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予言
「この家火事になるね」
休みの日、そんな声が聴こえてきて、陶義忠は外に出た。
通りを見るが、誰も居ない。「なんだ、失礼な……」
どこを見てあんなことを云ったのかわからないが、失礼にも程がある。義忠は頭を振り々々、屋内へ戻った。
義忠はけれど、なんとなくあの言葉が気になって、消火器をあたらしくした。妻のまるみが前からほしがっていたものを買ったので、やけに感謝され、それだけでもよかったかと考えた。
半月後、隣の家から火が出たが、義忠がすぐに消火器を持って行ったのでぼやですんだ。延焼していたらうちもただではすまなかったと、義忠はほっと胸を撫で下ろした。