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えっ、私の役目って魔力タンクなんですか??  作者: 朝食付き
2章 王都編

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11.えっ、まずは情報収集なんですか??

 大型の魔獣討伐依頼なんかでは、後からパーティが追加されることは珍しくない。私はまだ未経験だけど、静かなる狼としてはその手の経験も豊富だ。あんまり討伐自体を好む人達ではないから、あとから頼まれて動くことが多いんだそうな。

 ということで、まずはリーダーが先行している冒険者と騎士団に話を通しに行った。同士討ちなんて最悪ですからね、通りますよって先触れを出すのはとても大事。そしてその間に私たちが情報収集を行うワケ。いつもなら荷物番の私だけど、今回はちょっとした当てがある。新しく友達になった(私視点による)騎士くんその人だ。彼ならばきっと色々教えてくれるはず!


 どこにいるかは分からないけど、まあ騎士くんも新人だからね。いろいろ雑多なお手伝いをしているはずなのだ。私の直感に依ればきっと配給とか荷物の管理とかしているはず。なので荷物が積んでありそうな騎士団の天幕に行ってみよう。多分そこが騎士くんの戦場に違いない。

 と思っててくてく歩いてみれば、お目当ての天幕よりも随分手前で騎士くんに発見された私である。


「あれ、術士さん? なんでここに?」

「こんにちは。先ほどギルドから依頼を受けまして、静かなる狼として塔攻略に参加することになりました」


 塔攻略については騎士くん達が先任ということもあり、ぺこりと頭を下げる。釣られたように頭を下げる騎士くんは本当に人がいいなぁ。


「それで、魔獣がぽこぽこ出てきてるって聞いたんですけど、どんな具合なんです?」

「まあ噂は聞こえてくるよね。……塔に挑むって言うなら誤魔化す必要もないし、正直に言うよ。かなりまずい」


 騎士くんの顔は真剣そのもので、確かにいいことなんて何もなさそう。嫌だなぁ。魔獣を倒しながら登っていくってなると相当気力体力が削られそうだ。そんなに体力がある方じゃないから不安になる。いっそ騎士くんに頼んで護衛とかやって貰えたりしないかな。しないよね。そりゃ無理だな、うん。


「だんだんと出現する魔獣の数が増えてる。このまま増え続けたら多分10日も持たない。言いたくはないけど、3日後ですら保証できない状態になってる。もう一つ言いたくないこと言うなら」


 言うなら? なぜか意味深に言葉を切る騎士くんの話術にまんまと引き込まれてしまった。


「塔破壊の経験者に来て貰えて心強い」


 少し影のある微笑みだ。無理のある笑顔というか。そんな表情をされたことがないから、なんだろう、すごく戸惑う。いやいや、誤魔化されないぞ! 破壊したのはしたけどほとんど偶然みたいなものなんだからね! ここは全力で否定すべく言葉を思いついたはしから投げていく。結構な勢いで成り行きでしたからね、あのときは。それにこんな街中で同じことしたら酷いですよ? もうお天道様に顔向けできなくなっちゃう。なんてことを身振り手振りで説明していると、騎士くんの顔が和らいだ。なんとなくそれが嬉しくて、私もにっこりと笑う。なのに騎士くんときたら、いきなり明後日の方向を向くんだから失礼しちゃうな、全く。


「え、ええと、まあつまり塔はなんとかしようって時に、経験者がいてくれるのは心強いんだよ。ここだけの話ね。騎士団としては自力で解決できなくて歯がゆいんだけどさ。あと、もしかしたら俺たちが君たちの護衛につくことになるかも知れない」

「え! 護衛してくれるんですか?! そんな好待遇が許されちゃうんです??」

「お、うん、多分ね。少なくとも精鋭を一気に最上階まで送り込む計画はあるみたいだから、護衛というか共同で行くって形かも知れないけど。そうなったら一緒に戦えるね」


 おお! 初の共同戦線! これは熱いですよ! 思わず拳を握って騎士くんに突き出す。目をぱちくりしている騎士くんにほらほらと拳を揺らす。ゆっくりと差し出された騎士くんの拳に、私のお手々をぶつける。これね、村で男の子がやってたやつなんだけど、一回やってみたかったんだよね。


 それにしても騎士くん達がついてきてくれるなら安心ですな! なにせ騎士団の実力は師匠達のお墨付きだし、友達と肩を並べられるのはちょっとウキウキするところもある。なんてことを機嫌良く話せば、騎士くんがぽつりと呟く。


「……友達か」


 あれ、ちょっと調子に乗りすぎたかな? そんな風に事実を呟かれると不安になるのですけど。まあ人間関係は見方次第っていうところもあると思うし、私から見ればもう友達度数はほぼ上限。歳の近い友達は得がたいっていうしね、逃がさんぞ!


 ともあれ一通り聞きたいことも聞けたことなので、きちんとお礼を言ってからみんなの元に戻ることにする。私の数少ない長所はちゃんとお礼を言えることだからね。未だに騎士くんは拳を突き出したままだったので、その拳をほぐしてハイ握手。二度三度手を振ってから別れるのであった。


 ***


「お、戻ってきたな。なんかいい情報は聞けたんかい?」

「ふふん、聞けましたとも。もちろんね! この間友達になった騎士の人に話を聞いてきたのです」

「騎士の? そりゃいいことだな。冒険者は人とのつながりが大事だもんでな。で、そいつは出世しそうか?」

「期待薄じゃない? この子に目を付けられちゃったわけだし?」


 話に割り込んできた先輩が旦那と二人してわっはっはと笑う。こいつらぁ……! 私はともかく騎士くんは結構いいやつなんだから、私は彼がすごくなると思うけどね!

 ぷりぷりと怒る私に二人がごめんごめんと言うが、しばらくは機嫌を直してあげない!


「全員集合してくれ。打ち合わせを始めるから」


 リーダーが戻って来たみたいで、集合の声が聞こえる。急いでリーダーの元に集まると、さっそく今回の塔攻略への段取りについて説明が始まる。


「今回の依頼は、一気に最上階まで上がって魔獣出現を食い止めること。これが依頼目標ってことになるね。問題はかなり状況が悪そうだってこと」

「騎士の知り合いに聞きましたが、魔獣出現頻度が上がっているので、正直3日持つかも怪しいみたいです」

「やっぱりそのくらいになるかぁ。王都の騎士も人数に限りがあるからね。四六時中魔獣と向き合うには人手が足りないわけだ」

「とはいえ俺たちだけで一気に登るのはなぁ。もちろんその辺りも話してあるんだろう?」

「もちろん。騎士団としてもこの状況を打破する方法を考えていたようだよ。つまり精鋭を一気に最上階へと送り込む突貫作戦だね。我々も冒険者側の精鋭として共同で突入することになった。それで、踏破済みの階層についても騎士団の護衛ありで登ることになった」


 うむうむ。騎士くんに聞いた内容とも一致するね。……というか新入りの騎士くんより、隊長クラスの方が情報持ってるなんて当たり前なのでは? いやいや、情報はね、複数の角度から見る必要があるからさぁ! 同じ内容でも答え合わせできていいんだよねぇ。まあ、一応そういうことでね。話を聞く姿勢に戻る。


「攻略された範囲を聞く限りは前回の塔と大きな差はなさそうなんだけど、さすがに地図作りをしてる余裕はない。向こうで作成した地図を後で受け取るから、旦那と赤毛は目を通しておくように。それと魔術師二人は出来るだけ魔力温存しつつ、塔の禁術がどんなものかをおおざっぱでもいいから見ておいて欲しい。今回は騎士団と同行することになるけれど、いつも通りチームワークを大事にこなしていこう。質問はあるかい?」


 特にないので黙っていると、リーダーが頷く。そして手を出してさあ頑張るぞと掛け声をかける。せーの、おー!!

 ……応えたのは私だけ。チームワークはどうした?!!


 ***


 塔の入り口に着けば、既に準備完了している騎士の皆さんがすぐに近寄ってくる。ええと、この人達が上まで護衛してくれるのかな? リーダーがその人達に簡単に配置の確認をしている。きょろきょろと見回してみたけれど、どうも騎士くんはいないみたい。というか精鋭部隊との共同ってことだし、騎士くんがいるとも限らないのか。

 まあ一緒である必要があるわけでもないし、この依頼が終わったら話を聞きに行けばいいかな。


 って、あれ??


 騎士の人達のたくましい人並みの中に、場違いな人影が見えた気がして目をこらす。うん? ううん?? いた! さっきの私よりよほど必死な感じに辺りを見回しているのは図書院にいるはずの書士さんだ。書士さぁん! と呼びかけながら大きく手を振れば、書士さんが安心したように胸を押さえた。うん、そういうお淑やかな仕草を見習いたいんだよなぁ。とはいえさすがにそれどころじゃない。


「師匠、書士さんがいますよ」

「書士が? ……連れてこい」


 了解! ささっと人混みを抜けて書士さんの元に。さすがに一人で騎士に囲まれた私たちの元に来るのは大変だよね。というか冒険者やら騎士やらは体を動かすお仕事なだけにむさ苦しいのだ。書士さんや私のようなたおやかな女性が気軽に声をかけられる環境にしてもらいたいものだ。


「書士さん! こんなところにどうしたんですか?」

「よかったぁ、この人混みだから見つけられないかもって。ううん、術士くんに伝えたいことがあってきたの」


 師匠に? 古い本の中身について分かったとかかな。わざわざ来るほどだから多分重要なことだと思う。こういうときはさっさと引き渡さなきゃならんね。だって私が聞いても分かるとは思えないし、意見を聞かれても困るもの。

 師匠はもういつでも動ける状態だ。というか完全にここがボトルネック! 護衛してくれる騎士の皆さんを待たせている形だ。ええと、どうする? いつもの調子で議論を始められたら日が暮れるぞ?


「これ、私の方でまとめた資料! 例の文字列について一覧にして載せてるから確認しておいて! 多分、あなたの想像で正しいと思う」

「助かる。結果は戻ってきてからだ。楽しみにしておけ」

「期待してるね。怪我に気をつけて頑張ってきて」


 それじゃといって書士さんはぺこりと一礼し、あっという間にいなくなってしまった。……さすができる女性は違うね。師匠は受け取った紙の束を胸元にしまい込んで、既に塔の入り口を向いている。切り替えの良さは私も見習うべきかも知れない。よし、いざ塔の攻略に挑まん!

 威勢良く、騎士団に前後を囲まれながら先輩の後ろについて突入した。ぞろぞろしすぎてちょっとカッコがつかないかも分からんな!



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