動物の匂い
三好景清は検温がきらいになっていた。
検温自体がきらいなのではない。いやなひとが来る時があって、きらいなのだ。
いやなひと、は、師長である。景清はそのひとが来ると、動物のような匂いで気持ちが悪くなるのだった。
どうやら、沢山の動物を飼っているらしいのだが、きちんと世話をしていないのだろう。あろうことか、ナース服に猫のものらしい毛がついていることもある。動物がきらいという訳ではないが、あまりいい扱いをされていないらしい動物が居るかもしれないと想像すると、気分が悪い。
数日、師長が検温に来なかった。来ないと来ないで、もしやペットになにかあったのでは、と不安になってくる。それで、看護師に訊いた。
「師長さん、最近見ないですね。ペットになにかあったんですか」
「え? 王子師長のことですか? ペットなんて飼ってないですよ。ご家族で旅行だそうです」
看護師は苦笑する。「というか、師長は動物ぎらいで有名です。ペットを飼うなんて不潔だって、飼いたかったら看護師辞めなさいとまでいうひとだから。ま、わたしはちゃんと気を遣って猫を飼ってますけど」
それからも師長が来ると、やっぱり動物の匂いがするのだった。