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始まり

 岡田誠は蒸し暑さを感じ、目を覚ました。辺りには霧が出ており、数メートル先も見えなかった。


 驚いて起き上がり、辺りを見渡すが見えるのは霧ばかり。頭の中にも霧が入り込だかの様に記憶がハッキリしない。


 誠は久しぶりに連休が取れたので二年ほど付き合っている岩崎恵子と二人で昨日借りたDVDを見ていた所までは思い出せた。


遊園地へ遊びに行った帰りに映画でも見ようとなってレンタルビデオ屋に寄った。


 恵子は恋愛映画、誠はシリーズもののアクション映画をそれぞれ選んだ。恵子の強い希望でまずは恋愛映画から見る事になった。


 内容は吸血鬼と人が恋におちるといった内容だった。そこまでは覚えている。


 ハッとし、誠はもう一度周りを見渡す。恵子は何処だ。恵子はすぐ隣に座っていた。先程の誠と同様に状況を飲み込めていない様子だった。


 恵子は辺りをキョロキョロと見回している。とりあえず恵子は無事なようで誠は少し安心した。


 恵子が誠を見詰める。誠に現状を確認したいが何から聞いて良いのか分からない。


「ねえ誠、ここ何処なの?」

「さあ、何処なんだろう。ごめん、僕にも分からないよ」


 誠は立ち上がり、恵子を引き起こす。彼女の手から震えが伝わってくる。誠はどうしようもない不安に駆られるが必死にひた隠した。


 とりあえずそのまま恵子の手を引き、誠は霧の中を歩き始める。どこまで続くものかと考えていたがすぐに霧は晴れた。


 霧が晴れているのは数十メートル程だけだった。その先はまた霧に包まれており、まるで霧をそこだけ綺麗にくりぬいた様だ。


 真ん中には一本の木が生えていた。地面は短い芝に覆われており、そこに数人の人間が座って居る。小さな丘にピクニックに来たような風景にも思え無くもない。だが誠の中の何かが警鐘を鳴らしている。


 そもそもこんな場所には見覚えが無い。誠が住んでいる町にだって自然は残っている。しかしこんな開けた場所は無い。


 それにこれ程大きな木は神社に生えているもの以外で見た事が無い。そんな光景を目の前に誠達は茫然と立ち尽くす。


 一人の眼鏡をかけた男が二人に気がついた。ほんの少しの間、誠と男は視線を交わす。男はそのまま何も無かったかのように視線を自分の足元へ戻す。


 男の死んだ様な目に誠は背筋が寒くなる。誠はこれまでそんな目を見た事は無かった。他の人達もそうだ。何か言い知れない絶望が立ち込めているようだ。


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