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甘々短編集

幼馴染は豪腕投手

作者: 衣谷強

「よっし、今日の分おーわりっと」

「早いなぁ」


 ペンを置いたあたしに、幼馴染が羨ましそうな声を上げる。


「計画的に進めてるからね」

「俺はまだまだかかりそうだ」

「あんたは甲子園あったから仕方ないわよ。何か分かんない事あったら教えてあげるわよ」


 朝から晩まで野球漬けだった幼馴染をちょっと手伝ってもバチは当たらないでしょ。


「助かる。あ、勉強以外でもいいか?」

「なに?」

「女子ってどういうのにドキドキするんだ?」

「はぁ?」


 唐突な質問に、あたしは目を丸くした。


「言ってる意味が分かんないんだけど」

「いや、前に見たテレビで、女子は『壁ドンが好き』とか『顎クイにキュンとくる』とか色々言ってたけどよく分からなくてさ」

「へぇ、あんたもそんなのに興味あるんだ」


 野球一筋で、甲子園まで行った幼馴染がようやく色気づいたかと思うと、何だか微笑ましい気分になる。 彼女にしたいコでもできたのかな。


「そうねぇ。女のコのハートをつかむなら、やっぱりサプライズは鉄板ね」

「サプライズ?」

「相手の想像を超えることをして喜ばせるってこと」

「想像を、超える? どんな風に?」


 あぁ、この野球バカには分からないか。 ちゃんと教えないと、小学生男子みたいな脅かし方とかしそう。


「あんたに分かりやすく野球で言うなら、変化球かな。思ってもないところにボールが来たら打てないでしょ?」

「なるほど」


 甲子園行く投手になってから相当モテてるだろうし、こいつにそんな小細工要らないとは思うけど。


「お前が好きだ」


 ん?


「え、あ、え?」


 何なにえウソ今何言われたのあたし好き好きって言ったのこいつ何で急にそんなバカあたしあんたのこと嫌いじゃないけど彼氏とか


「サプライズってこんな感じか?」

「……はい?」

「相手が思ってもいないタイミングなんだろ?」


 ……あ~、そう。そういうこと。びっくりした〜。そうよね。あたし達幼馴染だし、練習台には持ってこいよね。


「そうね。悪くなかったんじゃない? ちょっとドキッとしたし」

「そうか。良かった」


 無邪気に笑っちゃって……。あたしが勘違いしたらどうするつもりだったのよ。


「で、どうだ?」

「だから悪くなかったわよ」

「じゃなくて、彼女になってくれるか?」


 は?


「あああっあんたななな何言ってんの!」

「何って、好きだから彼女になってほしいって話だ」

「あたしに言ってんの!?」

「ここには俺とお前しかいないだろ」


 ううううそ嘘ウソ何でこいつ急にバカじゃないの何であたし他にもいっぱい可愛いコいるのにやだもう何でああ顔が熱い泣きそう


「どうだ?」

「う……」


 もうどうしたらいいの頭ごっちゃごちゃで勘違いじゃなかったのさっきまではただの幼馴染だったのに何か急にカッコよく見えてきちゃうし


「……よろしく、お願い、しま、す……」

「ありがとな。嬉しい」


 やめて笑顔やめて心臓がすごいことになってるから何であんた平気なのズルい甲子園のマウンド経験してると造りが違うのかな


「うん、お前の言う通り、変化球って効くんだな」

「……そ、ね……」


 あんたのは変化球じゃないよ豪速球ストレートだよ……。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 女の子が慌てると思考から句読点が無くなってノンブレスになってるところが可愛いですね。 幼馴染で名前を呼びあうことすらなく、既に熟年夫婦染みた貫禄。 短編ながら色々と妄想してにこにこ出来る楽…
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