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神隠しの夜

作者: 星影月奈

初めまして、星影月奈です。

初の一次創作&一次創作ネット投稿となります。

誤字脱字、違和感のある表現等あるとは思いますが温かい目で見ていただけますと嬉しいです。

——十月中旬

 今日、俺の町で花火大会が催される。毎年開催されていて、観光客も結構来るからそこそこ有名なんだろうと思う。


 その日の夜、俺は毎年花火を見ている場所に向かった。家からちょっと離れた場所にあり、幼い頃からなにかとよく行っていて、俺にとっては馴染みの山。


特等席に着いて暫くすると大きな音をたてて夜空に大輪が咲いた。夜空にを彩る様々な花。それは周囲を明るく照らした。


俺は花火が終わった後も、しばらくその場所に立っていた。時計を見ると、まだ門限にはなっておらず、ちょっとばかり寄り道しようと考えた。

(久しぶりにお参りでもするか)

俺はさらに山奥にある、昔よく訪れていた神社へと足を進めた。


「……懐かしいな」

 近所の山奥にある小さな神社。最近は部活やら勉強やらで忙しくて全然来れていなかったが、今まで訪れた神社の中でもお気に入りの神社だ。

鳥居をくぐり、スマホの明かりだけを頼りにお社への道を歩く。

(やっぱり昼と夜とじゃ全然違って見えるな……)

そう思いながらも俺はお社へと足を進めた。


 辺りが既に暗いこともあり早々にお参りを済ませる。帰ろうと来た道を戻り、鳥居をくぐろうとしたとき、誰かに呼ばれた気がした。

後ろを振り向くも誰もいない。俺の気のせいだったのだろうか。気のせいしてはやけにはっきり聞こえた気がするが……

 溜息を吐き、再び帰ろうとするとまた名前を呼ばれた。今度はさっきよりもはっきりと。再び後ろを振り向くと、そこにいたのは、さっきはいなかったはずの女の子。

「……カミトモ、アツト」

 その子は確かに、はっきりと俺の名前を呼んだ。

 だが、俺はその子に全く見覚えは無かった。何故彼女が俺の名前を知っているのかは分からないし、見当もつかない。

「あの、何処かでお会いしましたか……? 何で俺の名前……」

「私は神子(みこ)。この神社を護る者」

 彼女は俺の問いかけに答える素振りを見せないままそう続けた。

 俺の頭は混乱していた。それもそのはず、この神社はとても小さなもので、巫女さんどころか人が駐在しているのを見たことがない。できる場所がないのだ。にもかかわらず「私は神社を守る人だ」なんて言われたら混乱するのも当然のはずだ、と思いたい。

「普段、我らは人前に姿を現さぬが、貴公の前に現れたのには理由がある。我らを助けてはくれぬか」

 彼女は真剣な眼差しで俺を真っ直ぐ見つめていた。


 彼女が言うにはなんでも日本の神様が集う世界がすごく危機的な状況で、それを俺に何とかしてほしい、ということらしい。

「けど俺、特別な力持ってるわけじゃないし。その辺にいるごくごく普通の男子高校生。それなのに、急に現れたと思ったら何とかしてくれって・・・・・・正直困るんだけど」

 俺は頭を搔きながら溜息を吐いた。巫女さんは顔色一つ変えずに続ける。

「我が見えている時点で能力はある。我らは普通の人間には見えぬ故」

 馬鹿馬鹿しく思っていたのに。相手にするつもりは全く無かったのに。何故かその真っ直ぐな瞳から逃れられなくて。気が付くと俺は首を縦に振っていた。

 それを見た巫女さんは微かに微笑み、俺の手を取った。

「では案内致そう、神々の集う場所、天上世界へ」


 天上世界に着いた俺は唖然とした。

 目に入ってきたのは、想像とはほど遠い光景。

 荒れ果てた土地、倒壊した家屋、僅かに残った黒く淀んだ水、転がっている大岩、そして禍々しい赤紫色の空。

 そして空気は重々しく、なんというか、とても異質で気持ち悪いものだった。

「此処が神様達の集まる場所? 想像と全然違うんだけど。もっと、なんというかこう、綺麗なとこ想像してた。」

「以前はとても綺麗な都だった」

 巫女さんから眩しい光が発せられ思わず目を瞑る。目を開けるとそこに広がっていたのは先ほどとは全く異なる幻想的な都。

「……! これは・・・・・・」

「幻だ。我の力で異変前の天上世界を見せている」

 その美しい光景に俺は呼吸を忘れた。

 大きな神社の拝殿のような建物。宙に浮かぶ大岩。その大岩の上にも拝殿のような建物があり、それを虹の橋が繋いでいる。

 巫女さんが見せてくれた幻が消え去り、再び現状を見ると尋常ではない出来事が起こっているのだと再認識させられる。

「このようになった原因は正体不明の禍々しい力。我らはそれを“穢れ”と呼んでいる。未だに発生原因はわかっておらぬ」

 俺はここに来たことを後悔した。明らかに人間の俺が手に負える案件じゃない。

 だがここで逃げるのも腹が立つ。乗り掛かった舟だ、最後まで、できるだけのことをやろう。俺はそう決心して辺りを見回した。


 禍々しい力——穢れの発生源、核が何処かにあるはずだ。ゲームとかだとそういうのがあることが多いし。そう考えた俺はあちこちを歩き回った。

 廃屋、物陰、枯草の山の中までくまなく探し、そしてやっと見つけた。

 そこにあったのは石炭のような黒くごつごつした塊。ただ決定的に違うのは周囲の空気。明らかに暗く、重い。異質で凄く気持ち悪い空気だ。鳥肌が立つ。

 重苦しい空気に肺が潰されそうになりながら、俺はそれに恐る恐る手を伸ばした時。

「生身の人間がそれに触るのは自殺行為だよ」

 後ろから誰かの声にさえぎられた。鈴のように澄んだ声。

 後ろを振り向くと立っていたのは若い美青年。だが、初対面では無い気がする。何処かで会ったような気が……

「おやおや、私を忘れたのかい? 昔一緒に遊んでいたじゃないか。他に人が来なくて、暇で暇で仕方なかった私の暇つぶしにも付き合ってくれていたね。懐かしいよ」

 俺はそれではっと思い出した。あの山の、小さな神社の神様だ。

「その顔は、思い出してくれたみたいだね。また会えて嬉しいよ、アツト」

 神様はふふ、と綺麗に笑った。

「助けに来てくれたのが君で助かったよ。君のことはよくわかっているつもりだから。

 さて、私も一仕事しようかな。手伝ってくれるね?」

 俺は小さく頷いた。

「何も難しいことはない。私の後に続いて同じ言葉を唱えればいい。君の詞が私の力を増幅させる。成功すれば祓えるはずだ。いくよ」

 俺は神様の後に続いて(ことば)を紡ぐ。少しずつ邪気が薄れていく。肺が軽くなる。

時間にして数分。(ことば)を唱え終わると、塊は跡形も無く消え去っていた。


「君には礼を幾ら言っても言い足りないね。私たちの世界を救ってくれてありがとう。私の力では弱すぎて祓えなかったんだ。此処の住人を代表して礼を言わせてくれ。」

 俺は慌てて「頭を上げてください」と言った。

「俺こそこれくらいで恩を返せたとは思ってませんよ。俺が危なかった時、助けてくれたじゃないですか。それこそ何度も。ほんの少しですが、恩返しって思ってください」

 神様は微笑むと俺の頭をそっと撫でた。

「あんなに小さかった子が……大きくなったね。私のことなんて完全に忘れていると思っていたよ」

「確かにさっきは思い出せませんでしたけど……完全に忘れるなんてあるわけないじゃないですか。だって——」


——だって神様は俺の恩人なんですから。



――――――――――――――――――――――――――――――――


神友(カミトモ) 篤人(アツト)

 とある町に住む高校一年生。

 幼いころ、神様や精霊といったものが見える不思議な力を持っており、神様にはいろいろと助けられていた。

 神社や寺などを巡るのが好き。


神子(ミコ)

 神社あるいは神宮の守護者。守っているのは建物もそうだが本来は神。

 普通に人には認識できないにも関わらず、普段は姿を隠している。

 一つの神社や神宮に一人以上はおり、この話の神子は登場する神社の神子。


神様

 浄化を司っている神様。

 篤人を気に入っており、何かと助けてあげていた。



――――――――――――――――――――――――――――――――


《裏設定》

 神様の「力が弱すぎて祓えなかった」。

 この言葉ですが、神様の力は信仰心に比例する、と勝手に決めていました。

 あの山奥の神社には人が殆ど出入りしないので信仰心が薄れ、神様に力が残らなかった、と考えて頂ければ大丈夫かと思います。


 また、最後の「俺の恩人だから」という1文。

 これは篤人が精神的に参ってしまって消えたいと考えていた時に神様が支えになってくれた、という設定を作っていました。

 これを本文に入れると長くなるうえにぐだりそうだったので書けませんでした。これは作者的には書きたかった。


 そして神子(みこ)さん。

 この子は神様の従者兼側近です。

 各神様に一人以上います。力の強い神様は10人以上連れてたり。

 扱いとしては精霊に近いんですかね。普通の人には見えません。

 普段は神社にいて、神様の現世における住居である拝殿を守っています。

≪あとがき≫

 初めまして、星影月奈(ほしかげつきな)と申します。

 今作がネット上に投稿する(一次創作では)初めての作品になります。

 これは、学祭の時に書かせていただいたものを手直ししたものです。

 学祭のテーマが「時代」でしたので、日本神話をイメージして書かせていただきました。神話時代と言うこともあるので含まれるかと思いまして(汗)

 一応何度も見直しておりますが、間違っている箇所があるかと思います。その際は心の目で直していただけますと幸いです。

 稚拙な作品にも関わらず、最後まで読んでいただきありがとうございました。

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