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えっ、私の役目って魔力タンクなんですか??  作者: 朝食付き
2章 王都編

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15.えっ、私の友達がいい腕ですって??

 暗闇を出て少しだけ小休止。みんな目をしぱしぱさせている。当然私も。だって暗いところにずっといて、気を張り続けていたのだから。ほら、師匠なんて薄目になっているせいで壮絶な顔つきになってる。きっとこの顔を見れば子供は泣くし、私も後ずさる。先輩は薄目にしてても美人である。ううむ、いつもぱっちりしているから、目を細めていると色気があるなぁ……。私も真似てみるが、どうにも起き抜けの子犬のようだとの評価。これからの成長に期待だ。まだ身体が成長するのであればだけど。期待薄かなぁ……。


 さて、小休止もほどほどに先に進む。この辺りはまだ誰も来ていないし、私の明かりの魔術で十分に明るくできる。暗闇の圧がないのはいいけれど、代わりにまた魔獣が出てくるようになってしまった。通路は単調な道な一本道なだけに、度々戦闘が入るのがうっとうしい。


 私たちからするとうんざりが続くなぁって気持ちだけど、しかし騎士くんたちは違うみたい。妙に生き生きとしているように見える。結構長いこと足止めされてたわけだもんね。ここぞとばかりに魔獣を蹴散らすのは爽快なのかも。ただでさえ色んな人たちからさっさと解決しろと詰められていただろうから、攻略が進むのに喜ばないわけもないか。


 せっかくなので騎士団の戦いを見物する。私の役目はこれでしばらくなさそうだし、最上階を考えると温存するに越したことはないからね。それに連携をするに当たって誰がどのくらい動けるのか、そういうことを知っておきたい。基本的に私の行動は師匠の命令に従うにしても、万一というのはあるもんね。


 精鋭騎士小隊の5人は、戦いの時は兜の面を下ろす。だからぱっと見誰が誰かってのがわかりにくい。銀色の鎧を身に纏っているとは思えないほど機敏に動く。猿に似た魔獣の薙ぐような振り回し攻撃を鎧一つで弾いて、懐に飛び込んでいく。通り過ぎる時には既に猿は致命傷を受けて地に伏している。脅威度の低い魔獣はそれぞれが単独で倒していく。そしてオオトカゲのような大きい魔獣は二人や三人でまとまって相手をしている。防御と攻撃、どちらにも動ける遊撃。まるで小隊5人が一つの生き物になったかのような阿吽の呼吸だ。これでは魔獣が強かろうと問題がなさ過ぎる。たちまちの内に首を落としていく。


 ……師匠が自分たちより強いって言った理由が分かる。水が容器に合わせて形を変えるように、一瞬ごとにその役割が切り替わっていく。よどみのない連携は私たち静かなる狼が得意とするところだけど、あくまで前衛は前衛だし、術士は術士。役割は同じだ。だけど精鋭騎士達は誰もが前も後ろも中間にもなれる。どの役割も十全に果たせるのだ。一番前にいる騎士が防御を担ったかと思えば、瞬時に攻撃役になる。脅威だと思えば二人が同時に防御役になって魔術を行使する。その判断速度が尋常じゃない。


「さすがの、一言よね。三人寄れば嵐の如しって呼び名通りだわ」

「嵐ですか?」

「風と雨と雷。それぞれを剣と魔術と盾になぞらえてるのよ。いつどこから致命の一撃が来るかも分からない、そういう連携ね」


 なるほど。嵐の騎士か……。悔しいけど、すごいかっこいいな! すすすと寄ってきたリーダーとうなずき合う。


「私も嵐の騎士と呼ばれたくて騎士団に入ったんだよね」

「そうなんですか? いえ、納得しますけど」

「そうなんだ。今の狼の頭領というのも同じくらいかっこいいから良いんだけど」


 狼の野性味と嵐の無慈悲さ。魔獣からすればどちらにしても相手したくないだろうなぁ。


***


 8階は半分以上が暗闇だった。9階は魔獣が列を成すように現れて、しっちゃかめっちゃか。10階で落ち着いたと思ったら罠の見本市。どうなってるんだ、この塔は!? 責任者出てこい!! この怒りを胸に責任者の下へ向かっているわけで。遺跡なんてこんなものと言えばこんなものだけど、油断一つできない環境は気が滅入る……。


 良かったことと言えば騎士くんの戦いをじっくりで見られたことくらいかな。前の方で魔獣相手に剣を振るう姿はなかなかかっこよかった。


「アンタの友達。いい腕してるわね」


 でしょう! そうなんですよ、騎士くんは真面目でいいやつなのですよ! 私はあんまり剣について知らないけど、一朝一夕であの動きができるとは思わない。でも王都を守るんだって夢に向かって邁進してきたってことは分かる。うんうん。先輩にも伝わったようで何よりです。

 

 しかしこうやって戦いを眺めていると、時々妙な間があるのが分かる。あるというか、明らかに作っている。多分これは魔術のための間なのではなかろうか。

 騎士や剣士のような前衛と一緒に戦う場合、魔術をいつ使うかってのは結構な問題だ。うかつに撃てば同士討ち。これは困る。なので魔術を使うよって宣言して引いて貰うってのが、私がはじめに所属していたパーティのやり方。でも騎士団の戦い方は、前衛が魔術を誘導している。明らかにそこに撃ち込めって合図があれば、魔術師は術式に集中できる。これは確かに良いやり方だなぁ。例えば騎士くんの援護なら今すぐにでも私でもできると思う。一緒に行動するまでは合同での戦闘なんてできるわけないだろと思ってたけど、全然そんなことはなかった。端から見ていても魔術を差し込むべき間が非常にわかりやすい。これは良いやり方だなぁ。


 新たな気づきに頷いていると、師匠が寄ってくる。


「ようやく気付いたか」

「そう言うってことは、あの動きは魔術のためで合ってるんですよね?」

「そうだ。古今東西、魔術は強力が故に自滅しやすい。それを避けるためにいろいろな戦術が考えられてきた。前衛は魔術に疎く、術士は前衛の道理を知らん。だから線引きが必要なわけだ」


 だが、と師匠が続ける。


「騎士団、特に彼らのような精鋭部隊では、全員が魔術を修めることでその問題を解決している。前衛として剣や槍を振りつつも、瞬時に魔術師として術式をくみ上げる。速度に特化した術式だから、わずかな隙であっても魔術を差しこめる。騎士ならではの強みだ」

「あれ、でも今さっきのは明らかに魔術のために間を作ってましたよ?」

「そうだ。騎士の戦いには不要な隙だ。何のためかはお前自身で言っただろうが」

「あ! そっか、私たちが魔術を使う場合を想定してるんですね?!」


 そこらの魔獣程度じゃ騎士の敵じゃない。けど、この先を行けば魔人がいる。そうなれば私たちとの本格的な合同戦闘になる。通路じゃ狭いから合同ってのも難しいから、今のうちにってわけか。なるほど、賢い。


「私たちも同じように騎士の魔術援護を貰う練習しなきゃじゃないですか!」


 慌てて提案する私に師匠は冷たい。しらっとした目で私を見て、これ見よがしにため息をつく。な、なんだというんだ……!


「……騎士の魔術は速度特化だといっただろう。やつらは剣に近しい速度で魔術を放つ。前衛として肩を並べるとして、同士討ちがない振る舞いならよほど分かっているに決まっている」


 ……確かに。ましてみんな敵を向いてるわけだもんね。挟み撃ち状態ならともかく、肩を並べた場合はなおさら同士討ちの恐れは少ないと。はい、分かりました。なのでそろそろため息止めて!

 というか、その意味で言うと師匠だってほとんど前で戦ってる。前衛の呼吸を理解している。つまり?


「実質お前を想定した動きというわけだ。まあ、自分で騎士の動きに目を付けたことは褒めてやる」


 珍しく師匠から褒められたのは良いけど、他にすることがなくて暇つぶしで見ていたとは言えない雰囲気だ……。


「あー、っと、でもあれだとちょっと距離が心許ないですよね。うっかり巻き込みそうというか」

「確かにな。よし、お前の術式を一度見せておけ」


 そういうと師匠が大きな声を出す。残りの一体へ魔術を撃ち込むと。倍以上距離を取れと。怪訝な顔をしつつも騎士達は大きく距離を開けて見せた。

 こうなると困るのは私である。大急ぎの大慌ての大大変で火の術式をくみ上げる。師匠が宣言すると同時に、長髪の騎士がきっちり魔獣の顎に一撃当ててふらつかせてくれたのだ。絶好の機会をふいにするわけにはいかない。というか、離れて貰ったのに時間掛けすぎて待たせるんじゃ、色んな意味で面目が立たぬのだ!


 私史上最速と思う速度で組み上がった術式に、ガツンと魔力を注ぎ込む。がっちりと組まれた構成はいつも通り揺るぎもせずに放たれる時を待っている。


 指先に火が灯る。いや、燃えさかると言うべきかな。瞬き一つの間に発現した火球を浮かべたまま、指先を魔獣に向ける。さあさ、飛んでけ!


「弾けろっ!」


 その言葉の通りに火球が一直線に魔獣へ飛んでいく。当然回避行動を取る魔獣。直撃を避けようとしてももう遅い。そもそも私は直撃狙いじゃない。魔獣の近くに当たれば良いのだ。何せ、この火球のウリは爆発にこそある!

 魔獣のそば、塔の地面にぶつかった火球がはじけ飛ぶ。熱が膨らむように魔獣を包み込む。通路に広がる熱風が通り過ぎる頃には黒焦げ魔獣のできあがりだ。う、結構ぐろいかも……。


 思ったより魔獣が遠くに避けたもんだから焦ったけど、倒せたのだから万事事もなし! どうよこれ!? そう、きっと騎士団の隊長さんが"いい腕だな"とか言ってくるヤツ! 大丈夫、そんなときに備えて返す言葉も考えてあるから!


 が。なぜか精鋭騎士の皆さんはその場を動こうとしない。むしろ黙っている。え? どゆこと?? なんかやらかした雰囲気に私はきょどった。


「君のは黒いの仕込みだからねぇ。みんな今見た魔術がどういうものかを考え込んでるんだよ」


 ……そういうものなの? というか、それって喜んでいいヤツです?? おかしいな、師匠に弟子入りしたのは真っ当な魔術師になるためであって、おかしな魔術を使う変な魔術師になりたいわけじゃないんですけど。一目置かれたいのであって、一目で距離を置かれたいわけじゃない!


「すぐに慣れる」


 あんたのせいでしょうが!!


 ***


 反省した(というかへそを曲げた)私は大人しく後ろに引っ込んでいることにした。どうせ変な魔術師なのだから、黙ってたって構うまい。ひたすら松明役に徹する。どちらにしても騎士のみんながはりきっているから出番はないし。


 そうして何度目かの小休止に入る。


 水筒から水を出してこくりこくりと飲んでいると、そそそと騎士くんが寄ってきた。え-! いらっしゃい! 一気に私の気分は上々だ。ええい、お茶菓子の一つもないのか、ここには!


 仕方ないから両手を挙げてハイタッチ。しかしなぜか騎士くんは目を白黒させている。そういえば私ってば騎士くんの前ではずっと猫被ってたんだった。やらかしたかな? 今からしおらしくして間に合うか?


「いや、そのままでいいよ。丁寧にされるより、そっちの方が君の本当なんだろ?」

「そうですか? じゃあお言葉に甘えて。ね、こっちきちゃってだいじょぶなの?」

「うん、大丈夫。休憩貰ってるしね。それより、さっきの、すごかった。正直驚いた。それを伝えたくて」


 え~、そんなこと言われても、笑顔しかでませんよ? 思わずくねくねしてしまう。


「て、照れますね!」

「暗闇を照らした魔術もだけど、本当にすごいと思って」


 褒められたときに返そうと思っていた言葉が何にも思い出せない! せっかく片目を瞑る仕草まで練習してきたというのに!!


「で、でもですね、私の魔術は師匠の受け売りというか、ひたすら叩き込まれてようやく覚えた様なもので、そんなに威張れないというか! それより、騎士くんの方がよっぽどかっこよかったですよ! 後ろから見てましたけど、先輩もいい腕って言ってましたから!」


 先輩は戦いについては厳しい人だから、お世辞は言わない。つまり本当にちゃんとした腕があると言うことなのだ。つまり、私から見て、


「物語に聞く騎士様って騎士くんみたいだなって」


 途端に騎士くんが照れたような、それでいて少し苦いみたいな笑い方をする。え、それはどういう気持ちなの? 目をぱちくりと、その表情を何とか読もうとガン見してしまう。


「ああ、いや、ごめん。正直に言って、君の魔術に嫉妬してた。だから騎士と言ってもらえて嬉しくて、でもそんなこと思っていた自分が小さいなって思って、どうにも、変な表情になったのはそのせいだ」


 ……嫉妬? 私が唖然としている内に、騎士くんは自分のほっぺたをぱぁんと勢いよく両手で叩いた。痛そうな、それでいていい音が響く。痛みなんてまるでないみたいに、騎士くんの目は輝いている。


「騎士らしくある。それがおれの夢なんだものな。やれることをやる。騎士らしく。じゃあ、また後で」


 足取りも軽く、騎士の皆さんの元に戻っていく。え、ええ……? 一体なんだったの? 私なんかに嫉妬する意味なんてないし、むしろ私の方がずっと騎士くんをすごいと思っている方なんだけども。なのに、あんなにさっぱりとした顔で! ……なんというか、男の子ってそういうところあるよね?!


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