それぞれの謀略と罰②
そして次はメアリーだ。
やはりメアリーは闇ギルドと繋がっていた。
そして前世と同じように側近たちと関係を持っていた。もちろん映像で証拠は手に入れてある。
まずは彼らに映像を見せて取り調べた。
もはや黒歴史と化しているが、仮にも主である私が目をかけていた女だ。それを抱いた感想を聞くと、全員が顔面蒼白になって体を震わせた。
そして影が調べた彼らの弱み──媚薬使用による陵辱。
彼らは王太子の側近というステータスに寄ってきた下位貴族の令嬢たちを、媚薬を用いて閨事に引き込んでいた。
メアリーと体の関係を結ぶうちに、それが彼女と闇ギルドの恋人にバレて強請られていたそうだ。
追い詰められた彼らはメアリーの言う通り、オリヴィア排除に協力することになった──前世とほぼ同じである。
側近たちの自供から、虐めの自作自演の証拠やメアリーの悪事まで聞き出し、それでメアリーを問いつめた。彼女は側近たち以外の貴族令息にも、闇ギルドの恋人と共に、美人局を繰り返していたのだ。
最初は一切罪を認めないメアリーだったが、騎士団に闇ギルドが摘発され、恋人は既に処刑が決定していることを告げると、人が変わったように発狂した。
どうやら彼女の本命は最初からその男らしい。
最後に王太子である私とオリヴィアに手を出したのが運の尽きだ。前世でも今世でも、結局彼女たちは同じ罪で裁かれた。
側近たちは全員廃嫡され、辺境の前線に一兵卒として送られた。
実戦経験のない彼らが前線で役立つのか疑問に思ったが、父曰く彼らは見目が良いため、剣術以外で騎士たちの役に立つから問題ないそうだ。
なぜ容姿の良し悪しが関係あるのか、その理由は恐ろしくて聞けなかった。
すべての元凶であるメアリーは女の監獄と呼ばれる北の修道院へと送られた。そこに送られた女性は死ぬまでそこから出られないと言われている。
闇ギルドは壊滅した。
あんな女に何故惹かれたのか、今では自分でも謎だ。あんな女のために自分は人生を踏み外し、オリヴィアは死んだのかと思うと、自己嫌悪で死にたくなる。
そしてもう一人見逃せない人物。
一連の事件の裏で手を引いていた女——側妃の存在だ。
彼女は異母弟を王太子にするために、私の存在が邪魔だった。
文武共に評価されていた私を直接害せば、真っ先に自分に疑いが向けられる。だから彼女は私を直接狙うのではなく、ザラス公爵家の後ろ盾を奪うことにした。
自分の手は汚さず、元サミュエル侯爵夫人を使って——
夫人が王宮内で大胆にオリヴィアを虐待したのは、側妃の後ろ盾があったからなのだろう。特注の鞭も、魔法大国の高価な傷薬も、側妃が口利きして用意したものだった。
元サミュエル侯爵夫人は、オリヴィアより自分の娘の方が妃に相応しいという側妃の甘言を真に受け、オリヴィアを失脚させるために動いた。
そして次に、側妃は私の側近たちを狙った。
彼らは元は忠誠心が高く、真面目な人柄だった。
だから側近に選ばれたのだ。
そんな彼らに側妃は人を使い、媚薬を用いた快楽に堕とした。
それまで真面目に生きてきた彼らは快楽の虜になり、どんどん倫理観が失われて大胆になっていった。そしてそのまま堕ちて行った。
私がオリヴィアと上手くいかず、意地になって彼女より優秀であろうと躍起になっている間に、側妃は少しずつ私の周りの人間を破滅させていったのだ。
メアリーの出現は彼女にとっては僥倖だったのだろう。
前世では側妃の思惑通り、私はオリヴィアと婚約を破棄して後ろ盾を失くし、側近たちも失い、貴族たちの信頼も失った。
そして王太子の地位を剥奪され、オリヴィアは死んだ。
その後、異母弟が王太子になることが確実となり、側妃の野望は成就したのだ。
オリヴィアが地下牢に入れられたまま、その情報がこちらまで回ってこなかったのも、オリヴィアが衰弱死したのも、恐らく側妃の差し金だろう。
すべてが側妃の手のひらの上だった。
だが今世はオリヴィアは死んでいない。
他国に亡命しただけで罪を犯したわけでもなく、ザラス公爵家も家格を落としていない。
前世と同じ問題を起こす前に婚約解消になったため、王太子を降りるほどの瑕疵にはならなかった。
逆に闇ギルドを摘発し、元サミュエル侯爵夫人や、メアリーと側近たちの悪事を暴いたことで、貴族たちの支持を強固なものにできたほどだ。
これで側妃の長期に渡る野望は潰えた。
己の企みを詳らかにされた側妃は、秘密裏に離宮に幽閉され、のちに毒杯を仰いだ。だが彼女の罪については、王家の都合で公表はされず、箝口令が敷かれている。
異母弟を王太子にするなら、その母親が罪人であってはならないからだ。そのため、側妃は病で儚くなったと世間に公表した。
突然の訃報に側妃の実家が抗議してきたが、彼らには真実と証拠を突きつけ、連座で処罰を受けるか、立太子する甥の外叔父でいるために真実を墓場まで持っていくか、どちらか選べと迫り、当主である側妃の弟は後者を選んだ。
政治と王家に一切関与しないという契約の下に。
そして最後に私は、オリヴィアとの婚約解消は自分の有責であることを公表し、オリヴィアとザラス公爵家の名誉を回復させて王位継承権を放棄した。
こうして、オリヴィアを害した者は一人残らず罰した。
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