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私たちの出会い

いつもの帰り道。

今日もひとりぼっち。

でも、天気が良くてお散歩みたいで、やっぱり心地良い。


イヤホンを耳に差し込んで、ちょっとノリのいい音楽のリズムに歩調を合わせる。

駅のホームに入って少し右に進んだところに階段。それを上って反対側が私の乗る電車が到着するホームだ。


電車は15分に1本くらい。

ちょっと田舎だけど、周辺には学校がいくつかあってこの駅を利用する学生は多い。いつもなら中学の友達と会ったりするんだけど、今日は誰にも会わないな、なんてちょっと寂しくなったりして。


(のどかわいた・・・)


階段をのぼる寸前のところ。

オレンジジュースのあの甘酸っぱさが恋しくてたまらなくなった。

私の好きなオレンジジュースが売っているのは、通り過ぎてきたホームの自動販売機だけ。そして、電車がくるまであと10分。


(よし、買いに行っちゃお)


前に踏み出した足を後ろへ引いて、方向転換。


その、瞬間―――。

後ろに、人が、居た。


考える間もなく私はその人とぶつかった。

確かその人は本を読んでいて、私の学校のすぐ近くの超進学校の制服を着ていて、黒縁メガネの…。


転んだことを認識したときには、私はもう彼の上に乗っていた。

慌てて立ち上がると、私の下敷きとなった彼もゆっくりと起き上がってずれたメガネをかけ直す。その動作に何となく見入ってしまい「ごめんなさい」と言うのがすっかり遅れてしまった。

4,5回の謝罪とお辞儀をしても、少しの間、彼は何も言わなかった。


「いや、大丈夫」


(怒ってる…)


私は申し訳ない気持ちでいっぱいになった。

しばらく様子を見ていると彼が何かを探し始めた。


あ…。

それがすぐに彼の読んでいた本だと気づいた私は、どういうはずみでが彼の後ろまで飛んで行った本を急いで取りに行って、彼に手渡す。


本、というかそれは使い込まれた参考書だったのだけど、それを受け取った彼は何もなかったかのように再び歩き始めて行ってしまった。

そのあっけなさにしばらく彼の背中を眺るけれど、彼はいつまでも参考書に夢中だった。


(あ、オレンジジュース)


自分でも呆れるくらいあっさりと私の思考はオレンジジュースでいっぱいになった。さっきの事なんて本当に忘れて自動販売機へ。


(オレンジジュースっと…)


オレンジジュースの斜め下、抹茶オレの缶の見本を見たときふと、彼の顔が浮かんだ。そして、私は何のためらいもなく、その抹茶オレの下のボタンを押した。


それが、私たちの始まりになるとも知らずに―――。



ありがとうございました!

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