだ状況が分からない。居眠りしている間に死んでいたって事なのか?


 だが遺体の首筋にはくっきりと手の跡が残っている。明らかな殺人だ。なら隣で恋人が殺されているのに気付かず寝ていた事になる。そんな事はありえないだろう。近藤はも頭をかく。


「他に言っておきたいことはあるか?」近藤は静かに聞く。


「どう言う事ですか?」


 誠はすぐに理解出来なかった。あの時あった事はすべて話したつもりだった。ありのままを。それで十分ではないのか?


 近藤は何と伝えるべきか一瞬迷った。


「君には殺人の容疑がかけられている」

「何故です?」


 やはり誠は状況を理解していなかったのかと近藤はもう一度大きく息を吐く。


「状況から岩崎さんは殺された可能性がある。君の話からすると君達は二人っきりだったのだろう?そうなると申し訳ないが疑わない訳にはいかんのだよ」

「……そうですか」


 誠はうつむきながら答えた。今の誠にとってはどうでもよかった。どうせ恵子が生き返るわけじゃない。


「暫く泊って貰う事になるが連絡したい人は居るかな?」

「いえ、居ません」

「そうか、色々準備があるんでね。また後で話を聞かせて貰うよ」


 近藤は誠を残し、取り調べ室を後にした。

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