市民のエコロジー広場
ご紹介するのはパリ市内の緑化運動の一環とも言えるものだが、市内には珍しく空き地が望める田舎風の場所がある。私はこの空き地から数百メーターという近いところに住んでいるので、当地に足を運ぶことを楽しみの一つとしているのだが、正面の入口には大きな看板が掛かっている。そこには、フランス語で「Terre d’Ecologie Populaire」とあって、訳すと「市民のエコロジー広場」となるであろうか。この空き地を見ると奥の方にはこんもりとした森を想像させるような低木が所狭しと茂り、右側のフェンス沿いには幾つかのベンチが設置されていて、天気の好い日にはそこに寝そべって日光浴を楽しんでいる人々が見受けられる。もちろん、人が多い日にはベンチを明け渡す必要があるが、それはさておき、正面の入口を入ってすぐ左に鶏舎があり、放し飼いの鶏が7、8羽、柵のない庭でノンビリ過ごしている。入口からこの鶏舎は近いのだが、鶏は車や自転車の往来が危ないというのを知っているのか、外へ出て行こうともしない。
この広場を文字で説明するより、「百聞は一見に如かず」で、5枚の写真を順にご覧いただこう。真ん中の空き地は低いテーブルを囲んで食事をしている人々、談笑している人々、ワインのボトルを開けて楽しんでいる人々も時折り見掛ける。
市民のエコロジー広場 ― 正面の入口(2022年3月撮影)
市民のエコロジー広場 ― 中央(2022年3月撮影)
その他に、バレーボールができるようにとネットが張ってあり、又、ちびっこがサッカー用の小さいボールで遊んでいるのが微笑ましい。私が見る範囲では若者が多いのだが、家族連れ、アベックも多く見掛けられる。空き地内での犬の散歩はご法度ということで、入り口で待機させなければならない。
スポーツグラウンド(2022年3月撮影)
写真奥は共同墓地、その手前は大通り(2022年3月撮影)
ご存知のように次回の夏季オリンピック(2024年開催)はこのパリである。その準備のためにパリ市内は工事に次ぐ工事で、勢い、多くの道路が遮断されている。車は迂回を余儀なくされ、それがため、私の住んでいるアパート前の大通りは毎時間、渋滞の様相を呈している。そうすると車の排気ガスが酷いので大通りの並木道を悠々と歩けるものではない。幸い広大なペール・ラシェーズ共同墓地が近くにあって、200年以上の老樹かと思わせる木々がたくさん植わっているし、空気も澄んでいるので、散歩には恰好の場所だ。又、先の「市民のエコロジー広場」でフランス人の友人とピンポンをして楽しむことができるという案配である。
この空き地は、一昔前までは「荒地開放のプロジェクト」の対象であった。今から3年前のル・パリジャンというフランスの日刊新聞に詳しい経緯が掲載されているので、冒頭の文章を抜粋して当時の様子を少しうかがい見て、本稿を終わらせることにしよう。以下、訳 ―
「パリ:テップ・メニルモンタンの不動産プロジェクトの再検討」
メニルモンタンのかつてのスポーツグラウンドは集合住宅にならないだろう。パリ市はこのプロジェクトについて討議再開を発表したばかりだが、特に緑の党によって激しい論争が巻き起こっている。
Paris : le projet immobilier du TEP Ménilmontant remis en cause
L’ancien terrain de sport de Ménilmontant ne sera pas remplacé par des immeubles d’habitation. La mairie vient d’annoncer la réouverture de discussion sur ce projet très contesté, notamment par les Verts.
フランスの動物のシンボル ― ニワトリ(2022年3月撮影)