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見える日
荒木道成はエレヴェータにのるのがきらいだ。
彼は今、霧上中の教諭をしているのだが、霧上の出身ではない。アパートをひと部屋かりて暮らしている。
だがそのアパートでは、たまに変なものが見える。
すんでいる七階からエレヴェータにのり、一階へ降りる途中、扉のがらすの向こうになにかが見えることがあるのだ。
最初に見た時は黒い猫だと思った。そのあとで、猫にしては大きいな、と考え直し、黒い大型犬が廊下に寝そべっていると考えた。
その日、業務を終えて戻ると、アパートの下に救急車が停まっていた。
それからも、エレヴェータにのっていると、それを見ることがあった。
それが居る階は様々で、一度、ふたり(二体?)居るのを見たこともある。
見るとかならず、救急車か消防車が呼ばれる。誰かが皿を割って手首を切ったとか、ぼやを起こしたとか、そういうことが起こる。
道成はそれがいやだから、階段をつかっていたのだが、意味がないことを知った。四階廊下にそれが寝そべっているのに気付いた道成は、残りは走って階段を降り、そのまま学校へ向かった。