悪魔と天使
恐怖。
恐怖から誕生する悪魔。
喜び。
喜びから誕生するものは・・・?
「俺、2日以内に契約者捕まえないと、殺されちゃうんだよね~」
衝撃発言だ。
しかも、なぜ今言う・・・。
もっと早くいってほしかったものだ。
「な、なんで殺されんの!?」
「俺さぁ、魔界でちょ~っと悪いことしちゃってぇ~。捕まっちゃったんだよね~。そしたら、魔界のお偉いさんに~今から3日以内に契約者をみつけることができたら、お前のやったことはなかったことにしてやろう!って言われたもんだから~。」
・・・お偉いさん、そんなことで罪をなかったことにしていいんですか。
「でも~、見つけらんなかったら〔死刑〕って言われた~。」
「死刑!?」
「そ~。最初に片腕ずつ切り落とされて~、次は足切られて~、次は臓器をひとつひとつ・・・」
「もういいです!!!!いいですいいです!!!十分つらいことは分かりました!」
てゆーか・・・死刑になるほどの罪ってヴァレンサなにしたんだ・・・。
「え?ちょっと悪魔ちゃん達を100匹ほど殺っちゃった。」
「死刑納得。」
その夜、あたしはベッドで考え事をしていた。
今日の朝、あたしが死んだ方がいいのかなって言ったら、お兄ちゃん・・・すっごい否定してた。状況は最悪だったがな・・・。
その時は、悪魔になるなんて絶対ないって思ってた。
でも・・・。あたしがヴァレンサの契約者になんないと死刑になってしまう。それも嫌だ。あいつ変態だけど、なんか憎めない。明るくてあたしと正反対だ。
ふふ・・・。
もしかしたらヴァレンサに憧れてんのかな。
あたしは、どうすればいいんだろう。
あたしは、これからどうしたいんだろう。
あたしは眠れなくてベランダに出た。
夜は少し肌寒い。
今日は綺麗な星が輝いてる。
綺麗だな。青空より綺麗かも・・・なんちゃって。
そんなことを考えてたら、いきなり強い風が吹いた。
「きゃっ・・・なに!?」
あたしは顔をあげる。
そこには・・・
美しい、真っ白い翼の生えた
真城 優空が飛んでいた。
「あれぇ?おっかしいなぁ。たしかにここから悪魔の匂いしたのにぃ・・・。気のせいかなぁ・・・?」
「え・・・?え・・・?優空・・・くん?」
「ほぇ?・・・あ!!美影~。どーしてここに美影いるのぉ~?」
「い、いや。ここ、あたしの家・・・。ね、ねぇ・・・なんで翼生えてんの・・・?」
「むぅ?だって僕天使~。」
「・・・えぇぇぇ!?」
あたしが叫んだ途端、ものすごい勢いでヴァレンサがベッドから起きて優空くんの胸ぐらを掴んでいた。
「おい。なんでここに天使がいんだよ。おめぇ、真名は?」
「ふふふ。君みたいな雑魚に僕の真名を教えるわけないだろう?」
「言え!!!!!!」
「うっさいねぇ。もぉ・・・殺しちゃおうか。」
そう言った途端、優空くんの手には美しい弓が握られていた。
シュバっ!!!
勢いよく射られた矢はヴァレンサめがけて飛んでいく。
「くそっ・・・!!」
そう呟いた途端、
ヴァレンサの背中から美しい漆黒の翼が生え、矢を避ける。
「ふぅん。悪魔くん、けっこうやるねぇ・・・。でも~次はどうかなぁ~?」
優空くんがそう言った。
その瞬間まばゆい光とともに、いくつもの弓が優空くんの背後に現れた。
優空くんが弓を引くと背後の弓も同じように引かれ、優空くんが矢を射た瞬間、ものすごい数の矢がヴァレンサめがけて飛んでいく。
あたしは思ってしまった。
ヴァレンサが死んでしまうんではないかと。
でも、ヴァレンサは笑っていた。
「ひゃはは!!俺もなめられたもんだなぁ!!俺は、魔界で100人悪魔殺したこと知ってっかぁぁ!?100人対1人だぜ!?どう考えても俺が負ける!でも勝った!!それだけ、俺は強いんだよっ!!!!」
そう叫んだ。
次の瞬間、ヴァレンサのまわりに黒い膜のようなものが現れた。
その黒い膜に優空くんの矢ははじき返された。
「なっ!?そんなっ・・・!君一体・・・。」
「ひゃははは!!いやぁ。ひっさしぶりにフィールド使ったけど全然大丈夫だったなぁ?」
「くっ・・・。今日はひとまず退却させてもらうよ。
じゃぁねぇ~美影~~。」
「えっ!?う、うん。ばいばい。」
「ばぁいばぁーい」
そう微笑んで優空くんは一瞬で消えてしまった。
「なんであのくそ天使美影だけに態度ちがうんだよ・・・。」
「さ、さぁ?・・・って怪我ない!?」
「あ?全然大丈夫に決まってんだろ?見ろよ!かすり傷すら負ってない!」
「あぁ、そうですね。よかったですよかったです。」
「おい~。美影~。もうちょっと心配しようぜぇ~?」
「心配してるじゃない・・・。」
「ほんとぉ~?」
「ほんと。」
「ほんとにぃ~?」
「ほんとに。」
「ほ・ん・と?」
「しつこいわボケ!!!!!!はよ寝ろ!!!!」
「がああああん」
目が覚める。
あたしの部屋だ。
お兄ちゃんがあたしのベッドに座ってる。
あたしはベッドから動けない。
「美影・・・し・・・くれ・・・。や・・・・。・・・だ。」
お兄ちゃんが何か言っている。
その声はだんだん大きくなっている。
「美影!!!!死なないでくれ!!やめろ!!!だめだ!!!」
「っ!?!?!?」
パッと目が覚める。
あたしの隣にはヴァレンサ。
また添い寝してるし・・・。
・・・。また、新しい夢だ。
今度は恐怖じゃない。
なんだろう。この気持ち。
「美影おっはよ~う!!」
「あ。ヴァレンサおはよう。」
「・・・・。」
ヴァレンサは目を見開いてあたしを見ていた。
「なによ?」
「み・・・美影が初めて俺の名前呼んでくれたああ!!!」
がばっ!!!
「ひぃ!!なんでそんなことで抱きつくのよ!!」
「う~れ~し~い!!!」
「はぁ・・・。」
「あ。美影今日学校休みだろ?」
「え?そうだけど・・・?」
「ちょっと付き合え!!」
「はぁ?休みの日くらいゆっくりしたいんだけど。」
「お~ねがいっ!!このとーり!!」
そーいってヴァレンサは顔の前で手を合わせてお願いしていた。
「・・・ふぅ。まぁ暇だし気晴らしってことで。いいよ。」
「せんきゅーう!!ひゃはは!!デートだデード!」
「ちげぇだろ!」
バシっとあたしはヴァレンサの頭を叩いた。
あたしはヴァレンサと一緒に街を歩いていた。
ヴァレンサは、いつもの真っ黒な服じゃなく白のTシャツにジャケットをはおっていた。
見えないのになんでお洒落なんかするんだ・・・。
そう思っていた。
でも、なぜか特に女の人がちらちら見てくる。あたしじゃなくヴァレンサを・・・。
「ね、ねぇヴァレンサ?」
あたしは小声でヴァレンサを呼ぶ。
「なんだ~?俺のかっこよさに惚れたか?」
「違うわ。なんで、ヴァレンサのこと見えてんの・・・?もしかして天使とか・・・?」
「んなわけねぇだろ!!こんないっぱい天使いたら俺死んじゃう!死なねぇけど。」
「え!?じゃぁなんで見えてんのさ!!他の人からはヴァレンサってみえないんでしょ!?」
「え?今は見えるよ。俺が姿消してないから。俺って~自由自在にみえないようにしたりできんだぁ~!!」
「へぇ!すご・・・ってそうなの!?」
それじゃ、あたしも見えないときがあるのか・・・。
「美影は契約すれば、俺のことずっと見えるぜ?」
「ずっと見たくないからいい。」
「ひどっ!!!!」
「てかさ、どこに向かってんの?」
「着いてからのお楽しみ~!」
ヴァレンサについていくと、そこは病院だった。
「美影。悪魔にはね、やらなくちゃいけないことがあるんだ。」
「・・・?」
「それは、人間たちの恐怖や不安を喰べてあげること。」
「・・・え?」