56/100
パズル
小早川星は塾でパズルをしていた。
ミルクパズルといって、ジグソーパズルの柄のないものだ。知能指数がどうのこうのとかで、塾ではこれを毎週木曜日にやることになっている。個室があって、そこでやるのだが、荷物検査があるしかばんは持ち込めない。それに、五分の時間制限があった。
結果次第でランクがかわるので、星は真剣にそれにとりくんでいる。
そろそろ秋も終わりで、パズル試験用の個室は寒かった。星はパーカの前を閉じて、続きにかかる。「できた」
完璧だ。今までで一番はやくできた。
低声で云ったのだが、塾講師には聴こえていた。扉が開き、笑顔の塾講師が這入ってきて、完成したパズルを点検する。
「あら?」
塾講師が屈みこんだ。星は体を曲げてそれを見る。
パズルのピースが一枚、ぽつんと落ちていた。