6-1.えっ、顔がうるさいってどういうことですか??
5階の半ばあたりで長めの休憩をとっている。もう少しで頂上だからね。最上階って言うべき?まあいいか。頂上には禁術を使って塔なんて作っちゃう魔術師が待ち構えているはず! いないとは言えない。いや、待ち構えていないはずがない。よって今のうちに休んでいるわけである!
さすがにここまで何にもちょっかいかけてこなかったのに、いきなり奇襲されるなんてなかろうってもんよ。だからここが絶好の休憩場所ってわけ。一応ね、ちゃんと警戒はしているから安心だ。
とにかく疲れている私たちである。ずっと登りっぱなし歩きっぱなしだったわけだから。そして回復にはご飯が大事。持ち込んだ食料を食べる。
小麦粉を水で固めた保存食と、からっからの干し肉、あとは水。ああ、なんて侘しい食卓だろう。昨日森で野営した時でさえあったかい汁物が食べられたというのに、ここ一応屋内何ですけど! 外より落ち着けない建物って何さ! 塔だ!!
なんて思いながらもそもそと味気ない食事を摂る。これは正直文明的だとは言えませんね。
「いいから黙って食べろ」
「? 何も言ってませんけど?」
「顔がうるさい」
顔がうるさい!?
さすがに初めての評価に戸惑いを隠せない。顔が……? ムニムニと顔を揉んでみたりする。これで多少は静かになったかな? 分かんないね。あまりまともに取り合う必要がない気もする。ちらりととんでもない暴言を吐いた真っ黒野郎を見ると、すでに食べ終えてゆったり体を伸ばしている。かわいいかわいい弟子に酷いことを言いながら、その態度はなんだ! 許せんよなぁ! でもどうにもできない……。なぜなら私は弟子だから! ええい、月のない夜は覚えておけよ!
密かに下克上を狙いつつ、体が冷えすぎないように体を動かす。食べたとはいってもすぐ動くことが分かってるから量は多くない。だから柔軟体操位が丁度いい。なんとなくお腹がこなれていく感じがする。
柔軟も終わらせてから見張りを交代する。私は今まで歩いてきた方の通路を警戒する。もちろん同じく食べ終わった旦那が護衛についている。あれ、もう護衛に入ってもいいの? 地図はできたのか?
「ここまでの地図ならできとる。だからその目はやめい。全く、どんどん師匠に似てふてぶてしくなるな、お前さんは」
「さすがにそれは失礼だと思います! ……ええと、どちらにとってかなんて聞かないでくださいね?」
「ああ、分かった分かった」
うっとおし気に手を振られる。うーん、大丈夫かな。あとでもう一度口止めしておいた方がいいかも。真意が伝わったらコトですから。
そんな風に雑談をしてはいるけど、片手には火の魔術が組み立ててある。さすがにね、旦那がいるとはいえ私が無防備でいていいわけじゃない。自衛に杖だけじゃ心もとないから、予め魔術の構成まで終わらせたものを用意しておく。
そう、私は気が付いたのだ。警戒中とか探索中も、なんなら休憩中だって構成は組んだまま維持しておけばいいってことにね! 私は組むのに一番時間がかかるんだから、それを一発だけでも短縮できると考えるなら、構成に魔力を使い続けるのは安い代金なんだなこれ。
いわば時は金なり! 命がかかってるなら尚更ね。まあ大体の場合準備は空振りになるんだろうけど。
みんなが小腹を満たして、地図もあとちょっとで完成。師匠の調査だって大筋は完成しているとのこと。今回の調査だけで全部わかるわけないし、実際には国の調査隊が後から来ることになるんだってね。だからここまでの内容でも十分以上の成果だってころらしい。
まあ魔獣の呼び出しとか、まだ分かってないやばそうな禁術もあるみたいだし、しっかり調べて貰った方がええ! それにしても所々に色々とマーカー付けてたのは何なのかな? そう言えば塔のことも何とかできるかもなんて言ってたし、きっとまた良からぬことを考えているんだろうなぁ。
***
さあ、いよいよ最後の階段が見えてきました。階段下からでも6階がちょっと見える。
塔の中はどこも松明や高価なランタン(カバンに仕舞ったまま壊さないように布でくるでる)がいらないくらい明るかったんだけど、階段を上った先はその比じゃない。真昼みたいに明るいとはこのこと。もう時間的には夕方だよね?
ともあれそこをてくてく上っていくわけ。これで上り納めかと思うと感慨深い。いや、そんなわけないですね。もうくたくたで、階段を見るのも嫌だ。
上がってみれば、一面見渡せる大広間。広々としていて……、いや広々としすぎじゃない?
みんなで最上階はどんなかって、冗談交じりに予想していたけど、びっくりするくらい何もない。んー、そうだな、一応だけど外が見える景色の良い窓がある。吹き抜けじゃないけど。ドラゴンもいないけど、ドラゴンを模した石像はある。あと、中央には広い机があって、そこには老人もいる。老人が。いるのかぁ……。そりゃいるよね。しかも魔術師だよね、絶対。結局魔術師が偉そうに構えているってのだけ正解と。
しかしその老人、ただ座っているだけだというのにその存在感は異様なほどだ。
周囲には他に何もない。老人と机と石像、それだけ。柱の一本すらなく、ただだだっ広い空間にはそれだけ。
だというのに、あの老人のそばだけどこか仄暗いなにかを感じる。見ていてはいけない、なにか悍ましいものだ。老人相手にそんなこと言うのはどうかと思うけど、こんな人間味のない塔に暮らしているって時点でお近づきになりたくない類の人だろうから許して。
とりあえず老人からは視線を外す。目を離すと急に目の前に現れそうな不気味さがあるから、ちょっと勇気がいる。でも老人はちらりともこちらを見ていない。まだこちらに気づいていない? そんなことはあるはずないけど、でも老人は全くこちらを気にしていないのだから仕方ない。いや、別に仕方なくもないか。むしろ都合がいい。
とりあえず階段から一歩進んだところで足を止め、旦那は地図を描いている。さすがにここまで何もないと丸描いて終わりって感じだね。師匠は調査、なんだけど、ここからじゃ分かるものも分かんないだろうな。最終的にはあの人に話を聞くことになるんだろう。まともに会話が通じればいいけど。
まだあちらからの行動はないのだから、今のうちに私もこの広間をよくよく観察してみる。
広間の壁には大きく切り抜かれた窓があるんだけど、そこからは日が暮れかけた森の様子が見える。こんな状況じゃなかったら窓から橙に染まる森を眺めていたいなぁって。目のいい私にはその先に街が見えるのだって確認できる。そろそろ街でも明かりを付ける頃だし、もう少し暗くなったらなかなか見ものかもしれない。
みんなで一塊になったまま、少しずつ前に進む。広すぎて足音が反響することもない。警戒を解くことなくフロアを進んでいく。まずは真ん中へ。実はだだっ広いフロアのその中心には何か、机が置いてあるのだ。そして人影もある。警戒するのには十分な理由である。
リーダーが一番前。左右に旦那と師匠。私と先輩はその後ろにつく。無論私が師匠側だ。
「お客さんとは珍しい。私の塔へ何かようかね?」
しわがれたような、それでいてハリのある声が響く。その人影からだろう。椅子が回り、こちらを向く。座っているのは、一人の老人。いや、人にしては生気がなさすぎる。本当に人?
訝しむ私を置いておいてリーダーが会話に応じる。
「我々は静かなる狼。冒険者だ。この塔の調査を依頼されている。単刀直入に言おう。あなたがこの塔の持ち主だというなら、我々と街まで来てもらいたい」
あれ、そんな感じになるの?疑問を浮かべた私に先輩がこっそり囁く。
「私たちの依頼は調査。でも持ち主がいるなら直接話してもらった方が早いでしょ。調査結果はもちろんギルドに渡すとしてもね。それに、明らかに厄介ごとよ?」
確かに。勝手に塔を建てたのはかなりまずいものね。私たちには別に追い出す権限があるわけでもないし、難しい話はギルドに投げちゃうのがいいよね。よし、そこからは勝手にやってもらおう!
納得するけどそれは私が街の冒険者だからである。いきなりやってきた他所の人間に言われたらどう思うか。まあ普通は嫌だよね。
「お断りさせてもらおう。……ここまで無事に上ってきたところを見ると、君たちはただの力自慢というわけでもなさそうだ。ならば、そこから君たちの街が見えていること、その意味がわかるだろう?」
ん? どゆこと? わからない。けどとりあえず神妙な顔をしておく。先輩も同じような表情。多分先輩も空気を読んでいるんだろうな。
「……そうですか。なら、相応の手段が取られることをお覚悟いただきたい」
「そうなるだろうな。が、おとなしく帰れると思うかね?」
「警告はしておきますが、私たちを邪魔することはお勧めしない。あなたの無事を保証できないのでね」
リーダーが頼もしくも痺れる啖呵を切る。
老人がカカカとけたたましく笑う。正直ビビった。だってこの広いホール全体に響くくらいの声で笑うんだもの。老人の出せる声量じゃない。自然と冷や汗が出る。9割戦闘になる。だって、随分禍々しい雰囲気を出している。
まあ決裂だよね。分かり合えないって、悲しいね。
ガタリと椅子を倒して老人が立ち上がる。
「いやはや、その意気や良し。ああ、久方振りに身体を動かすとしよう」
言うや否や、べきべきと体が変形していく。うわぁ、人の体ってあんなんになっていいものなの? あまり見たくなるようなものではないけど、目を離す方が怖い。木の枝を折って無理矢理引き伸ばすように、老人が姿を変える。まるで操り人形みたいな姿。糸で釣られていないだけの人形。目だけが爛々と輝いている。これって、すでに人ではないのでは?
「魔人か」
師匠に聞かされた要注意魔物! 確か人が魔獣を取り込むことで生まれる上位の魔物だ。当然禁術! まあ一つ禁術使ったら二つも三つも変わんないよねってこと? ふざけんな、張り倒すぞ! 出来るわけはないけど、とりあえず虚勢を張ることだけは忘れない。うーん、冒険者の鑑だな。
ん? しかし妙に目が合うな。別に合わせたくなんてないんだけど。……いや、完全に視線を私に向けている。意識がバッチリ私に来てる。なんでぇ?!
師匠が私の元まで下がってきている。明らかにあの視線を警戒している。
「ゴーレムを吹き飛ばしたのはお前だからな。それが分かってれば誰でもお前を警戒するだろ」
あー、それかぁ……。違いますって言っても聞いてくれないだろうし、そもそも私だしなぁ。不意打ちできる条件でたっぷり時間をもらえたからできたことであって、こんなに警戒されてたら出来るものもできないね。ただ、この老人はうちで一番無視すべきぺーぺーに注目してしまったわけだ。やっちゃったね、ご老人。こういう時の静かなる狼は怖いぞ。
「とりあえず一発かましてみろ。中くらいの奴でいい。それで奴の不死身さってやつを確認する。撃ったら即時反転、外を目指すぞ」
指示が入ったから従うけど、どのくらい効果があるんだろうね。まあそれを目安に対応考えるってことなんだろうけど。私としては完全に目を付けられているから何しても一緒だよねって感じ。せいぜいイラつかせてやるともさ! 師匠たちですらここから逃げることだけを考えている。少なくともここじゃ戦っても無駄なことが分かりきっているということだ。
魔人。それはあり得ざる人と魔物の合成体。人の悪意と魔物の性質を持つ。今まで確認されてきた魔人のほとんどが不死に近い性質を持つ。
基本的に人の心臓と魔物の魔石を同時に壊さないと倒せない。魔物、特に魔獣なら額にむき出しだからわかりやすい。でも魔獣以外、それこそ目の前の魔人もだけど、魔石を体のどこかに隠している魔物は倒しにくい。魔人なら同時にって条件が入るから、よっぽどの火力で焼き尽くすとかしない限りは不死身に近いのだ。
……ああ、そういうことか。私の火力をかなり厄介に思っているのだ、きっと。ゴーレムを吹き飛ばしたみたいにまとめてぶっ飛ばせば同時にとかそういう障害なんてないようなもんだね。しかし私が分かることをみんなが気づいていないわけもない。完全に警戒されている以上、それ以外の手が必要。こんな何が仕込まれてもおかしくないような場所より、馴染みある外の方がいい。うむ、納得した!
私の納得を尻目に、魔人が指を鳴らす。なに、まだ何かあるの?
魔人の背後にいたドラゴンっぽい石像が動き出す。ああ、やっぱりそれも動くのね。こんなに目立つところに置いておいてただの置物ってのはないよね。そんな風に予想していたから、準備も完了だ。元々構成の準備はしていたから、魔力を注ぐだけ。森で戦ったときほど注ぎ込めてはいないけど、相当気合を入れた火の術式をぶっ放す。
指差した先には魔人。煌々と輝く火球が指先からぶっ飛んでいく。私の頭より大きい火球はそこらの魔獣なら一撃位の威力はある。全くの無傷ってことはないでしょ。
魔人に向かう火球が突如として石の翼に遮られる。炸裂自体はしたけど、石の翼に亀裂が入った程度。
ええ……。ゴーレムの体とかならともかく、見た感じ一番薄くて強度のなさそうな翼で亀裂どまり……。そりゃないぜ。
すでに全力で階段に向かって全力疾走中なんだけど、これはへこむし、結構な危機感。
ゴキゴキと嫌な音が響き、ドラゴンゴーレム(と呼ぶことにした)が老人のそばに向かっている。あとはもう階段を駆け下りてったので分かんない!
***
全員で先ほどまで上ってきた道を走り抜ける。作戦名は全力で逃げろ!
まだ、老人とドラゴンゴーレムは追いついてきていない。老人はともかくドラゴンゴーレムは階段を降りれるサイズ感ではなかったし、きっとどうしようかって悩んでいるのだ。そうだったらいいな!
無論そんなことはない。背後から大きな足音が聞こえてくる。あの階段をどうやって越えてきたのだろうね? ちらりと振り返ってみると、ドラゴンゴーレムがバタバタと走ってきている。翼は畳んだまま。この塔の通路は大きいけど、さすがにドラゴンが羽根を伸ばせるようには出来てない。当たり前である。しかし老人はどこに行った? 言葉に出す前に隣を走る先輩のつぶやきが聞こえる。
「趣味悪いわ……」
趣味が悪い……? それは一体どういう意味でだろう。こんなこと言いたくはないけど、ドラゴンゴーレムは結構かっこいい姿だと思うんだけど。もう一度後ろを振り向く。何がそんなに趣味を疑われるのか。…いた! ドラゴンの頭、額の部分から老人が生えている! 何それ!? 老人の枯れ木みたいな上半身だけがドラゴンの額から突き出ている。下半身は突き刺さって要るっぽい。操り人形みたいな変身したくせにお前が操る側なのかい! もう趣味悪いって段階越えてるよ!
何度も通路を曲がり、直進し、ひたすら逃げる。ドラゴンゴーレム+老人が追いかけて来ている。馬鹿でかいが故に通路に引っ掛かるかなって思ったんだけど、全然そんな気配がない。というか来た時より通路が広がっている。そりゃ塔の主が老人なら多少の拡大はお手のものなんでしょうね! もう、ズルっこもいい加減にしろ!
ぱっと見、どん重そうな割に全然速度が落ちない。言っとくけど、私はすでに速度が落ちている。一番体力がないのは認めるけど、流石に旦那やリーダーであっても1階まで捕まらずに逃げ切る体力はないだろう。どこかでやつを引き離す必要がある。けどゴーレムに入った魔人相手にちまちまと斬りつけるのは効率が悪い。だから私と師匠の魔術が肝になる。
すでに私の火球はドラゴンゴーレムによって防がれている。老人に直接ぶつけられるなら分からないけど、火球を飛ばしても大した速度のない私の魔術では同じように防がれるのが関の山。
なら奴のすぐそばに火の玉を作り出してやればいい。そっちの方が威力も出るし、同じ場所に連続で火球を出せば頑丈なゴーレムだって壊せると思う。
でも何にもないところに魔術を使うのは相当高度な技術がいる。師匠だってかなり難しいって言ってた。だから目印になるマーカーの魔術を使うんだって。残念ながら私はまだマーカーの効果を持つような魔術は使えない。だから外注することにする。
「師匠! マーカーお願いします!あんなのぶっ飛ばしちゃいますから!」
「わかった。打ち込んだ後はお前に任せる。他の連中とうまく連携しろ。足止め、あるいはぶち壊せ。俺は他にやることがある」
そう言ってサクッとマーカー機能付き電撃を放つ。ドラゴンゴーレムの右足と額、魔人近くにマーカーがついた。これでアイツを炙ってやるわ! ん?……師匠は他に何するんだって? 私に戦闘任せるっていいの?? 疑問が湧くけど、私は任せられたのだ。なら役目をこなすことだけに集中するしかない。
「時間を稼ぐぞ! 前衛で牽制! 撃つ時には合図! いいね!?」
「了解です!」
「ま、俺らがやることは変わらないわな。お前さんらに期待しとるぞ!」
「あんたは私の後ろから離れないように! そっちは自分でなんとかしなさいよ!」
「分かってる。お前こそそのひよっこを頼むぞ」
言うや否や師匠はさっさと通路の端っこに移動する。まあ一番狙われてるのは私みたいだし、普段からバリバリ前衛をこなしている師匠なので心配はいるまい。いや、むしろ一番心配なのは私だからね! もう、弱いもの狙いやめろ!
すでに2段目まで組んでいる火の魔術に魔力を注ぐ。合間合間に二発目だって組み始める。こんなヤバい状況でもなんとか組めるのは練習の賜物。やっておいてよかった塔修行! 修行の結果確認がこんなヤバい相手なのはどうかと思うけどね!
逃げる足を止め、ドラゴンゴーレムに向き合う。ドラゴンとはいえ四つ足だから、主に噛みつき攻撃が私たちを襲う。老人は魔術を組み始めている。
リーダーと旦那がドラゴンゴーレムの相手をしている。残った老人の相手は先輩と私。礫を投げつけつつ魔術を妨害する先輩。流石の魔人でもゴーレムの操作と魔術の同時操作は簡単ではないらしい。ドラゴンゴーレムを大きく動かすごとに魔術の構成が止まる。はっきり言ってかなり複雑でやばそうな魔術である。少しでも発動を遅らせないととんでもない被害になる。前衛が頑張ってドラゴンゴーレムの操縦に集中させているけど、何せ相手は石の塊。限界はある。だから私がぶっ放す必要があるってわけ。
初撃は指先から飛ばす。火球の直撃を嫌って、ドラゴンゴーレムが首を上げ老人を射線から退かす。さっきみたいに翼で守ればいいのに、なんでそんな風に避けちゃうんだろう。一発目は外れたけれど、首が大きく動いているせいで魔人は私から視線を外している。すっごい隙だらけ! 早速追撃だ。さりげなく指を振ってみんなに離れるように合図する。実は本命は二発目って決めてたのさ!
二撃目はマーカーの一つ目、右足を指定。最上階で込めた魔力の倍以上を一気に流し込む。足さえなければ逃げるのもだいぶ楽になるはずだ。
「弾けろ!」
ドラゴンゴーレムの右足に現れた私の火球が炸裂する。文字通り、右足が吹き飛ぶ。4つ足とはいえ、一本欠けた状態で走れるかっているとそんなことはないはず。これでは簡単に速度は出せまい。
とはいえゴーレムには変わりないから、魔術なり禁術なりで復元されてしまうだろう。でも、この稼いだ時間は大きい。全員で一目散に通路を駆け抜けていく。でもまだ5階。ああ、地上が恋しいなぁ。
まだまだ地獄の逃避行は始まったばかりだ。




