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魔界へ

人間は人間だ。

人間は人間でありつづけなければいけない。

なにかがない限り、

それは永遠に変わらない。





「あたし、悪魔になる。」

沈黙。

沈黙。

「・・・えっ!?うそっ!?」

「は?なによ・・・悪魔になれって言ったのヴァレンサじゃない。」

「い、いや・・・。絶対断ると思ってたんだよ・・・。」

「それなら断ってあげましょうか?」

「すいません。なんでもありません。」

「で、これからどうすればいいのよ?」

「えっと~、たしか、日が変わる前に契約者を捕まえないとだめなんだよね~。」

あたしは時計を見る。

現在、深夜の11時55分。

「ちょっと!!!!!あと5分しかないじゃない!!!」

「そうなんだよねぇ~。こ~なったら契約する前に魔界に行っちゃってお偉いさんに話してくるかぁ~。」

「そのほうがいいね。じゃぁいってらっしゃい。」

「え?美影も行くんだよ?」



あたしは強制的に魔界に連れていかれることになった。

ヴァレンサはあたしを抱えて満月の月に向かって飛んでいる。

月に近づくとヴァレンサは何か呪文のようなものを唱えた。

その瞬間、月の表面に魔法陣のようなものが現れて

黒い空洞が現れた。

「よぉし。じゃぁ行きますか~。美影ちゃんとつかまってろよ~。」

「え?ちょっとまっ・・・」

あたしが言い終わらないうちにヴァレンサは空洞の中に入っていった。


空洞の中にいたのは、ほんの一瞬だった。

あたしが気づいたときには、景色がガラッと変わっていた。

空は黒く赤い満月が、まるであたしたちをあざわらうかのように光っていた。

周りには家のようなものがたくさんあって、

その中心に一番高く、立派なお城が立っていた。

「こ、ここが魔界?」

「いえ~す!!さぁてさてお偉いさんはどこかなぁ~?」

そう言ってヴァレンサは飛び、お城にある一番大きな窓に向かって勢いよく飛んでいく。

「へ!?まってまって!!ぶつかる!!」

ぎゅっとあたしは目を瞑る。

しかし、あたし達はぶつからずドロッと窓は溶けてお城の中に入った。

あたしは驚いて通った窓を見ると、元通りになっていた。

「おや、ヴァレンサじゃないか」

そんな声が部屋の奥から聞こえた。

その瞬間、部屋にあったろうそくがいっきに灯った。

そこに座っていたのは、

きれいな赤い目、長い黒髪の長身の男がいた。

「かっこいい・・・」

あたしはおもわず心の声を言葉にして言ってしまった。

「は!?美影ってあんな感じがタイプなの!?」

「うるさいっ!!」

バシッと頭を叩く。

「フフ・・・ずいぶんと仲がよろしいじゃないか、ヴァレンサ?」

「あぁ、そーだな。で、契約者連れてきたぜ?時間なかったし。」

「うむ。お前が来ることは分かっていた。契約者を捕まえたとなれば、処刑はなしだな。

残念だ。ヴァレンサが死ぬところを見たかったのう。」

「俺はおめぇが死ぬとこが見てぇよ。」

「フフ・・・。さて、美影とやら。私はこの世界ラスア国の王、キルア・ラスヴェニアだ。」

そう言ってあたしに手を差し出してきた。

「はぁ・・・どうも。」

あたし素直にその手をとる。

その瞬間グッと体を引き寄せられ、腰に手をあてられ、まるでダンスをしているような恰好になった。

そしてあたしの瞳をじぃっと見た。

「な、なんですか!?離してくださいー。」

「ふぅむ。美影とやら、そなたはものすごく大きい恐怖をお持ちのようだ。」

あたしの言葉は無視かい・・・。

「おい。美影を離せよ。」

「おや?ヴァレンサ・・・やきもちかい?ならばこれはどうかな?」

そう言って、あたしに顔を近づけてきた。

そして、キルアの唇があたしの唇に・・・

「ってなるかい!!!離せ変態っ!!!!」

あたしは思いっきり頭突きをしてやった。

一国の王に。・・・王に?

「はっ!!!ごめんなさい!つい!!いつもの癖で!!周りに変態が多いもんで!!」

「その変態って俺も入ってる・・・?」

ヴァレンサがなぜか不安げにあたしに聞いてきた。

もちろん無視だ。

「あの・・・。大丈夫ですか?」

「う、うむ。美影とやらは頭が固いようだ。」

キルアがおでこを抑えて笑った。

よかった・・・。

ほっとあたしは息をつく。

「ところで、ヴァレンサ。お前すごいものを連れてきたのう。美影とやら。どうやらお主は悪魔に向いてないようだ。悪魔にはなれん」

『はぁ!?』

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