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えっ、私の役目って魔力タンクなんですか??  作者: 朝食付き
2章 王都編

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24.えっ、みんな仲良く魔力タンクなんですか??

「普段からもっと魔力を蓄えておけば良かったかなぁ……」


 ぽつりとこぼした私の言葉に騎士くんが反応する。


「一つ聞きたいんだけど、禁術でも魔力無しには動かない、ということで合っているかな……?」


 ん? そりゃあそうですよ。魔術が現象を起こすのには魔力が必要ですし、禁術も汚染された魔力を使うとはいえ同じです。あ、そういう?! 騎士くんの言いたいことが分かった。塔に蓄えられている魔力を先に私たちが使い切ってやれば良いのだ。そうすれば、いかに禁術であっても不発になる。天才か君は!!


「待て。言いたいことは分かる。が、この塔に蓄えられた魔力がどれだけになるかは想像も付かん。例えるなら、巨大な堰だ。魔力がせき止められている。そこから魔力を抜こうっていうんだ。高圧の魔力が一気に吹き出すことになる。そんな魔力を組み込めるような魔術なんぞない。そのまま魔力の暴走で禁術が発動するだろう」


 そもそもどうやって禁術の塔から魔力だけを抜き出すのか。そこからして……いや、そうね。できる魔術がちょうど良くあるね。


 いやいや、そんなに上手くいくわけもないか。実際できたとしても使える魔術がないんじゃね……。私の火の魔術だって限界がある。前の時は塔自体が崩壊して流出した浮遊魔力だったから使えた(使えたとはいえないけど)わけで。第一何にそんな魔力を使うのかって問題が大きい。何よりどこのものとも分からない魔力を使うのはかなり大変なことである。


 早々に見切りを付けた私や師匠とは違って、先輩や騎士さん達はこの考えをより深掘りしようとしている。魔術師としてはかなり厳しい気がしているけれど、でも可能性をたぐり寄せようとしているのだ。


「放出するから留められなくて無理なら、そこに受け口を作るのはどう? 例えばこの子とかアホみたいに魔力を持っている人間なら受け止められたりしない?」


 指さされたのは私である。いや、確かに私は師匠の魔力タンクではあるけれど、出すのが専門で受けるのはちょっとやったことないですよ……。そんなに勢いよく魔力を入れられたら破裂しちゃうんじゃないかな私の身体。しかし念のため師匠を横目で確認する。私の限界なら、私よりよほど師匠の方がよく分かっているのだ。


「少し待て」


 まじまじと塔の柱を眺め始める。その間に先輩と騎士くんが私に寄ってくる。


「勝手にアンタを指定したけど、耐えられそう?」

「無理なら無理って言っていいよ。俺のは単なる思いつきだし、駄目で元々なんだから」

「ええと、師匠ができそうって言うならできるんじゃないかと……。私の限界はちょっとどのへんにあるのか分からなくって」


 自分で言うのも情けないけど、まあ仕方ないよね! むしろ人に判断を投げられる様になったと、そういう成長をしたのだと自分を慰める。先輩は納得顔で師匠に視線を向けている。私も同じ目で師匠を見る。騎士くんだけは心配げに私をちらちらと見ている。まあ、師匠の意見を聞いてから判断しましょうって。


「結論から言う。無理だ。塔にたまった魔力はこないだの塔に比べても桁が違う。例えばお前達がこの間と同じように考えてるなら改めろ。もしそれだけの魔力を火の魔術に入れれば、文字通り王都が消える。蝋に火を近づけるどころじゃない。一瞬で何もかもが蒸発する。熱で巻き上がった土と蒸気で人が住めるような環境になるのにどれだけかかることか」


 それに近いことをやらかした私としてはその状況が想像できてしまって顔が青くなる。というか騎士くんの前でそういうトンデモ術師だっていうの止めてほしいんですけど! もはや猶予も大してないから、逆に今不要なことに不満を覚えてしまう。


「王都を焼き尽くしたら追放じゃ済まないだろうね。むしろ私たちが魔王だとか呼ばれることになるよ。静かなる狼から大いなる火の魔王とかね。……悪くないか」


 悪いよ!! その場合下手人は私だからね! さすがに見過ごせない発言である。全員から白い目を向けられて失言に気がついたらしい。慌てて弁解している。別にそういうかっこいい言葉を好むのは良いけど、時と場合を考えて欲しい。お前もだ、騎士隊長!


 しかしため込まれた魔力はどうにかしないといけない。どうしたものかと考えて手のひらを見るけど、お手々のしわしか見えない。つまり、あるもので何とかするしかないのだ。


「師匠、やっぱり私に一回突っ込んでみません?」

「……続けろ」

「えっと、一瞬だけなら私でもこの魔力を受け止められると思うんです。勢いだけが問題ならですけど。私の魔術の帯を大量に使って、魔力の圧を分散するんです。帯を大量に用意して無理矢理でも一回私が受け止めれば、その魔力自体が緩衝材にもなると思います。あとは私の中の魔力を師匠が使い倒す。これです! ばばぁーん! と、師匠は私が破裂する前に魔力を使い込んじゃえば良いって訳です!!」


 ちょちょいと、やっちゃって下さいと片目を瞑り舌をペロリと出す。一拍おいてから師匠は無表情のまま私の舌をつまむ。嘘でしょ?! 痛いわけじゃないけどだからってつまんで良いはずがない! あうあうと涙目の私を尻目に話が進む。


「理屈じゃやれなくはなかろうが、実のところやれるんか、黒いのや」

「きついのは注がれる圧だけじゃない。魔力が際限なく注ぎ込まれる量に先にやられるだけだ」

「それならここにいる連中全員をタンクにしちゃいなさいよ」


 お? ここに来てまさかの同業誕生?! 嬉しいが、舌を掴まれてるせいで喜びを表せない!


「それは魔力を持たない俺たちでもできるんかい?」

「全く魔力のない人間はいないからな。今は賑やかし程度でも必要だ」

「騎士団じゃろくに魔術を使えなかったけど、魔力自体はあるから喜んで賑やかしになるよ」

「こいつが作った魔力の帯を使えば誰でもタンク役になれるはずだ」

「でも人に試したこともないんでしょ。はぁー……。またこのおとぼけ師弟に命を預けることになる訳ね……」

「ふぉぼけふぇいうのふぁしふぉうふぁけでふ」

「……死ぬほどきついがいいな?」

「我々も存分に使い倒してくれて構わないぞ。なあ、みんな?」


 騎士隊長がずずいと前に出る。精鋭騎士はむしろみんな魔術師だからね。すごく助かる。


「ならいいか。やるぞ」


 全然良くはないでしょ。良くはないけど、死ぬよりはちょっとマシかなぁ……。それにみんなが一緒ならそんなに悪くもない。ようやく舌を離してもらえたので、改めて言ってあげよう。この人達はそういうこと、絶対口にだそうとしないんだから、私が代わりにね。


「みんな一緒なら良いですよ!」

「それ、一緒に苦しむ仲間が増えて嬉しいって言ってる?」


 まずい、言葉を間違えた……! しかも概ねあってるから否定できない! しどろもどろに慌てる私に先輩が吹き出す。


「ばかね、アンタの言いたいことくらい分かってるわよ。ちょっとからかっただけ。……私だって、おんなじこと思ってるのよ?」

「お、珍しく赤毛が素直じゃの。なら儂らも見習っておくか、リーダー?」

「そうだね。我々静かなる狼は、姿形は違えど目的を同じくする群れだとも。同じ牙を研ぎ、同じ道を歩む私たちは──」

「さっさと始めるぞ。もうお時間がない。そこに並べ」


 長い演説は途中でカット。でもリーダーは小声でその続きを呟き続けている。多分あれ、かっこいい台詞を思いついたから言い切りたいだけだ、絶対。でもちょっと気になるから全部終わったら聞いてあげても良いかもしれない。きっと良く眠れるぞ!


「聞け。お前らの希望通り、全員を魔力タンクとして扱う。この馬鹿弟子を囲むように並べ。こいつが塔の魔力を直接受ける。お前達はこいつから溢れようとする魔力の圧を受け止める役だ。一度受けてしまえば後は耐えるだけでいい。はじめが一番肝心だ。覚悟しておけ」


 おうよ! 勢い込んで応えるが、続く声がないな? ほらほら、みんな元気出して。


「タンクとして先輩ぶれるのが楽しくてしょうがないって感じだね」

「普段から黒いのの無茶ぶりに振り回されてる先輩とも思ってそうだ」

「騎士団にもいいところ見せられるとも思ってそうね」


 うるさいな、いいでしょ!


 黙って聞けとお叱りが入る。はい、続けて下さい。


「無論そのままでは破裂する。だから受け止められている間に、魔力を徹底的に使い倒す。当然だが、俺がその役目を担う。一番慣れているからな」

「質問です!」

「やれそうな方法を見つけたからやると言っている」

「先に回答するのはずるですよ!」

「他に質問は?」


 傍若無人な師匠の振る舞いに、とりあえずブーイングをする。今回は先輩達も一緒になっての合唱である。いやぁ、気持ちの通じ合う仲間がいるのは良いなぁ。


「結局これって実験台よね」

「俺はいつかこういう日が来ると思っておったよ」

「黒いのがきついと言うくらいだから、本気できついんだろうね……」


 全員外からの魔力を受け止めることには変わりない。やると言い出しておいてなんだけど、まさか本当にやることになるとは……。だから今更にかなり怖じ気づいてる。


 私の名誉のため、みんなの名誉を引きずり下ろすけど、全員びびって腰が引けてる。そうじゃないのは師匠だけだ。この人は新しい魔術を試すときは生き生きしているもんな。──と思ったら、なぜだか微妙にげんなりとした顔をしている。どうしたのかな?


 話聞こか?


「ひたすら魔術を使い続けることになる。アホほどな。しかも、普段とは正反対のやり方でだ」

「ああ、普段は効率と節約でやってますもんね。え、貧乏性でそんなのしたくないとか言わないで下さいよ?」

「命がけでそんなこと気にするわけがないだろうが、この馬鹿弟子め。しかしな、初めての試みであることは事実だ。だから既存の魔術構成を参考にしないといけないわけだ。これ以上ないくらいに効率が悪く、魔術の実現すら危うい、まるで使えない魔術をだ」


 既存の魔術をねぇ。まあ師匠なら古今東西、どんな魔術を知っててもおかしくないし、思いっきりぼろくそにけなすそんな魔術だって見たことがあるんだろう。


 師匠が右の手のひらを上に向けて、魔力で構成を組む。びっくりするくらいスカスカでまともな魔術論理をぶん投げた力技でしか動かなそうな、ポンコツ構成。この魔術狂いの師匠がそんな魔術未満を参考にするときが来るとは! それにしても、この構成、なぜか妙に見覚えがあるような……??


「元はお前の火球の術式だ」


 ウップス! そりゃ見覚えあるでしょうよ! だって師匠に魔術論理を叩き込まれるまでは、私の使える魔術ってこの構成ただひとつっきりだったもの! え、なにこれ、本当にこんなので良く魔術師なんて名乗ってたね、私! 知らないって、こわぁ……。

「ちょっとみんな、これは見ないで! 騎士くんもそんな目で見ない! ええい、もう早く始めましょう!!」

「思い出したようで何より。さあ、馬鹿弟子がやりたいというからさっさと始めるぞ。準備は良いな? 良くなくても始めるがな!」


 うわ、師匠がちょっと投げやりになってる。


 みんなが配置につく。私から魔力をみんなに通すために、私の背中からは帯が人数分出ていて、精鋭騎士と静かなる狼の全員に繋がっている。だから別に離れていたっていい。だけど、リーダー達は私の背中に手を当てている。手のひらの熱が伝わって、とても頼もしい。


 そして私の目の前には師匠。タンクとして使われるときは大抵横並びだから、こうやって正面で向き合うのはちょっと照れるな……。


 よぉし、と気合を入れるために頑張るぞぉ~! と両腕を上げて力こぶを作る。みんなも頑張れぇ~! すると背中の肉が握られる。痛い! 励ましたのに何で?!


「アンタの応援はなんかイラッとくるのよ」

「正直同感だ」


 まあまあと取りなしてくれるリーダーもその意見を否定はしてくれなかった。ああ、悲しい。


「それはそうとして、これはなんていう作戦にする?」

「騎士団として命名には噛ませて貰うぞ!」

「隊長……それは後でにしましょう」

「……おめでたいのは小娘だけにしておけ」

「なんか当たりきつくないですか?」


 リーダー達の脳天気発言がなぜか私に飛び火する。なんで?


「アンタと違って魔力タンクなんて初めてなのよ。ちょっとは不安を取り除くアドバイスとかないわけ?」

「えー。無理に抵抗すると逆にしんどいので、流されるままに力を抜くと良いですよ!」


 ことこの役目については私が第一人者だ。師匠にだって負けない経験値がある。まああの人は使う側として同じくらい経験値ためてるんだけど。


「流されまいと抵抗するためにこんなことになってるんだがなぁ」

「私はもう諦めたわ。ほら、さっさと始めなさいよ! 弟子の術式真似て無駄打ちするんでしょ?」


 無駄撃ち……。たまには成功してたんだけどなぁ……。私の心に哀しみが生まれ、同じように師匠も肩を落としている。私のポンコツ術を真似するって時点でプライド砕け散ってそう。


「始める!」


 勢い任せのその言葉と同時に、師匠が塔の柱に触れる。蓄えられていた何百年ものの魔力が吹き出してくる。さあ、これからが私のでば──






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