表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/100

未来の




 松永(まつなが)大河(たいが)は霧上小の同窓会で、タイムカプセルの中身を返却してもらった。


 小学校卒業間近に、当時のクラス委員が発起人になってやったものだ。タイムカプセルと云っても土へ埋めるのではなくて、学校の倉庫に預かってもらっていた。以前、土へ埋めた卒業生達が居たのだが、たまたま大雨の所為で流されてしまい、それだったら倉庫にいれておこうと、それ以降タイムカプセルをする場合はそのようにしているのだ。


 もと・同級生達が、当時好きだった人形をいれていたとか、ファンだった歌手のCDをいれていたとか云うなか、大河は自分がいれたぬいぐるみを両手で握って眺めていた。

 たしか、その直前にクレーンゲームでとったものだ。特に高価な訳でもめずらしい訳でもないが、クレーンゲームではじめて手にいれた賞品だったのが嬉しくていれたんだろう。間のぬけたきりんのような、今はもうどこで見かけることもないキャラクターだ。

 ふと、大河はそのぬいぐるみのせなかがほつれていることに気付いた。しろいいとがはみだしている。

 そういえば……と、記憶がよみがえってきた。あの時、未来の自分への手紙を同封するように云われた。といっても、短いものだ。専用のカードに書いて、好きなものと一緒に先生に提出した。


 読まれるかもしれないと思うとはずかしくて、ぬいぐるみのせなかを解いてねじこんだんだ……・


 今考えると、折角の賞品に酷いことをしたものだ。家へ持って帰って繕おう、と考えながら、大河は開いてしまっているぬいぐるみのせなかへ指をいれ、ざらざらした手触りのカードをひっぱりだした。

 まるめられたそれを伸ばし、大河は顔をしかめた。


 危ないからかぶはうって


 たしかに、幼い頃の自分の字だ。だが、こんなことをかいた覚えはない。

 しかし、思い出そうとしてもなにを書いたかは思い出せない。




 大河は家に帰ってぬいぐるみを繕い、なんとなくいやな予感がして、転職情報サイトなどを見るようになった。

 半月後、唐突に勤め先の会社が潰れ、大河はなんとか再就職先を見付けることができた。親会社の倒産のあおりをうけての倒産だった。

 大河はその親会社の株を少しだけ持っていた。大河が持っている株はそれだけだったのだ。だから、もしかして自分の会社も危ないのでは、と、うっすら考えていた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ