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(大変な目にあったが五体満足のままだ、買い物も無事に済んだ)
帰路。正面から黒スーツの集団が現れた。四宝組の構成員だ。一人が真冬を指さした。
「あれ崩紫じゃねぇか?」
帽子を目深に被っているだけだ。簡単に見破られてしまった。
「崩紫だ! 見つけたぞ! 他の奴にも連絡しろ!」
瞬く間に十名ちょっとの構成員が集まった。
「崩紫ぁ! ケジメつけさせてもらうぞ!」
構成員の怒号が飛ぶ。真冬の見知った顔もちらほらいる。
俺を倒せば幹部の空いた席に座ることができる。欲望にまみれたいい顔しやがって。
「やるなら覚悟しろ。仲間だった『よしみ』なんてものはないからな」
真冬はパンパンになったビニール袋を道端に置く。
そして拳を構える。
何も無い空間に右拳を突き出す。空間にヒビが入ってすぐに消える。
不気味な炎状のオーラが拳から滲み出てる。意思を持った炎のように揺らめく。オーラは肩までを覆い尽くす。近接戦闘に適した姿だ。
真冬の戦い方を知っている者はその姿を見てたじろいた。知らない者が怒号を飛ばす。
「構わねぇ! やっちまえ!」
リーダー格の男が突撃命令を下した。
(お前も来いよ)心の中でツッコんだ
前列にいた三名の能力者が同時に仕掛けた。
中型犬に『獣化』する者。
掌からこぶし大の火の玉を作り出す者。
『武器召喚』で小ぶりのナイフを召喚する者。
それぞれ犬が突撃、
火の玉使いが遠投、
ナイファーが接近戦を仕掛けてきた。
「おっと」
真冬は、まず突進してきた中型犬の能力者に対して左腕を差し出した。
警察犬が犯罪者にするように腕を噛まれる。しかし腕は『崩壊』のオーラで肩まで覆われている。噛みの威力を『崩壊』させた。文字通り歯が立たない。
「あ、あれ? なんでーー」
中型犬の男は顔だけ元に戻す。焦っているようだ。
(じんめん犬じゃねぇか!)
「大型犬のほうが強い!」
真冬は鋭い蹴りで人面犬の横腹を蹴り飛ばした。塀に激突する。ガラガラと塀が崩れて人面犬が埋もれた。一撃で気絶させた。
次に火の玉とナイファーが迫る。
右の掌で火の玉を受ける、炎を崩壊させる。
ナイファーがその隙をつこうと刺突する。
しかし隙などなく手首を素早く掴む。同時にオーラを付着させ崩壊させる。
ナイファーの悲鳴が響き渡る。バキバキとヒビが広がり手がぼとりと落ちる。
「召喚能力は便利だよな。持ち物検査なんてあってないようなものだからな、ま、せっかくのナイフなのに不意打ちに使わなかったのはマイナスだな」
強烈なカウンターを目撃した構成員たちがどよめきだす。何人かは逃走を開始している。
「おい火の玉投げつけてきた奴」
一人ビクッと体を震わせる男がいた。
(アイツだな)ギラついた目で、その男に狙いをつけた。
「中途半端な火力の能力より、ライターのほうが使い勝手がいいぞ」
「ひいっ!」と、今度は構成員たち全員が身を翻し、逃走を開始した。
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夕方。
帰宅した真冬が真っ先に目にしたものは玄関口で待ち構えている心紅だった。
「おかえりなさい」
「ただいま」
「遅かったじゃない。ほんの少し心配したわよ」
「ごめん、四宝組に見つかって倒すのに時間かかっちまった」
「そう……怪我はしてない?」
「ああ」
「次は私が買い物に行くから」
「もう大丈夫なのか?」
「クロジカが過保護すぎるだけだわ。なんともないもの」
「そっか、よかった。そうだコレ」
半ば無理やりとはいえ、ファミリーレストランで心紅たちより先にご飯を食べてしまった(腹一杯とは言えないが)真冬は、罪滅ぼしにと赤の髪留めを買っていた。
心紅は手のひらに乗せられた髪留めを見てキョトンとしている。
「え、なにこれ」
「やる。いや、もらってください」
(もらってもらわないと困る。うん、卑怯だな俺)
「あ、ありがとう。なんだかよくわからないけれど、もらってあげるわ」
キッチンのほうを見るとクロジカが先の割れた舌をチロチロとさせていた。どういう感情表現なのだろうか。
心紅は早速、髪留めをつけた。
「どうかしら?」
「似合ってる」
「ヒヒ、ヒヒヒ」
魔女笑いをする心紅は嬉しそうだ。
「よし、飯にしよう」
「任せて、大釜でシチューを作るわ」
大釜というところに、さらなる魔女らしさを見出しつつ、真冬たちはキッチンへと向かった。
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ギョーン。
夜の街に、ギターのような不思議な音色が駆け抜ける。誰かが路上ライブを開いているのだ。
短髪の青い髪に軍服を纏った、二十代前半くらいの男。光沢のある青いギターを弾いている。あぐらをかき。ご機嫌な様子で奏でるリズムにノッている。
「いい音だな!」
一人の少女が青髪の男の前にしゃがみこむ。
「ヒュー。お客さんお目が高い」
青髪は口笛を吹き。片目を瞑り。ニヒルに笑う。
「うん!とてもいい音だ! この音は大好きだ! もっと聴かせてくれ!」
「オーライ、任せなよ。とっておきさ」
ギョーン。と、ギターを一撫でする。
「それでは聴いてください『俺のギターは生きている』」
冬の寒空に暖かい音楽が鳴り響いた。




