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空き家
姉小路律はその空き家の前を通るのがいつだっていやだった。
二年前に四人家族が出て行ってから、そこはいやな雰囲気をまとうようになっていた。誰かが住んでいた頃は気にもならなかったのに、今は成る丈そちらを見ないようにして近くを通ることにしている。こわいからだ。
近所のひと達もいい印象を抱いていないらしかった。子どもがはいりこんで遊んでいて、危ない、という話も聴いた。
秋が深まってきた頃、その家が壊されるのだと聴いた。来年の初めに、有料の駐車場として運営をはじめるのだそうだ。律はちょっとほっとした。
律が学校へ向かっていると、不意に気配を感じた。
あの空き家だ。ビニールシートで周囲を囲まれているが、作業員が出入りしていて、その部分は開いている。
半分壊れた家と、その二階の窓の向こうにそっぽを向いて立っている子どもが見えた。