↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
45/56

第四十四章 里の学校

春を迎えた白龍の里。

子どもたちは、これまで学んできたことをさらに深く知りたいと思うようになります。

そして、自分たちで「里の学校」を作ることを決めます。

そこには立派な校舎も、決められた教科書もありません。

山が先生。

川が先生。

畑も森も先生。

そして、里に生きる一人ひとりが先生です。

七色の白と黒龍も、子どもたちに大切なことを伝え始めます。

春の風が、白龍の里を包んでいた。

山には新しい緑が芽吹き、川辺には小さな花が咲き始めている。

冬の間じっとしていた生き物たちも、少しずつ姿を見せるようになった。


子どもたちは毎日のように山へ出かけていた。

苗木の様子を見るためだった。

「また葉っぱが増えた!」


「こっちも!」

「去年より大きくなってる!」

その声を聞きながら、蒼真は笑っていた。

しかし、その日の子どもたちは、いつもと少し様子が違っていた。


_____________________________________________________

「蒼真さん!」

「どうした?」

「学校を作りたい!」

蒼真は驚いた。


「学校?」

「うん!」

「何を勉強するんだ?」

子どもたちは顔を見合わせる。


そして、一人が答えた。

「白龍の里のこと!」

「山のこと!」

「川のこと!」

「動物のこと!」

「植物のこと!」


次々に声が上がる。

蒼真は笑った。

「なるほどな」


____________________________________________

凛が尋ねる。

「でも、学校ってどうやって作るの?」

子どもたちは黙った。

「そこまでは考えてないの?」


「うん……」

「じゃあ、まず考えるところから始めよう」

凛が笑う。


「自分たちの学校だから、自分たちで決めてみよう」

子どもたちは嬉しそうに頷いた。


____________________________________________

その日の午後。

集会所に大きな紙が広げられた。

子どもたちは、思いついたことを書いていく。


山の授業。

川の授業。

農業の授業。

動物の授業。

料理の授業。


そして――。

一人の子どもが書いた。

龍の授業。

みんなが笑った。


「それ、誰が先生?」

子どもたちは七色の白を見る。

「七色の白!」

七色の白は少し驚いた。


「私が先生ですか?」

「うん!」


____________________________________

七色の白は笑った。

「では、一つ質問します」

子どもたちが静かになる。


「龍は、何のために生きていると思いますか?」

子どもたちは考える。

「強くなるため?」

「空を飛ぶため?」

「山を守るため?」


いろいろな答えが出る。

七色の白は、首を横に振った。

「どれも間違いではありません」

「では、正解は?」


「私にも、まだ分かりません」

子どもたちは驚いた。

「先生なのに?」


「ええ」

七色の白は微笑んだ。

「生きる意味は、自分で探していくものだからです」


_____________________________________________

黒龍も授業に参加することになった。

子どもたちが尋ねる。

「黒龍は何を教えるの?」

黒龍は少し考えた。


「失敗した話なら、たくさんできます」

子どもたちは笑った。

「聞きたい!」

黒龍は山を見つめた。


「私は以前、自分の力を恐れていました」

「強い力を持っていれば、すべてを変えられると思っていた」

「しかし、それは間違いでした」


子どもたちは真剣に聞いている。

「力があることと、正しく使えることは別なのです」


________________________________________

黒龍は続けた。

「だから私は、皆さんから学びました」

「人を信じること」


「待つこと」

「分け合うこと」

「そして、謝ること」

子どもの一人が尋ねた。


「黒龍も謝ったことあるの?」

「あります」

「誰に?」

黒龍は少し笑った。


「たくさんの人に」

子どもたちが笑う。

「じゃあ、僕も悪いことしたら謝る!」

「それが一番です」

黒龍も笑った。


__________________________________________

里の学校は、少しずつ形になっていった。

建物はまだない。

けれど、山が教室になった。

川が教室になった。


畑も教室になった。

森も教室になった。

そして、里に暮らすすべての人が先生になった。

農家は、土のことを教えた。


老人は、昔の里のことを教えた。

料理を得意とする人は、山や畑の恵みを使った料理を教えた。

子どもたち自身も先生になった。


_______________________________________

ある日。

一人の子どもが、苗木について発表した。

「この木は、冬には葉っぱがなくなりました」

「でも、枯れていませんでした」

「春になったら、芽が出ました」


子どもは胸を張った。

「だから、見えなくても生きているものがあると思います」

大人たちから拍手が起こった。

蒼真は静かにその姿を見つめていた。


________________________________________

その夜。

蒼真と凛は川辺にいた。

「学校、いいものになりそうだね」

凛が言った。

「ああ」


「建物がなくても学校になるんだね」

蒼真は川を見た。

「ここでは、自然そのものが先生なのかもしれない」

凛が笑った。


「それなら、ずいぶん大きな学校だね」

二人は笑った。


_________________________________________

山の上。

七色の白と黒龍が、里を見下ろしていた。

黒龍が言う。

「人間は面白いですね」


「どうしてです?」

「自分たちで作った学校なのに、最後には山や川を先生にしてしまった」

七色の白は笑った。

「それだけ、自然から学べることが多いということでしょう」


「私たち龍も、まだ学ぶことがありそうです」

「ええ」

七色の白は頷いた。


_________________________________________

風が吹いた。

新緑の葉が揺れる。

川の水が光を反射する。


子どもたちの声が、里の中から聞こえてくる。

「明日は何を勉強する?」

「川!」

「僕は山!」

「私は料理!」

笑い声が響く。


白龍の里に、新しい場所が生まれた。

それは建物ではない。

誰かが教え、誰かが学び、また誰かへ伝えていく場所。

人と自然が共に学ぶ場所。


それが――。

白龍の里の学校だった。

蒼真は遠くから子どもたちを見つめた。

そして、静かに思った。


未来は、もう自分たちだけが作るものではない。

次の世代が、自分たちの手で作り始めている。

そのことが、何より嬉しかった。

第四十四章を読んでいただき、ありがとうございます。

今回は「学ぶこと」をテーマにしました。

知識は本からだけではなく、人からも、自然からも学ぶことができます。

そして、教える側もまた、教えることで新しいことを学びます。

七色の白が「生きる意味は自分で探していくもの」と語ったように、この物語の登場人物たちも、まだ答えを探している途中です。

白龍の里の「学校」は、これから物語の中で、さまざまな人や自然が出会い、知恵を交換する場所になっていきます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。