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えっ、私の役目って魔力タンクなんですか??  作者: 朝食付き
2章 王都編

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13.えっ、あの黒いのに入らないといけないんですか??

 塔を登り、登りに登ったり! 延々と歩き続ければいつかはたどり着くんだ、目的地には! それもまだ途中なんだけども!!


 ということで現在地図が完成している七階までを踏破して、八階への階段をえんやこらと登っていく。これが結構足に来る。正直この疲れを取るためだけに癒しの魔術を使いたいくらい。みんなは平気そうなので私一人だけかな、息を切らしているの。時々護衛についてくれている騎士の人から不安げにみられるのが申し訳ない! 心意気だけを言うなら騎士の二、三人くらい肩に担いで登ってやろう、って感じなんだけども。いかんせん体は正直なんだよな。


 塔の階段は通路とかよりもさらに薄暗い。私の周囲は魔術で照らしているし、騎士さんたちはおのおの松明を持っているから問題ない。一番先頭で斥候している冒険者は手ぶらなんだけど、明かりがなくても私なんかよりよほど確かな足取りだったりする。


 階段の終わりが近づき、八階が見えてくるとなんだかホッとする。もう登らなくていいからかな。


 たどり着いてみれば。なんか雰囲気が違うって言うか、人が多いというか。そこにはこんな塔の上層だというのに、騎士や冒険者がたくさんいたのだ。塔の中だというのに天幕まで張って、前線基地みたいなのが築かれている。かがり火が揺らぎ影を演出している。そりゃ雰囲気変わるよね。しかし、ややむさ苦しい……。普通に騎士や冒険者だもんな、ここにいるのは。体格はいいし引き締まってムキムキだ。結構威圧感があって居心地が良くなさそう……。いや、これ以上は言うまい。


 私たちの到着に気がついたようで、天幕にいた騎士達が出てくる。護衛してくれていた騎士の人達が引き継ぎをしている。ええと、どうすればいいのかな? みんなは落ち着いているけどまだ荷物を下ろしたりはしていない。せっかく休めそうな場所まで来たのに待たされるのはちょっと不満だ。それを維持している苦労も分かるから口には出さないけど。


 少しだけ待っていると駆け寄ってくる足音一つ。見ればなんと騎士君である。リーダーに向かいながら私の横を通り過ぎていく。少しだけ得意そうに口元が緩んだのを私は見逃さない。リーダーへと何やら話しかけていて、すぐに移動するよと声が上がる。そうか、騎士君もここに来ていたんだな。うむうむ。騎士君という友達がここを用意してくれたのだと思うと殺風景な陣地もなかなか滋味を感じられますな!


 案内して貰った天幕の中に荷物を下ろす。騎士君はまだまだ走り回るらしく、いったんここでお別れだ。また後で話をできないか探してみるとして。肩の荷が下りたのでまずは大きく伸びをする。いやはやちょっと楽にしたいのさ。薄紅のローブも一度脱いで、ここまでに付いたであろう埃をはたき落とす。それなりに荷物は選別してきているけど、それでも重いからね。先輩と背中合わせになって身体をよく伸ばす。うぇえ先輩が重い。決して口には出すまいが。


 それにしても、天幕の外はせわしない、そしてピリピリした雰囲気がある。やっぱり魔獣を常に警戒し続けてここを守り続けるのは大変なんだろうな。


 思いっきり気を緩めちゃったけど、ここは戦場だもんねぇ。なのにこんな立派な休憩所を作ってくれて、騎士の皆さんには頭が上がらないな。

 でも聡い私は気がついた。天幕の隙間から見えている外の人達。みんな一つの方向に注意を向けている。腰を上げて天幕の隙間から顔を出して視線をたぐる。


「あれ? 真っ暗? アレが例のやつなのかな……?」

「あら、ほんと。聞いてるだけじゃ何でって思ってたけど、確かにアレはきつそうね」


 そうなのだ。あれこそが騎士や冒険者達を足止めしているという真っ暗通路である。曰く、全く明かりが届かない真の闇なんだという。松明の火も、魔術の明かりも全て吸われてしまうんだと聞いていた。一切が見えない暗闇って言うのがどうにも想像できていなかったんだけど、あれは無理そう。


 ちょうど騎士の小隊が腰に紐を付けて中に入るのが見える。手を差し入れているだけなのに、全くその先が見えないのだ。月のない夜でさえそこまで何も見えないってことはないと思う。まるで墨に浸かるみたいに、真っ黒くろすけに何も見えないのだ。


「あそこまで黒いと師匠は同化しそうですね」

「あはは、そうね! あの真っ黒くろすけからすれば実家みたいなものかも」


 暗闇を師匠に例えて笑っていると、肩に手が置かれる。……この天幕には当然師匠もいるのだった。


「リーダーと旦那が騎士団と今後の動きを話し合ってる。俺たちはその間にあの暗闇を何とかする方法を見いださねばならない。分かるな?」


 はい。分かったのでほっぺた引っ張るの止めて貰えないでしょうか。

 ヒリヒリする頬を押さえつつ、改めて暗がりを見る。


「禁術ですね。私の明かりの魔術じゃ多分太刀打ちできないです」

「できても一瞬だろうな。だが魔術は使い方次第だ。お前には存分に働いて貰うぞ」

「できることならやりますけど、できるんです?」


 簡単な魔術では禁術の圧に耐えられない。暗闇を排すほどの力を作れない。だから禁術の隙間を押し広げるのだという。沼の底を調べたいなら透明な筒を水に差し入れればいい。魔術でできた明るい領域を暗闇に差し込む。その領域を必要なだけ広げてやればいいと。禁術を構成する術式の、文字通り隙間を突く魔術だ。手探りで道を探すなんてやってられないし、そういう手間を省略する。つまりそういう魔術になる。言うのは簡単だけど、師匠ならやるのも簡単にやりそうだ。問題はそれを私がやるってこと。


「無理難題ってもんじゃないですか?」

「人ごとのように言うんじゃない。構成は俺が見本を作るから、お前はそれをなぞればいい」


 ぱっと師匠の手のひらにくみ上げられた術式の構成を見る。随分と込み入っている。あれ、でも込み入っている割には単純な形してる……。2重の構成を3つ並べて空間を作ってるんだな、それで真ん中にある3重構成の部分で押し広げると。細かい部分は見てる暇ないから大枠をざっくり見ていく。大体は問題ないけど、中心部分だけは未定義部分がある。多分だけど、禁術の状況に合わせて変更する部分だと思う。


「これなら、まあ何とか行けると思います。中心のは師匠がやってくれるんですよね?」

「ああ。だがそれ以外はお前がやれ。こういうときのために散々構成の組み方を叩き込んでいるんだからな」


 真面目にやってて良かった。これは多分階段までの道を見つけるまでは維持し続けることになると思う。いわゆる設置型の魔術だ。師匠じゃあ多分魔力が足りないもんね。私が維持できれば師匠の手を空けられる。そうすればもう階段までの道は見つかったようなもんだな、がはは! たおやかに笑う私の声に乱雑な笑い声が混じった。一体だれだ?!


 妙に楽しげなその笑い声はだんだんと近づいてきて私たちの天幕をくぐってきた。おや、リーダーに旦那、と誰か。誰だ? そしてなぜリーダーと肩を組んでいるんだ??


「今戻ったよ。こっちのは私の騎士時代の同期でね、騎士団の精鋭部隊を率いる隊長なんだ。8階から先は彼の部隊と一緒に動くことになるから覚えておくように」

「それはいいんだが……、いや、続けてくれ」


 さすがの師匠も突っ込みを入れようとしたみたいだけどすぐに諦めている。ひょろりとしたリーダーと無精髭の目立つ騎士隊長。一向に離れる気配がないのはなんでなの??


「初めましてだな。君たちのことはノッポから聞いている。優秀だとな。期待している。我々もこの塔を攻略するために精鋭部隊を用意した。君たちの経験と知識、そして騎士の使命感があれば攻略も遠くないはずだ。よろしく頼む。ああ、私のことは、髭隊長とでも呼んでくれればいい」

「リーダーも隊長殿もそんくらいにしといてくれや。進め方について話して貰わなきゃ困るぞ」

「……そうだったな」


 そういうと名残惜しそうにリーダーから離れて、そして去って行った。割とよく分かんない人かも知れない。しかしリーダーは友達からはノッポだなんて呼ばれてるんだね。うーん、ノッポのリーダー。いや、静かなる狼のリーダー。こっちの方がしっくりくるな!


「で、どう動くかの方針は決まってるんでしょうね?」


 みんなで車座になって打ち合わせを始める。口火を切ったのは先輩だ。


「もちろん。まずは魔人の所在を確認して、それから魔人と話し合いだよ」

「はぁ? この期に及んで話し合いもクソもないでしょうが」

「それ、騎士隊長にも言われたなぁ」

「そりゃそう言うと思いますよ。なんで話し合いからなんですか?」

「俺からの提案を通して貰った」


 師匠の真っ黒な目に視線が集中する。大した反応も見せないままに師匠が続ける。


「この塔を建てた理由について少しでも情報が欲しい。森にあった塔を含め、本当の目的はまだ分かっていないからな」

「見張りのため、じゃないの?」


 確かに森の塔では魔人がそんなことを言っていた。いざというときには塔から狙い撃ちできるぞってそういう脅しのためなんじゃないのかな?


「それだけのためにこれだけの塔をか?」

「確かに、見つかるまで魔獣の一匹もこの塔からは出てなかったのはおかしな話になるよな」

「森の塔では魔獣を大量に吐き出しつつ、不可視のゴーレムまで使って塔を隠し守っていた。王都でも存在に全く気付かれていなかったな。脅しにはならないだろう。それに、見張りだとすれば何のための見張りだ?」


 むむむ。普通の見張り塔だったら、敵がやってこないか見張るためにあるよね。んで、守るべき村とかがそばがある。見張りは、見張るべき理由、守るべき何かがないのでは意味がない。


「禁術も尋常ではない複雑さだと言っていたよね」

「禁術そのものが塔の理由ってこと? 魔獣を生み出すためだけではないのはこの塔を見ればわかるわよね。何かを攻撃するための禁術ってわけじゃないと」

「断定するのは危険だがな。いざっちゅう時にドカンとやるためって可能性もある」

「師匠はどう考えているんですか?」

「……この国の端に一つ。中心に一つ。この二つだけだと思うか?」

「嫌なことを言うわね……」

「さすがに二つだけでその先を想像するのは飛躍しすぎじゃないですか?」

「俺もそう思う。だがな、どうにも塔を構成する禁術が似すぎている。俺の記憶でしかないが、繋がりがあるように思えて仕方ない」


 魔術同士を繋ぐには共通の構成が必要になる。例えば私の火の魔術は、師匠の魔術が当たった場所を起点に発動できる。これは魔術を形作る構成の一部が共通になっているからだ。魔術の不思議な法則の一つ、同じ形であれば同じものとして扱う、という仕組みを利用したものである。

 それが禁術であっても同じだと考えるなら。


「塔同士をつなげて大がかりな禁術が発動している。あり得ないとは言えないな」


 その場に沈黙が降りる。何が怖いって、もしそんな禁術が使われているとしたら、私たちはその影響下にあるってこと。まるっきりなんの自覚もなしに。


「禁術を紐解けばその目的が分かるかも知れないし、分からないかも知れない。ただ少なくとも、その持ち主と会話することで糸口がつかめる可能性がある。だから話し合いをする。リーダーにはそうねじ込んで貰った」

「そんなこと言うくせに本人は来ないんだものな。物わかりのいい騎士隊長で助かったよ」

「前々から懸念を話していただろう。旦那を連れて行けば十分だ」

「あんまり納得はして貰えなかったがな。まあそこは実績とこれからの働き次第で決めて貰うことになる。肝心の実績だが、暗闇の通路を何とかできるんだろうな?」


 先ほどその話をしていたんですよと、簡単に説明をする。結構無茶苦茶言っているけれど、師匠との付き合いはリーダーと旦那も長い。あっという間にやれることだけを把握して後は聞き流している。師匠だってろくに反応のない人間に話すのは面白くないという人間味を持ち合わせている。その話足りなさは自然こちらに矛先が来る。ひたすら難しい話を詰め込まれると私の頭はぱぁんとなるので今は止めてほしい。だから今は先にやるべきことがあると言うのだ。


「暗闇を抜けた後はそのまま一気に最上階までなんですよね、リーダー?」

「そうなるね。直前で小休止くらいは取るだろうけど、無駄に騎士が増えても戦いにくいだけだから。騎士隊長も言っていたとおり、精鋭部隊だけが着いてくることになるよ」


 話し足りなさそうな師匠を我々は放っておいて今後の流れについて細かく詰めていく。こういうのが大事ですからね。……まあ後でちょっとくらいなら聞いてあげます。


 打ち合わせ内容については割愛する! なぜならやることは概ね同じだから。前衛はリーダーが、後衛(大体前の方にいる)の私たちは師匠が指示を出す。つまりいつも通り。騎士の皆さんとの連携についてもリーダー案件で、私たちは指示を聞く。そもそも肩がぶつかり合うような狭い場所での戦闘に成るわけでもないし、逃げる場合だって一番前と後ろ以外はそこまで判断を求められないわけで。なお、逃げる場合は私たち冒険者が前、騎士が後ろの予定らしい。騎士の方が頑丈ってのもあるけど、矜持ってやつもあるのかなと思う。騎士君もいつぞや言ってたけど、守るために騎士になったのに守られるっては違うってことなんだろう。


 ともあれまずは顔合わせになる。精鋭ってことだからそんなに数は多くないらしい。ちなみに言えば、騎士の場合はパーティではなくて小隊って言うらしい。その精鋭小隊と一緒に行く。ううむ、ちょっと前なら考えられない状況だなぁ。そんなことをぼんやり考えていると先輩に頬をむにむにと握られる。合同で動くんだからシャッキリしなさいとのこと。先輩からの厳しい言いつけに従い、私は荷物の確認と攻略の準備に移る。ええと、薬と投げる用の礫はすぐ取り出せる場所に移して、食べ物は下の方でいいな。


 荷物を整理し直しながら、どんな人達と一緒に行くことになるか想像を巡らせるのだった。


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