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エピローグ② side ルミナス



「其方……一年会わないうちに随分と顔が緩んだな」


「すみません。今幸せなんで」


「ほう、探し人が見つかったか?」


「ええ、おかげ様で。この国の市井で再会できました」


「なんと、我が国の民だったのか?」


俺の報告に、女王陛下が目を見開く。





俺は今、役所ではなく王城にいる。

女王に謁見するために登城した。


陛下には一年前、リアの捜索の許可を得るために軽く話をしていたが、この地でリアと暮らしていくなら、彼女の素性も含めてある程度は話しておいた方が良いだろう。




「ほう……其方を捨てて我が国に来たのか。面白いのう。其方が追いかけるほどなのだから、さぞかし美しく優秀な者なのだろうな」


「ええ、もちろん美しく優秀ですよ。今は商会の輸出入に関わる部署で通訳と翻訳をしながらバリバリ働いております」


商会の名を言うと知っていたようで、納得したかのように頷いている。


「なるほどな。この数年でその商会の貿易事業が右肩上がりで急成長しているのは、其方の想い人の功績か。素晴らしい。元公爵令嬢なら私の側近を務められるのではないか?」


「やめてくださいよ。彼女は公私共に私のパートナーにする予定なので、横恋慕はご勘弁願います」



思わず顔を顰めると、陛下がくつくつと笑った。


「我が王城の侍女やメイドたちに秋波を送られても仏頂面をしていた男が、必死に囲う才女か。ますます興味が湧いたわ。今度ここに連れて参れ」


「私から盗らないで下さいね」


「まあ、ガロン王国の王にも頼まれているからな。こちらとしても元王族と筆頭公爵家の令嬢が手に入るのは僥倖だ。存分に我が国に貢献してくれ」


「我が身をかけて陛下の治世に力を尽くすことを誓います」


臣下の礼を取り、頭を下げる。


「ルミナスよ。お前に侯爵の地位を与える。我に忠誠を誓い、国の繁栄のために励めよ」


「謹んでお受け致します」













✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼





「リア、今日女王陛下から侯爵位を賜った」


「──は?」


王城から帰った日の夜、リアに女王陛下とのやり取りを報告した。当然ながら目を見開いて驚いている。


本当に今のリアは表情豊かで可愛い。



「わ、私が陛下に謁見を?」  


「ああ。商会の貿易事業の収益を右肩上がりにした優秀な元公爵令嬢に会いたいそうだよ」


「……陛下は、私の素性をご存知なのですか」


「俺が話した。リアとこの国で生きていくために」


「え?」



準備は全て整った。


今日俺は陛下から爵位を賜り、商会立ち上げの許可ももらった。既に一等地の購入も終えている。そして彼女を妻にするために、養子入りの家も既に手配した。


あとは彼女が受け入れてくれるかどうかだけ──




「リア」


リアの前で膝をつきながら、指輪を差し出す。


彼女は指輪と俺の顔を交互に見て悟ったのか、再び驚愕の表情を浮かべた。


二人の髪色を表したルビーとアイオライトの宝石を、細かいダイヤモンドと金細工で飾った──俺がデザインから関わっている世界で一つだけの婚約指輪だ。


貿易事業で各国を周り、その国の伝統品を数多く見てきた目利きが役に立ち、この国でも一流の職人を見つけることが出来た。


リアのために、想いを込めて作った。



また拒否されたらと思うと、手が震える。


「リア、愛している。今度こそ俺と結婚してくれないか? 俺にはリアしかいないんだ。リアのためなら命だって惜しくない。生涯の愛を君に捧げると誓うから、どうか俺の妻になってくれ」



もう二度と彼女を失いたくない。

誰にも取られたくない。


どうか……どうか受け入れてほしい。



希うように彼女を見上げると、ショックを受けたような顔をしていた。彼女の不安が伝わる。



「──ルミナス様は……貴族になるのですか」


「ああ。でもそれはリアもだぞ」


「私も?」


「また身分差を理由にして断られたら堪らないからな。今君が勤めている商会の会長夫妻が、君を養子にしてくれるという言質を取ってきた」


「商会長夫妻が!?」


彼女の雇い主である商会長は伯爵だ。


この国の特産ワインの生産から販売、それらを使用した飲食店の経営まで手がける実業家でもある。


彼らは外国語が堪能で交渉に長けているリアを重宝している。リアを寿退社させる相談をしたら大いにごねられた。


交渉に交渉を重ね、リアを養子にすることと、俺の商会と姉妹店契約を結ぶことで、リアの寿退社の合意を得た。


「そんなわけだから、君は安心して伯爵令嬢として俺の元に嫁いでくれたらいいよ。そして私生活でも仕事でも、俺の最愛で最強のパートナーとしてずっと俺の隣に──」




気づいたらリアに抱きつかれていた。

華奢な体が震えて、耳元で嗚咽の声が聞こえる。


「嬉しいっ……ルミナス様」




これは……夢じゃないよな?


受け入れてくれたってことでいいのか?



「リア? 俺と結婚してくれるのか?」


「はいっ」


「嘘じゃないよな? 本当に、俺の妻になってくれるんだよな? 婚約じゃないぞ? すぐに妻になってもらうぞ?」


「はい。貴方の妻になります」


「ああっ……リア!」



あまりに嬉しくてリアを掻き抱き、その唇を奪った。堪らず深いキスをして体を弄ると、リアが慌てたようにストップをかける。


「もうっ、ルミナス様! 今はそういうことする時じゃないでしょう!」


「えぇ……そういう雰囲気だっただろ……」


「指輪欲しいのに……」



その言葉にハッとし、両手を見ると指輪ケースを持っていなかった。喜びで無意識に床に放り投げていたらしい。転がっている指輪ケースを慌てて拾い上げる。



「すまない。リアがプロポーズを受けてくれたのが嬉しくて、我を忘れてしまった。改めて、この指輪を受け取ってくれるか?」


リアが微笑んで左手を差し出す。

その白く美しい薬指に、婚約指輪をはめた。


まるで最初からそこにあったかのように、リアの手の美しさを引き出している。


「キレイ……」


「リアが一番綺麗だ」


額にキスを落とすとリアの頬が赤く染まる。


(可愛い。いつ再開していいんだ? まだ体の熱が治らないんだが。早く寝室に連れて行きたい)


「ルミナス様も素敵です。だから、浮気したら許しませんよ?」


「絶対しない。なんなら俺の服のすべてにリアの名前をデカデカと刺繍でもしとくか? 俺はリアのものですって宣伝して歩こう」


「やめてください! 貴方の商会のブランドイメージが地に落ちます! 私も役員として働くからには、この国一番の商会にしてみせますよ」


「ああ、頼りにしているよ。俺の可愛い奥さん」


コツンと額を合わせ、満面の笑みで期待の言葉をかけると、リアはボッと火がついたように顔を真っ赤にし、俺の胸に顔を埋めて悶えている。



俺は、リアが俺の笑顔に弱いのを知っている。

確信犯かと言われれば、そうだと言うしかない。



「そんな涙目で悶える姿を見せられたら、理性の糸が切れても仕方ない」


そんな言い訳を手に入れて、俺はリアを抱き上げて寝室に向かった。




ちなみに、オープン予定の商会名は『オリヴィア商会』。


変更してほしいとリアに何度も頼まれたけど却下した。全てはリアに捧げるために作った俺とリアの居場所だから。



のちにオリヴィア商会は王都でトップクラスの商会へと上りつめ、社交界では理想の夫婦として知れ渡った。


リアに邪な目を向ける男の多さに、ブチ切れた俺が威嚇しまくってリアに怒られ、女王陛下に爆笑されたのはまた別の話。



そして俺は外交の顧問としても尽力し、リアもその優秀さを買われて何度も女王陛下の側近に誘われていたが、全部阻止した。


リアの家族も、観光がてらこの国を訪れ、家族の再会を果たした。ザラス公爵は相変わらず俺を睨んでいたが、一応伴侶として認めてくれたらしい。



そして今、リアのお腹には小さな命が宿っている。



今世でのこの幸せを、俺は生涯守り続けるだろう。



きっともう二度と、時は戻せない。


だから大事なものを見失わないように。

彼女を二度と失わないように。



二度と「さよなら」なんか言わせないように。


愛を伝え続ける。




「愛してるよ、リア」


「私も愛してるわ、ルミナス」





だからもう、俺を置いていかないでくれ。





今世ではこの命が尽きる瞬間まで、



オリヴィア、


君と一緒にいたい──










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『私の愛する人は、私ではない人を愛しています』

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