↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
21/56

第二十一章 集まり始めた影

白龍の里では、人々が少しずつ自分の心と向き合い始めています。

しかし、すべての人がすぐに変わるわけではありません。

人々の嫉妬、怒り、悲しみ、憎しみ。

それらの感情から生まれた黒い影は、少しずつ森の奥へ集まり始めます。

そしてついに、その影は一つの大きな存在へと変化し始めました。

まだ名前のない黒い存在。

それは、いったい何になるのでしょうか。

一方、里にはまだ七色の光があります。

人々の祈りも、七色の白の力も残っています。

光と影の戦いは、少しずつ近づいてきます。

白龍の里に夜が訪れていた。

昼間は美しい七色の光に包まれていた山々も、夜になると静かな闇に覆われる。

川のせせらぎだけが、暗い山あいに響いていた。


里の人々は、それぞれの家で眠りについている。

しかし――。

誰も気づいていなかった。

森の奥で、何かが動いていることを。

_____________________

山深く、人の足がほとんど入らない場所。

そこには一本の古い大木が立っていた。

何百年もの間、里を見守ってきた大木だった。


その木の根元に、黒い影が集まっている。

一つ。

二つ。

三つ。

それは、昼間に人々の心から生まれた影だった。


嫉妬。

怒り。

不満。

悲しみ。

そして、誰かを許せないという気持ち。

それぞれは小さな影にすぎなかった。


しかし、それらは少しずつ重なり始めていた。

「もっと……」

「もっと……」

低い声が森の中に響く。


影が揺れる。

「怒れ……」

「憎め……」

「自分だけが苦しいと思え……」

その声に呼応するように、影がさらに大きくなった。


_____________________

翌朝。

里では、再び小さな問題が起きていた。

「昨日の水場の件、まだ納得できない」


「もう終わった話だろ」

「俺は終わっていない」

二人の男が言い争っている。


周囲の人々も、どうしたらいいのか分からず見守っていた。

そこへ、一人の老人が近づいてきた。

「二人とも、少し落ち着きなさい」


「でも――」

「話をする前に、相手の言葉を最後まで聞いてみなさい」

二人は黙った。

老人は続ける。


「七色の白が里を豊かにしてくれたからといって、我々の心まで豊かになったわけではない」

その言葉に、二人は顔を見合わせた。

「……」

「……そうかもしれない」

しかし、その会話を遠くから見ている黒い影があった。

_____________________

影は、人々の感情を感じ取っていた。

怒りが強ければ強いほど、大きくなる。

憎しみが深ければ深いほど、黒くなる。


だが――。

人々が互いの話を聞き、少しずつ怒りを手放していくと、影は弱くなった。

黒い影は森へ戻っていった。

そして、そこで別の影と重なった。


「まだ足りない……」

「もっと大きな憎しみが必要だ……」

影は、里のさらに奥へと伸びていった。

____________________

山の上では、七色の白がその様子を見つめていた。

蒼真と凛も一緒だった。

「昨日より、影が増えている」

蒼真が言った。


七色の白は頷いた。

「はい」

「ですが、人々が自分の心と向き合えば、影は小さくなります」

凛が尋ねる。

「じゃあ、まだ大丈夫なの?」


七色の白は少し考えた。

「今は……」

「まだ大丈夫です」

しかし、その声にはいつもの穏やかさがなかった。


蒼真が気づく。

「何かあるんだね?」

七色の白は森の奥を見る。

「森の奥に、私の知らない力が生まれています」

「黒い影が集まって、一つになろうとしている」

_____________________

蒼真の表情が険しくなった。

「一つになると、どうなる?」

七色の白は答えなかった。

しばらくして、静かに言った。


「分かりません」

「でも……」

「もし、人間の強い憎悪まで集めてしまえば――」

七色の白は森を見つめた。

「大きな存在になる可能性があります」


凛が不安そうに尋ねる。

「黒龍になるの?」

七色の白は答えた。

「まだ決まったわけではありません」

「けれど、その可能性はあります」


_____________________

その夜。

里の中央にある神社で、一人の女性が祈っていた。

「どうか、この里がいつまでも平和でありますように」

彼女は目を閉じた。


家族のこと。

子どもたちのこと。

里の未来のこと。

自然のこと。

さまざまな願いを胸に、静かに手を合わせる。


その祈りは、七色の小さな光になって空へ昇っていった。

その光を見た七色の白は、微笑んだ。

「まだ、光は消えていません」


蒼真も頷く。

「うん」

「だから、僕たちも諦めちゃいけない」

________________________________________

一方。

森の奥では――。

黒い影がさらに集まっていた。

昼間の争い。

誰かへの嫉妬。

言えなかった怒り。

心の奥に隠した悲しみ。


そして、長い間抱えてきた恨み。

それらが一つずつ黒い塊へ吸い込まれていく。

ズズズ……。

地面が小さく揺れた。


古い木の根が震える。

鳥たちが一斉に飛び立った。

森の動物たちも、何かを感じ取ったように逃げていく。


そして――。

黒い塊の中央に、二つの赤い光が浮かび上がった。

「……まだだ」

低い声が響く。


「まだ足りない」

「もっと人間の心を……」

「もっと憎しみを……」

黒い塊は、ゆっくりと形を変え始めた。


大きな爪。

太い尾。

そして、長い首。

まだ完全ではない。

だが、それは明らかに――。

龍の姿へ近づいていた。

_______________

突然。

七色の白が空を見上げた。

「……!」

蒼真が尋ねる。


「どうした?」

七色の白の身体から、七色の光が一瞬だけ強く輝いた。

「森の奥で、大きな力が動き始めました」

凛が息を呑む。


「黒龍……?」

七色の白は、静かに答えた。

「まだ名前を持つ存在ではありません」


「しかし――」

七色の白の目が鋭く光る。

「生まれようとしています」

_________________

白龍の里には、まだ穏やかな夜が続いていた。

人々は何も知らず眠っている。

美しい川は流れ。

山は静かにそびえ。

七色の星が夜空に輝いている。


その美しい世界のすぐ近くで――。

黒い影が、巨大な龍へと姿を変えようとしていた。

光と影。

七色の白と、まだ名もない黒い存在。

二つの力が、白龍の里で静かに向かい合おうとしていた。

第二十一章を読んでいただき、ありがとうございます。

今回は、黒い影が少しずつ集まり、ついに龍の姿へ変化し始めるところまで描きました。

ただし、まだ黒龍は完全には誕生していません。

これから白龍の里の人々がどのような選択をするのかによって、黒い存在の力も変わっていきます。

七色の白が象徴するのは、人間と自然の調和。

一方、黒い影が象徴するのは、人間の心にある憎しみや分断です。

この二つを対比させながら、物語を進めていきます。

次の章では、黒い影がさらに力を増し、いよいよ黒龍誕生への大きな転換点を迎えます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。