未来の
松永大河は霧上小の同窓会で、タイムカプセルの中身を返却してもらった。
小学校卒業間近に、当時のクラス委員が発起人になってやったものだ。タイムカプセルと云っても土へ埋めるのではなくて、学校の倉庫に預かってもらっていた。以前、土へ埋めた卒業生達が居たのだが、たまたま大雨の所為で流されてしまい、それだったら倉庫にいれておこうと、それ以降タイムカプセルをする場合はそのようにしているのだ。
もと・同級生達が、当時好きだった人形をいれていたとか、ファンだった歌手のCDをいれていたとか云うなか、大河は自分がいれたぬいぐるみを両手で握って眺めていた。
たしか、その直前にクレーンゲームでとったものだ。特に高価な訳でもめずらしい訳でもないが、クレーンゲームではじめて手にいれた賞品だったのが嬉しくていれたんだろう。間のぬけたきりんのような、今はもうどこで見かけることもないキャラクターだ。
ふと、大河はそのぬいぐるみのせなかがほつれていることに気付いた。しろいいとがはみだしている。
そういえば……と、記憶がよみがえってきた。あの時、未来の自分への手紙を同封するように云われた。といっても、短いものだ。専用のカードに書いて、好きなものと一緒に先生に提出した。
読まれるかもしれないと思うとはずかしくて、ぬいぐるみのせなかを解いてねじこんだんだ……・
今考えると、折角の賞品に酷いことをしたものだ。家へ持って帰って繕おう、と考えながら、大河は開いてしまっているぬいぐるみのせなかへ指をいれ、ざらざらした手触りのカードをひっぱりだした。
まるめられたそれを伸ばし、大河は顔をしかめた。
危ないからかぶはうって
たしかに、幼い頃の自分の字だ。だが、こんなことをかいた覚えはない。
しかし、思い出そうとしてもなにを書いたかは思い出せない。
大河は家に帰ってぬいぐるみを繕い、なんとなくいやな予感がして、転職情報サイトなどを見るようになった。
半月後、唐突に勤め先の会社が潰れ、大河はなんとか再就職先を見付けることができた。親会社の倒産のあおりをうけての倒産だった。
大河はその親会社の株を少しだけ持っていた。大河が持っている株はそれだけだったのだ。だから、もしかして自分の会社も危ないのでは、と、うっすら考えていた。




