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見えない




 津軽(つがる)(ゆう)は姉の美奈江(みなえ)を待っていた。


 金曜の夕方、ふたりでこれから服を買いに行く。弟は家で遊ぶとついてこなかったし、両親は仕事があった。このところ、買いものは大概ふたりですませている。服を買ったら、帰りがけにチェーン店でピザを買い、帰ってきょうだい三人で食べる。父親が今朝、いつものご褒美と、服代とは別に一万五千円もくれたのだ。


 有はアパートの下で、塀に寄りかかって姉を待っていた。美奈江は支度に時間のかかるほうではないのだが、出掛けに電話が鳴っていたから、その対応をしているのだろう。

 ふとアパートを仰ぐと、美奈江が廊下から落ちそうに身をのりだして、手を振りまわしていた。「ゆう!!」

 大声にびくつく。もしかして、中学校からなにか、自分を叱るような電話でもあったんだろうか。姉ちゃんを怒らせたらご飯つくってもらえない!

 有は大急ぎで、建物へ向かった。

 外階段へ右脚をかけたところで、もの凄い音にびくついた。


「よかった、よかった……」

 美奈江がはなれてくれない。有はきはずかしくて、姉を押しのけようと努力していた。

「姉ちゃん、もう大丈夫だから」

「あんた、どうしてあれに気付かなかったのよ?」

 有は唸る。

 ふたりは廊下から、外を見ていた。つい先程まで有は居たところに、軽トラックがつっこんでいる。アクセルとブレーキの踏み間違い、という言葉が聴こえてきた。

 車は前の道路をまっすぐ、有へ向かって突っ込んできていた。有にはどういう訳だけそれが見えず、廊下から見下ろしていた姉には見えた。それで、有を呼び戻したのだ。




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