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熱い
小山田郁はひとりで留守番をしていた。
秋も深まってきて、日が落ちると肌寒い。彼は居間のソファの上で膝を抱え、薄手の毛布にくるまっていた。手のなかにはケータイがあり、従兄とのショートメッセージのやりとりが表示されている。ふたりは今度の休みに、隣県の遊園地まで行く計画を立てていた。
郁はくしゃみし、エアコンをいれようか、と考えながら、ローテーブルの上にあるティシュ箱へ左手を伸ばした。
「あつっ!」
ぱっと手をひっこめる。右手に握りしめていたケータイが、床のカーペットの上へ落ちた。
うすぐらい居間のなかに、熱源はない。灯はLEDだし、ストーブもない。
郁はローテーブルを見る。おそるおそる、もう一度手を伸ばしたが、そこはもう熱くなかった。
郁は左手に火傷を負っていた。