アイスクリーム
姉小路律は、霧上駅に居た。
自転車にのって数分かけ、最近駅構内にできた自動販売機のアイスクリームを買いに来たのだ。
その自動販売機のアイスクリームは、有名なパティシエールと共同開発したものだそうで、凄くおいしいよと友人にすすめられた。あるコンビニチェーンでも売っているのだが、そのコンビニは霧上だと郊外にしかない。
律は自動販売機にお金をいれ、チョコミント味のアイスクリームとココア味のクッキーがクレープに包まれているというアイスクリームのボタンをおした。
がこんと音がして、パウチされたアイスクリームが出てくる。
「あれ?」
とりだし口からひっぱりだすと、パッケージには「リッチバニラ」と書いてある。
たしかにチョコミントをおした。律が確認すると、リッチバニラは人気商品のようで、売り切れている。
仕方ない、と思って、律はもう一度お金をいれ、チョコミントのボタンをおした。
リッチバニラが出てくる。
「おかしいなあ、そんな筈ないんですけどね」
律が駅員に「別の商品が出てきた」と云うと、駅員はすぐにアイスクリームを販売している業者へ連絡してくれた。買ったアイスクリームは溶けそうだったので、対応してくれた駅員ふたりにあげた。
業者さんが自動販売機を開けようとしている。律はそれをじっと見ていた。
「あっ!」
自動販売機が開くと、業者さんが驚いた声を出した。
中身がすべて、リッチバニラだったのだ。
律は郊外のコンビニまで遠征して、チョコミントアイスクリームを入手した。凄くおいしかった。