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音もなく咲くー異世界で紡がれる、音と精霊の物語ー  作者: 小桜 すみれ
第二章 丘の家の赤い屋根の家
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第3話 導かれた家

静寂の草原を越えた先に現れた、小さな家。

そこは、孤独のない静かな温もりに満ちていた――。

 草原がだんだんと芝生のようになっていき、家の前に近づくと石畳になっていた。その先の玄関が目に入った。


 木の扉で、上が丸くなっていて、花の彫刻が施されていた。繊細な金細工がほどこされたドアノブがついていた。どこかで見たような気がした。


 「ありがとう……あなたが、ここへ導いてくれたんだね」

 心のどこかに感じていた不安が、ふっとほどけていく。


 玄関のドアノブに手をやると、「カチリ」と小さな音が鳴って空いた。


 「誰か……いますか?」


 思わず声に出してしまったが、返事はなかった。ナナが「ニャー」と鳴いた。けれど、なぜだろう。この家は、ひとりきりなのに、孤独はない。


 中は暖かい空気に包まれていた。入ると、そこはリビングで、大きなソファが置かれていた。リビングの真ん中に古びた薪ストーブがあり、静かに薪が燃えていた。


 花音はナナを抱いたまま、そっとリビングに入り、ソファに腰掛けた。ふんわりと包み込まれる感じがして、ちょっとだけ、ホッとしていた。


 ナナはあちこちの匂いを嗅ぎに行ってしまった。


 「私のこと、待っているって……どういう意味なんだろう」

 「ここから帰れるのかな……」

 でも、あの家のことを思うと、どんよりとした気分になった。

 「ここで、何が起こるんだろう」そんなことを思いながら、ソファに座っているうちに、花音はまどろみの中へ沈んでいった。


 朝が来るのは早かった。東の窓から、ふわりと光が差し込み、花音は目を覚ました。夢ではなかったとわかるのに、それほど時間はかからなかった。ナナが足元で寝ている。


 「……本当に、こっちの世界なんだ」

 しばらく天井を見つめていた。大きな梁がアーチ状にかかっていて、高い天井だった。他は漆喰のようだった。


 どこか柔らかな空気。鳥の声、木々のざわめき、家の中の埃の匂い。薪ストーブからの煤のような匂い。花音はソファから起き上がった。着替えもせずにソファで眠ってしまったから、体が少し重かった。


 だが、外の空気は新鮮だった。窓を開けると、丘の下に広がる森が風に揺れていた。

読んでくださってありがとうございます。ちょっと今回は短かったですね(汗)まだまだ慣れないです。


家の中に満ちる優しい空気と、静かに広がる森の風景。

花音が少しずつ、ここで「存在していい」と思える場所を見つけていくのが、この話のテーマです。

次回、第4話では──ついに“彼”が現れます。

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