72/100
むらさき
斉藤史人は不思議に思っていることがある。
浅井奈佐と一緒に、最近よく行く回転寿司屋があるのだが、そこにはテーブルにかならず、醤油が三本以上置いてあるのだ。
四人席がほとんどだし、小さいサイズなら数本あっても違和感はないのだが、2リットルが三本置いてあるのだ。小皿に醤油を出しづらいのでは? と思う。
しかし、史人自体にはそんなことは起こっていない。いつ行っても、ボトルの中身は半分以下だからだ。おいしいので人気店だろうとは思うが、こんなに醤油をつかうものだろうか……やっぱり、つかいにくくて沢山醤油を出してしまうひとが居るのでは……。
「史人お願い、あぶりサーモンとって」
「あいよ」
しあわせそうにえびアボカドを食べている奈佐に頼まれて、史人は中腰になり、流れていってしまいそうだったあぶりサーモンの皿をとった。「ありがと~」
「うん」
その時、レーンをはさんで丁度向かいにある席が目にはいった。腰をうかせているので、その席の上にある、新品の醤油のボトルも。
ボトルのなかの醤油は、史人が瞬きした一秒にもみたない時間で、半分に減った。