二つの決め台詞
「——君を誘拐した犯人は、君だ」
玻璃光彦には決め台詞が二つある。ひとつは「俺が解決する」。依頼人に安心感を与えると共に、自らを奮起させるためである。近所の住人から依頼された小学生誘拐未遂事件を受けたときにも発言した。たった今、誘拐された晴人少年による自作自演であることが暴かれた。
そしてもうひとつの決め台詞は「なぜやった?」。犯行動機の特定が目的である。時には動機から犯人を絞り込むこともあるが、その際も念のため確認するようにしている。今回も晴人少年に尋ねた。すると、デパートで迷子になった際に両親が自分を心配してくれたことが嬉しかったため、それを再現したかったという動機が明らかになった。
世の中には犯罪者の思考を理解したくないと語る探偵や警察官もいるが、光彦は反対に犯罪者の思考を理解したいと考えている。過去の犯罪者が何を考えて生活し、どこから破綻が生まれて、なぜ凶行に至ったのか。それを理解することができれば、次に犯罪を起こそうとしている人間を見抜くことができるのではないか。それが可能ならば、犯罪が起きる前に対策をとることができるのではないかと考えている。だから探偵は今日も犯罪者たちに問いかける。「なぜやった?」と。




