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えっ、私の役目って魔力タンクなんですか??  作者: 朝食付き
2章 王都編

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1.えっ、私たち追放されてきたんですけど??

2章始まりました。楽しんで頂ければ嬉しいです。

 ごとごとと、馬車が揺れる。延々と地面と草と空とを眺める一日が今日も続いている。

 私たち"静かなる狼"は今、王都行きの馬車にひたすら揺られているところだ。


 それは一体なぜか。

 

 その理由はあまりに長くて思い起こすのも嫌になる。そうでもない? そっかぁ……。誰にともなく話すのはやめよう。

 まあちょっと謎の塔と魔人を倒すのにやり過ぎてしまった。そしてそのやらかしによって街を追放された。二言!

 吟遊詩人なら一晩以上は盛り上げ続けてくれそうな私たちの大冒険も、私が説明するとこんなにも簡単に話が終わってしまう。ううむ、説明上手ということにしておこう。


 とはいえ、追放にもいい追放と悪い追放の2種類ある! 私たちがされたのはいい追放! 昔私がされたのは悪い追放……。

 いい追放はね、町のために頑張ってくれたのは分かるけど、それでも被害が馬鹿にならなくてみんな怒ってる。そんな時にほとぼりを冷ますために行われるのだ。

 さあて、今私たちが乗っている馬車はギルドが用意してくれた物だ。着の身着のまま追い出されるのとはわけが違う。つまり、これはいい追放なのだ。

 ……実際のところ、危険なパーティを街から追い出すという本質は一切変わってない! ああ、なんて悲しいことか。


「アンタまだ浸ってんの? いい加減悲劇ごっこは止めなさい」

「そうは言いますけど、私これで2回目の追放なんですよ!? 前のパーティを追放されて、ようやくパーティの一員になれたかと思えばまとめて街から追放! そんなことあります?!」


 私を叱るように諭すのは赤毛の先輩である。すらっとした体は無駄というものを一切合切そぎ落としたかのようだ。それでいてお胸もしっかりある。露出のない上着できっちり収めているのにこれである。休みの日は薄着だからもっとすごいぞ。私にとっては頼りになる、そして目指すべき憧れの女性である。


「あるんだから仕方ないでしょ。第一アンタだけじゃないんだから別に良いでしょうが」

「そうそう、全員まとめて追放だ。心細いなんてことはないだろうに」

「まあ、それはそうですけど……」

「別に帰ってくるなとは言われちゃおらん。何ならギルドも別に追放とまでは思ってないだろうよ」

「いや、それはちょっと微妙じゃない……? 少なくともやらかしたのは事実な訳でしょ」


 ざっくばらんに私たちをなだめるのは旦那である。背こそ低いが恰幅のいい肉体は見た目にも安定感がすごい。当然見た目だけではなく、全身筋肉の塊だ。私からすれば鉄の塊にしか見えないようなぶっとい剣を軽々振り回す前衛の要である。スリルを求めて冒険者をしているくせに意外とインテリなお人だ。


「賞罰合わせてややマイナスってところだね。ま、死者が出たわけではないからね。被害に遭った家もそのうち直る。その位になったら多分依頼っていう形で街から戻ってこいと話が来ると思うよ」


 そう取り成すのは我らが静かなる狼のリーダーだ。高い身長とほっそりとした雰囲気のせいで華奢に見えるが、剣の達人である。やや思考と趣味に癖があるものの、私たちを上手くまとめられるのはその人徳ゆえだ。本当に、普段はいい人なんだけどなぁ。ちゃらちゃらと手首や首元でなるアクセサリー、どれもがおどろおどろしい髑髏とか、竜の巻き付いた宝石だからね。センスという一点においては話がかみ合うことがない。


 そして私たちの会話に一切口を挟むことなく何かを読み耽っているのが私の師匠である。いや、少しくらいはこちらに興味を持ってほしいものだ。特に弟子の嘆きに優しく声をかける心遣いが欲しい。

 ……それは鳥に荷馬車を運べと言うようなもんか。妙に顔が広いくせに、おかしなところでドライなのがこの師匠である。全身、ローブからブーツまで全身真っ黒くろすけという変人でもある。ある意味ではリーダーと同じく独特の感性を持っていると言える。

 そして、私が静かなる狼に入るきっかけの人であり、私の師匠兼、魔力タンクとしての使用者である。


 別のパーティをとある理由から首にされた私を、魔力タンクというやや侮蔑的ですらある役職に誘ってきたのがことの始まりだった。いやぁ、色々あったなぁ。まあその結果がこのざまなので良かったのか悪かったのか。間違いなく私にとっては良かったけど。みんなも良かったと思ってくれていれば良いんだけど……。


 まあ考えても仕方ない。隣でつまらなそうに外を見ている先輩にもたれかかり、先輩の髪をいじる。今日はどんな髪型にしてやろうか。先輩はもはや私のなすがままだ。なにせ、他に出来ることなどないのだ。村から出てきた当初は馬車移動に憧れたものだけど、慣れると暇が勝る。一応魔術の練習はしているけど、ずっとやるのは本気でしんどいので休み休みにやっている。疲れたら先輩をかわいくして気力を養わないといけないね。そうだね。

 

 夕暮れの前に馬車は辻に止まり、今日の宿泊準備を始める。

 青白い顔のリーダーに、大雑把そうな旦那、真っ黒くろすけな師匠と、見た目に似合わず社交的な男連中は御者と仲よさそうに火や寝床の準備を始めている。そして割と人見知りな私(本当だよ?)と先輩はちょっと離れたところで周囲の警戒をする。残念ながら私は料理なんてできないし、わっはっはと笑う男子連中に混じるのはちょっと抵抗がある。なので基本先輩にくっついて見張りと魔術の実践に励むのだ。時々威嚇として火の玉を飛ばしたり、先輩相手に癒しの術をかけてみたりね。


 ***

 

 私は生まれつき魔力がたいそう多いタチだったらしく、偶然村に立ち寄った魔術師によって魔術師として見いだされた。まあ旅の魔術師がちょっと教えた程度で大した魔術が使えるようになるわけもない。が、それでも3度に一度は火の玉を飛ばせるようになったからいけない。魔術師としてやっていけると勘違いした私は、冒険者で賑わう街へとやってきて冒険者として活動を開始したのである。そしてその役立たずぶりに匙を投げられ、見事に首になった。そしてその後師匠に拾われ今に至る。

 

 師匠に拾われてからは魔術師として、術式をたたき直されている。おかげで火力だけはいっぱしだなという評価を得た! 今のところはそれ以外に取り柄はないけど、火力と魔力タンクという役目を持ったのである。かつてはお荷物そのものだったから、役目をもらったことに私は大変満足しており、師匠と二枚看板の魔術師になるために日々精進しているのだ。……先は遠いけどね!


「それ、いい加減飽きないわけ?」


 私が延々繰り返す魔術の構築練習を見ながら、先輩が問いかけてくる。


「正直言えば飽き飽きしてますけど、なんかもはやこれをやらないと落ち着かないくらいにはなじんでしまったというか……」

「まあ黒いのに散々尻を叩かれてるもんねぇ」


 美人が尻とか言うとちょっとびっくりする。が、変に興奮していると思われるのも良くない。微妙に動揺が魔術の構成に現れている。妙にゆがんだ構成を打ち消して、次の構成を組んでいく。


「先輩こそ毎朝槍を振ってるじゃないですか。あれは飽きないんですか?」

「んー、確かにそうねぇ。私もやらないと落ち着かないというか、日課ね」


 じゃあ一緒ですよと言えば、先輩もそうねと笑う。暗くなりつつある辻で、ここだけは柔らかな雰囲気が漂っている。背後ではがははと品のない笑い声が聞こえてくるのを無視すればだけど。全く、あの人達はもう少し品のある笑い声というものを上げられないのだろうか。


***


 ウハハと喜びの笑いが止まらない。


 今日の晩御飯は山鳥の丸焼きだ! こいつ美味いんだよなぁ! 思わず踊り出しそうである。リーダーが手慰みに作った弓矢で射落としたのだ。そんな不格好な弓で当たるわけないとか言ってすみませんでした! バカにした全員でへりくだり、リーダーをよいしょする。得意げなリーダーが良しと言ったので、待ちかねたぞと肉にかぶりつく!

 

 良く焼けた肉は、柔らかくてすぐに骨から肉がはがれてくれる。あふれ出る肉汁は大層脂が乗っていて、香ばしい香りと共に私の舌を楽しませる。いつまでも味わっていたいのに、気が付けば呑み込んでしまっている。一心不乱にかぶりつくのは私だけではない。ちらりと横目に見る先輩は、野人のように骨までしゃぶっている。こりゃ女山賊って感じ。エールをグビグビと煽る姿にはもはや風格が溢れていると言えよう。いやはや、普段の麗しさは影も形もない! 私も当然カリカリと骨に付いた肉までこそぎ獲る様に食べている。


 こと食事中に関してはリーダーと旦那は静かである。どうやっているのかは分からないが、ほとんど手を汚すことなくきれいに山鳥のお肉をばらして口に運んでいる。師匠ですら静かに食べるものだから、食事時だけは男女のうるささが逆転してしまう。いや、普段は私たちだって静かに食べますけどね? でも鳥の丸焼きなんてがぶりと食べてなんぼですからね!


 ***


 そんなこんなで愉快に馬車生活を楽しむのもつかの間、あっという間に王都である。


 馬車の中でごろごろと枝毛を探していると、外から王都が見えたとの声がかかる。それはそれはと私と先輩が御者台に顔を出すと、確かに遠目に随分立派な建物が見えている。

 遠目にも大きな壁と城がそびえている。いやぁ立派ですな! 王都と言えばこの国の流行の発信地でもある。曰く、おしゃれの全ては王都にあると。今でも街でウェイトレスをしているだろう私の友達がそう言っていたのだ。多分間違いない。


「王都も久しぶりだね。懐かしい……」

「そうか? まあ久しぶりであるが」


 やけにとげとげした指輪を撫でるリーダー。一分の隙もなく真っ黒な服を身に纏う師匠。二人は元々王都にいたという……。

 本当におしゃれはあるのかと、一抹の不安を胸に馬車は進む。まあだめならそれもいい土産話になるだろう。早く王都に着かないかなと胸が高鳴るね!


読んでいただきありがとうございました。

よければ評価、コメントいただければと思います。

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